ドリームキャッチャー(スティーヴン・キング)
前期キングの評伝「恐怖の愉しみ(風間賢二)」を読んだために、「キング熱」という悪性のバイラス(ウイルスのようなもの、人体に潜伏し内臓を食べ尽くす)にとりつかれてしまい「スケルトンクルー」という初期の短篇(「霧」が秀逸)や「ミザリー」、そしてこの「ドリームキャッチャー」と立て続けに読んだ。どの作品もアメリカの変遷をうまく描いているなあ、と上空から俯瞰するように読めるようになった。4巻組の長編であったが、長編を長編と思わせないことがまずスゴい。導入部にあたる1巻、起承転結の「起」においては、「奇」なるできごとが「起」こりつつある(悪意の塊がスノーモービルに乗って雪をかきわけ迫って来る)ということだけで300頁を一気に読ませる「キ」ングこそ「鬼」だと思った。2巻は少し失速するものの人物描写やグロテスクな情景をありありと浮かび上がらせ、まるで映像を見ているようであった。バスルームでの惨劇や、司令官カーツの狂人っぷりはキングならではであった。3巻は、実は読書中に一度紛失してしまい、途中に他の小説をはさんで、改めて古本屋で購入しなおし、読書を再開したが一気に読み切った。4巻で、物語は急速に加速し、一気呵成に大団円をむかえる。SFX映画を見終えたような感覚が残った。DVDも借りたけれど、改めて観る必要もない気がしてきた・・・。「It」や「スタンド・バイ・ミー」にも描かれているように、少年たちの結束力や友情が作品に温かみというか深みを与えていて、「ケツ割って死ね」のような下品な言葉も作品を読み終えたあとは、親しみをともなって胸に響くから不思議だ。 【中古】 ドリームキャッチャー(1) 新潮文庫/スティーヴンキング(著者),白石朗(訳者) 【中古】afb