暑い夜にはかかせない、こんな話。
あるページの怪談を読んでいたら久しぶりにぞくっとして、怖い夢まで見てしまいました普通の怖い話ではあまり怖くなりませんが自分の身の上に起こった事柄と似ている話を聞くとついぞくっとしてしまいますそこで、私が体験した怖い話をひとつ。私は中学生の頃、合唱部に所属していました。顧問の先生が、とても実力のある方で私達はどんどん上達し、いろんなコンクールにでるようになりました。ある日、先生が世界的にも有名なヨーロッパのある聖歌隊のCDを購入したのですがその中の一曲がとても印象に残ったらしく後に、その曲をコンクールで歌うことに決まりました。先生が、部員一人ひとりにその曲をテープにダビングして配ってくれたのですがそのCDを何回も聞いているうちに、先生があることに気がついたんです。おかしな雑音でした。先生も始めは再生している機械がおかしいと思ったそうなのですが別の機械で再び再生したところ、また雑音が聞こえたようなんです。不審に思った先生が放課後、部員が全員集まったところでその雑音の話をしてみんなで確認してみようということになり、音楽室の大きなスピーカーから流してみました。スピーカーからは、いつもと変わらないきれいな歌声が聞こえてきたのですが曲がある一点に差し掛かったときに、突然部員の中の数名が悲鳴をあげました。何か聴こえた、と口々に言うんです。雑音というより、すごく低い「声」のようなものがもやもやと聴こえたそうなんです。でもそれが聴こえた部員は数人。聴こえなかった人たちは半ばうらやましそうにしていて、もう一度、聴いてみることにしました。曲がいつものように流れていって、部員が真剣な顔で聴いているとまた突然、部員が悲鳴をあげました今度はさっきよりも多い数の人が聴こえていました私の隣にいた友達もびっくりして、私に聴こえた聴こえたと訴えるのですが私には、ちっとも聴こえませんでした。そしてざわつく音楽室の中で先生が一言、「さっきと聴こえたところ、違ったよね?」と。部員はみんな、聴こえなかった私も真っ青になりました。確かに、一度目に部員が悲鳴をあげた場所と、二度目に部員が悲鳴をあげた場所は違っていました。先生によれば、聴こえる場所も違うし、聴こえないこともあるんだそうです。部員の半分以上が実際に聴いたのですから、これは勘違いや空耳じゃないということになってみんなが家に持ち帰っていたダビングしたテープを、一度家に取りに戻って先生が回収することになりました。私は家の近い友達と一緒に「聴こえなかったね」などと話しながら帰宅し聴いてみたかったこともあって、自分達のテープにもその雑音が入っているかどうか聴いてみることにしました。二人で私の自宅のオーディオの前に座りスピーカーに耳をくっつけて、聴きました。歌が静かに流れ始め、一つ目の盛り上がりを過ぎて二つ目の山になる部分に差し掛かったとき、女性合唱の透き通るような高音をかき消すようにぼそぼそぼそっと、低い男の人がなにかしゃべったんです。私は背筋に何かが勢いよく駆け上った感覚がしてその瞬間、私は隣にいた友達を突き飛ばして停止ボタンを押していました。同時に録音されてしまったとは到底思えない、まるでスピーカーがしゃべったような違和感のある声。先生や部員が言っていたように日本語ではない何かをしゃべっていました。心臓のばくばくがおさまらないまま、学校へそのテープを持って行き全員分のテープを回収した先生は、先生の自宅の近くのお寺でお払いをしてもらい処分をお願いしました。CDに入っていた奇妙な声の事件は、それで一応丸くおさまったのですがどうしても気になった先生が、その聖歌隊と日本のCD会社の仲介をしている方に連絡をとったところその聖歌隊は本当に世界でもとても名の知れた聖歌隊でその歌声のすばらしさを一人でも多くの人に伝えるために録音には細心の注意を払い、なんども点検をしているので雑音が入ってしまうことなど、まずないのだそうです。それにその聖歌隊には男性の方は一人もおらず唯一男性の指揮者の先生も、もちろん録音中に何かしゃべるはずがないのでその声は、有り得ない、ということでした。あの声は一体なんだったのだか、誰も知ることはありませんでしたが悩みに悩んで、選曲を変えずにその曲でコンクールに挑戦したところとてもよい賞をいただき、県代表で、全国大会に出場することもできました。みんなで、あの幽霊は私達に幸運をもたらしてくれたと思うようにしています。