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じゃくの音楽日記帳

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2012.10.17
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カテゴリ:演奏会(2012年)
久しぶりの書き込みになります。
フェドセーエフ指揮、チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送響)の演奏会をききました。

10月15日 サントリーホール

チャイコフスキー 歌劇「エフゲニー・オネーギン」より3つの交響的断章
チャイコフスキー 弦楽のためのセレナード
チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

僕はフェドセーエフさんの実演を聴いたことは皆無だったし、CDもほとんど聴いたことなくて、ノーマークでした。これまでロシアのオケをあまり聴いていなかったので聴いておこうかくらいの気持ちで買ったものでした。これが実に感銘深い演奏会でした!

そもそもからしてチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラという、聞く方がちょっと気恥ずかしくなるような名前のオケです。旧モスクワ放送響という有名オケであるにしても、近年どのように変化しているかは全く未知数でした。

当日サントリーホールのPブロックに座ると、開演時刻が近づいても、客席は驚くほどがらがらです。Pブロックを含むステージ周りの安い2階席はほぼ埋まっていますが、それ以外の2階席はほとんど空席です。Pブロックから正面によく見える広大な1階平土間席にしても、センターの良席はほぼ埋まっていますが、サイドや後方席はほとんど空いています。結局全部で、ほぼ4割りほどの入りでしょうか。これほど入りの悪いコンサートは僕は初めてです。オケが気の毒に思えるとともに、これは、事情通が避ける理由が何かあるのだろうか、という不安もわき起こりました。

しかしそのような不安は、ただちに吹き飛びました。

1曲目(初めて聴く曲でした)からにして、腰の落ち着いた弦楽の響きが美しく、管も派手さはないものの、味わい深い音楽が聴けました。
そして弦楽セレナード。16-14-12-10-9で、左から第一Vn、Vc、Va、第二Vnの対抗配置。コントラバスは中央後ろに横に並びました。
これがもう本当にすばらしかったです。もう弦楽の魅力充分。9本のコントラバスの土台が厚く、その上に重なる弦も、透明感というよりも、厚みがあり、深みがあります。フェドセーエフさんの指揮はしなやかで、情感ゆたかですが、しかしそれに溺れすぎない、しっかりとした歌が歌われました。
これで演奏会が終わったとしても、もう大満足です。

休憩のあとに悲愴。
僕はそれほど悲愴を沢山聴いていないですけど、これぞ悲愴、これぞチャイコフスキーと思いました。大感銘です。
第二楽章は意外なほどゆっくりとしたテンポで、僕はちょっと集中がうすらいだ部分もありましたが、ほかは全編にわたって引き込まれました。
最終楽章の終わり近く、最後の盛り上がりが終わって、ゲネラルパウゼのあとの、コントラバスの入りがすごかった!ここの音楽の深みが、これほど胸に響いたことはありません。この瞬間を僕はきっと忘れないと思います。茂木健一郎氏風にいえば、最大級のクオリアに圧倒された瞬間でした。

1曲目、2曲目とも、フェドセーエフさんは、曲が終わるとわりあいすぐにタクトを降ろし、それとともに拍手が始まっていました。比較的すぐにタクトをおろすタイプの指揮者とお見受けしました。それでも悲愴では、最後の余韻が消えた後、フェドセーエフさんは数秒ほどタクトをあげたままで、そのあとすっとタクトを降ろしました。タクトが降ろされたのですから、これで拍手が始まったとしてもおかしくありません。しかし拍手はまったく起こりません。皆、深い感動にうたれていたのでしょう。息を呑むような静寂がさらに数秒ほど続いたあと、指揮者が体を少し動かしたのを合図のようにして、ようやく拍手が始まり、クレッシェンドしていきました。聴衆の人数は少なくとも、それはそれは大きな拍手になりました。

そして鳴り止まぬ拍手のなか、ハープが運び込まれ、アンコール。眠りの森の美女から「パノラマ」で、ハープの分散和音に乗って、静かな弦楽の歌が、かなりゆっくりと歌われました。悲愴の凄絶さに胸打たれたあと、その美しさに心が癒される音楽でした。そのあとさらにもう1曲、白鳥の湖から「スペインの踊り」で、一気に元気良く盛り上がって、この稀有な演奏会は締めくくられました。

アンコールを含めてオールチャイコフスキープログラムだったわけです。指揮者とオケが一体となり、「これぞ自分たちの音楽だ」と、血肉からの共感に根ざした音楽が歌われました。チャイコフスキーのカンタービレがびんびんと伝わってきました。演奏会後、「弦っていいなぁ、オーケストラっていいなぁ」と幸福な余韻にふんわりと包まれた、すばらしい体験でした。

「チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ」の名前がちょっと気恥ずかしいかも、などと思った自分が恥ずかしいです。これぞチャイコフスキー・オーケストラの名前にふさわしいオケだと思います。なんと38年間にわたるという、フェドセーエフさんとこのオケの幸せな信頼関係を実感した次第です。

今回の日本ツアーは、フェドセーエフさん80歳の記念ツアーということで、13日の鎌倉公演から21日の大阪公演まで、全8回の演奏会の曲のすべてがロシアもの、という徹底ぶりです。サントリーは3回公演があり、このチャイコフスキープロ、その翌日にシェエラザードなどのプロ、その翌日にショスタコービッチの交響曲第10番などのプロです。そのあと19日は名古屋でショスタコ5番など、20日は兵庫でシェエラザードなどをやり、ツアー最後は21日大阪で悲愴を中心としたオールチャイコフスキープロです。

僕は翌日のシェエラザードなどの演奏会も聴きました。この日は聴衆の入りも前日よりずっと多く、演奏ももちろん良かったですが、前日のオールチャイコフスキープロほどの圧倒的な感銘は受けませんでした。(最後のアンコールには、前日同様チャイコフスキーのバレー音楽から小品2曲で、素敵でした。)

たった二日間聴いただけですが、自分の印象としては、このオケ、技術の高さが売りというよりも、弦楽を中心としたカンタービレが、ともかくすばらしいオケでした。そしてそのカンタービレは、特にチャイコフスキーこそが、ぴったりあう、と思いました。

21日の大阪公演(14時から、ザ・シンフォニーホール)は、今回のツアー最終日ですし、しかもオールチャイコフスキープロです。彼らが満を持しての、さぞやの味わい深い演奏会になるのではないかと思います。関西方面のかた、もしも都合がつけられたら、聴きに行かれることを、強くお奨めします。きっと貴重な体験になることと思います。

そしてもし演奏会に行かれたら、一部500円のプログラムもご購入をお奨めします。豪華なカラー写真や広告や堅苦しい挨拶文が詰まったありがちなプログラムではなく、フェドセーエフさんのお人柄などが伝わる心温まる文章が載っている、小さくてとても素敵なプログラムです。





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Last updated  2012.10.18 03:34:41
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