全てフェデリコ・モンポウ作品という貴重なコンサートを聴きました。
東京オペラシティ・コンサートホール 開館15周年記念公演
フェデリコ・モンポウ<インプロペリア>~ひそやかな祈りのために~
9月1日 東京オペラシティ・コンサートホール
第一部
歌と踊り第13番(ギター独奏) :村治佳織
コンポステラ組曲(同上) :村治佳織
橋 (チェロとピアノ) :遠藤真理(Vc)、三浦友理枝(P)
第二部
内なる印象(ピアノ独奏) :三浦友理枝
歌と踊り第15番(オルガン独奏) :鈴木優人
魂の歌(ソプラノ、合唱、オルガン):幸田浩子(Sop)、アントニ・ロス・マルバ指揮、新国立劇場合唱団、鈴木優人(Org)
第三部
<郊外>より「街道、ギター弾き、老いぼれ馬」(ロザンタール版) オーケストラによる
:アントニ・ロス・マルバ指揮、東京フィル
夢の戦い(ロス・マルバ版) ソプラノとオーケストラによる
:幸田浩子(Sop)、アントニ・ロス・マルバ指揮、東京フィル
インプロペリア(マルケヴィッチ版) 日本初演 バリトン、合唱、オーケストラによる
:与那城敬(Bar)、アントニ・ロス・マルバ指揮、新国立劇場合唱団、鈴木優人(Org)
前半は器楽曲、室内楽曲で、後半は声楽のはいった大きな編成の珍しい曲、ともかく全部モンポウという、すごい演奏会でした。
僕がモンポウのことを初めて知ったのは、チッコリーニのセブラックの記事で書いたのと同じように、やはり館野泉さんのCDでした。館野さんのCDで初めて買ったものが、モンポウの「内なる印象」で、ひそやかで美しい響きに、すっかり魅了されたのが始まりです。その後、ラローチャの「歌と踊り」のCDにも心底ほれこみました。そんなモンポウのいろいろな作品が聴けるというこの演奏会、どなたの企画か存じませんが、ありがたいことです。ちょうどこの日は、改装なった東京芸術劇場のこけらおとしで、下野さんによるマーラー復活のコンサートとバッティングしたのですが、迷うことなくこちらを選びました。
この演奏会は、作曲家の加藤正則さんとギタリストの村治佳織さんが司会進行役を務めるというサービス精神にも富んだ趣向で、トークなどはさんで和やかに進んでいきました。
若手女性軍による前半の器楽曲は、残念ながらギター、ピアノともに作品への切込みが甘く、聴いていて、いささか退屈さを禁じ得ませんでした。
しかしそんななかで、遠藤真理さんのチェロは本当にすばらしい歌と呼吸があり、すばらしかったです。遠藤さんのチェロはいつか聴いてみたいと思っていたところ、これが初体験でした。その音楽性の豊かさにうなりました。今後もいろいろ聴いてみたいです。
プログラム後半は、声楽曲です。皮切りはソプラノの幸田浩子さん。奇しくも、NHK-FMの新旧の番組司会女性が同席するという演奏会になりました。幸田さんは今年3月までの「きまクラ」の司会で、ショウヘイさんの突っ込みに素朴に応対していた素直なキャラが素敵でしたし、遠藤さんは今年4月からの新番組「きらくら」で、ふかやさんの天衣無縫のつっこみにさりげなく大人の対応をしつつも、犬の鳴き声も名人級という不思議なキャラ。幸田さんの歌を聞くのも、僕は初めての機会でした。
後半の曲目が、聴きものが続きました。「魂の歌」は、短いですが、敬虔な祈りが伝わってくる、美しい曲でした。次の2曲は、モンポウ以外の人によるオーケストラ編曲物でしたが、このオケの響きがとても良いです。
今日の指揮をしたロス・マルバさんという方は、モンポウと直接の交流があったといいます。トークでもマルバさんの謙虚な人柄が感じられました。「夢の戦い」はこのマルバさん自身による編曲版でした。チェレスタ、ハープ、イングリッシュホルンなどが隠し味的に使われた味わいある編曲で、響きが素敵でしたし、指揮ぶりもモンポウ作品への敬意と愛情が感じられ、とてもすばらしいものでした。
最後の曲が、30分弱を要する、インプロペリア。バリトンの与那城さんの力強い歌も加わり、モンポウの敬虔な宗教心に基づく信念ある音楽が、マルバさんの指揮に導かれ、聴くものの心に染み入ってきました。
マルバ氏の滋味ある指揮を中心に、良い演奏でとても貴重な体験ができたひとときでした。
インプロペリアは日本初演ということですから、モンポウ(ほんぽう)初公開、だったわけですね(^^)!
もうすぐ新年、おあとがよろしいようで、今年の書き込みは、これにて終了といたします。
皆様、また来年もよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。