きらクラ!BGM選手権、4月5日のお題は、蘭郁二郎「舌打する」でした。
お題は、番組ホームページの「お題はこちら」に載っています。
誰しもが思い当たるような、なんとも歯切れの悪い、やり直しようがない、心の中のひっかかり。ベストに選ばれた、気分はいつもト長調さんの、ショスタコーヴィッチのジャズ組曲第2番よりワルツ第2番は、そのひっかかりから脱することができない気の毒な野村君の、どよんとしたやるせない気持ちを、諧謔的にあらわして、実にぴったりの音楽でした!
僕の投稿も放送されました!僕も最初は、ちょっと暗めでやや屈折した音楽をあてはめたりしていましたが、そのうちに、野村君のそういう心情をいたわるような、やさしく素直な音楽も結構あいそうに思えてきて、結局その方向の音楽を選びました。以下が僕の投稿です。
----------------------------------------------------------
真理さんふかわさんこだまっちさんこんにちは。BGM選手権、蘭郁二郎「舌打する」に応募します。舌打つ野村君の、もどかしくほろ苦い心情にやさしく寄り添う音楽として、シューマンのヴァイオリンソナタ第2番の第三楽章をあててみました。始まりの密やかなピッチカートは、チェッという小さな舌打ちのようにも聴こえます。やがてヴァイオリンは弓で弾かれ始め、ためらいがちに、遠く少年の日までさかのぼる、恥じらいと、戸惑いと、ほのかな憧憬を、静かに奏で始めます。速いテンポの演奏だと、朗読の終わりごろに大きな音量になってしまいますので、そうでない演奏でお願いします。
----------------------------------------------------------
シューマンのヴァイオリンソナタ第2番、名曲ですね。第三楽章は、コラール『深き淵より我汝を呼ぶ』に基づくテーマによる変奏曲で、最初ピッチカートにより呈示されたメロディーが、次に弓で弾かれ、だんだんと盛り上がっていきます。
今回の投稿にあたって、保有するこの曲のCDや動画サイトの演奏をいろいろ聴き比べたところ、この第三楽章の冒頭からの音楽は、演奏によってテンポがかなり違いました。たとえばクレーメル&アルゲリッチ盤(1985年録音)は、かなり速いテンポで、朗読の途中で大きな音量に盛り上がってしまってだめでした。
ゆっくりしたテンポの演奏がいくつかある中で、このお題に飛びぬけて合うのが、シュヴァルツベルク&アルゲリッチ盤(EMIから出ている「アルゲリッチと仲間たちによるシューマン室内楽作品集」―1994年のライブ録音)でした。ゆっくりしたテンポはもちろん、ピアノの絶妙な揺れと、それに反応したヴァイオリンの繊細なヴィブラートが、少年の、ぎこちなく恥じらいがちな心の揺れに、やさしく寄り添い、しみじみと響きます。現在の野村君のやや屈折した複雑な心情にはちょっと美しすぎるけれど、遠い少年時代の純粋な心を思い返すような方向性の音楽があってもいいかなと思って、投稿しました。投稿の際には、できればこのシュヴァルツベルク&アルゲリッチ盤をとお願いしておきました。
放送ではこのシュヴァルツベルク&アルゲリッチ盤をかけていただき、大感謝です。
CD解説書の表紙と裏表紙です。写真の左端がアルゲリッチ、その隣がシュヴァルツベルクです。