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じゃくの音楽日記帳

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2015.12.17
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12月11日と12日、デュトワとN響のマーラー3番を聴きました。僕にとっての今年最後のマーラー演奏会です。一言で言うと、マーラーの音楽に対する特別な思い入れは感じられませんでしたが、さすがにN響の実力は高かったし、終楽章の音楽は感動的でした。この演奏に文句をつける人は少ないでしょう。しかしそれでも僕としては、複雑な思いを抱いてしまいました。そんな一偏屈マーラーファンの感想を書いておこうと思います。

マーラー 交響曲第3番

指揮:シャルル・デュトワ
アルト:ビルギット・レンメルト
女声合唱:東京音楽大学
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:NHK交響楽団

NHKホール
12月11日、12日

初日と二日目の感想をまとめて書きます。

ベルと合唱団の配置はごく普通でした。舞台の後方、打楽器の乗った雛壇の左端に、チューブラーベルが置かれました。さらにその後ろの雛壇に、前2列が児童合唱、後ろ3列が女声合唱でした。つまり、ベルと児童合唱を高い位置にというスコアの指示を完全に無視した、良くあるごく普通の配置でした。

曲の始まる前から合唱団全員が入場し着席しました。

第一楽章冒頭のホルン主題の呈示は、速めのテンポで始まりました。近年は大植、アルミンク、ノットなど名だたる指揮者が、提示の途中でテンポを落とす「ギアダウン」方式を採用していますが、今回は大きなテンポ変化のない、ごく普通の方式でした。僕が最初にギアダウン方式を体験した2012年の大植&大フィル(兵庫公演)のときはものすごい違和感を感じてしまいましたが、今回の通常方式は、テンポが速いこともあり、ある種のもの足りなさを感じてしまい、そういう自分自身に驚きました。ギアダウン、くせになると怖いかも、です。

第一楽章は速めに進んでいきます。丁寧ではあるし、決して単調ではないのですが、淡白な感じです。初日はN響もまだ調子が出きらず、ピッコロ、エスクラなど小さなひっくり返りなどがポチポチありました。二日目は、より丹精な仕上がりになっていました。

第一楽章途中ホルン主題の再現直前の舞台裏の小太鼓は、舞台裏ではありましたが、舞台から見えないというだけで、すぐ裏手で盛大に叩いたため、距離感のまるでない小太鼓になっていました。

ついでに第一楽章ホルン主題の呈示時と再現時のシンバルの人数についてもここで触れておきます。スコアの指定は提示時が「2人」、再現時が「3人以上」です。今回の演奏では、提示時が2人、再現時が3人で、数は指定通りでした。提示時は、雛壇の上の打楽器奏者が二人で叩くという、普通の方法でした。これに対しちょっとユニークだったのは、再現時でした。ここを3人でやる場合、通常とられるのは、舞台裏の小太鼓を叩き終わってから一人あるいは二人の打楽器奏者がすぐにシンバルを持って舞台に速足で入って来て、舞台に元々いる一人あるいは二人のシンバリストとあわせて3人でパシャーンと叩く、という方法です。この方法は、もしも入場時に打楽器奏者が転んだりすると大事故になってしまうというリスクがあります。今回ユニークだったのは、曲が始まる前からあらかじめ舞台の左端にシンバルが二つ置いてあったことです。舞台裏の小太鼓が終わった後に二人の奏者が手ぶらで入って来て、置いてあるシンバルをとって、雛壇上の一人とあわせて三人で叩くという、より安全性を高めた方法でした。デュトワらしい用意周到さで、方法としては万全でした。

しかし、わたくし的にはその叩かせ方が、いささか不満でした。雛壇上のメインのシンバリストは普通に大きく叩いたのですが、舞台左端での二人の叩かせ方が、いかにも小さくて貧弱だったのです。マーラーがわざわざ「3人以上で」と指定したのは、ここを音響的に(それからもしかしたら視覚的にも)かなり目立たせたかったからだと思います。曲の冒頭の呈示時には二人でかつ「ff」の指示なのに対して、ここでは3人以上でかつ「fff」の指示になっているのです。それなのに3人のうち二人が舞台の端の方で小さくぱしゃんと叩くのでは、とてもマーラーの意図に沿っているとは言えないです。人数をスコアの指定通りにするだけで肝心の音量が小さいというアプローチは、変だと思うのです。

まぁここは音楽的には些細なところで、こんなところにこだわる人もほとんどいないと思いますが、私的には残念だったところです。今回のデュトワは、ベルや合唱の配置といい、このシンバルの扱いといい、後述する後半楽章のアタッカの無視といい、その他細かないろいろなところに、マーラーの音楽に対する敬意のなさというか、思い入れのなさを、強く感じてしまいました。確かに、そつはなくて、整っていて、決して悪くはありません。でも熱い思い入れがなく、淡白なマーラー演奏として進んでいき、僕としては少なからぬ物足りなさを感じてしまいます。

第一楽章が終わって、歌手が入場してきて、指揮者の左横に座りました。初日も二日目も、ここで少しですが拍手が起こってしまいました。

第二楽章は、第一楽章と同様、やや速めのテンポであっさり終わってしまいました。

第二楽章が終わって、1番トランペット奏者が舞台裏右手に退場していきます。来るべきポストホルンの用意です。

第三楽章はすこし足取りが遅くなり、落ち着いたテンポになりました。ポストホルンは、舞台裏の右手の奥で吹いたようです。そしてこのポストホルンの距離感は絶妙だったです!私、初日は1階席前方の右寄り、二日目は2階席前方の右寄りで聴きましたが、どちらで聞いても、十分な距離感を持って、かなり遠くから、しかし遠すぎず、どこから聞こえてくるのかよくわからないような響きで聞こえて来ました。

この、「何処からか良くわからないけれどどこか遠くの方から」というのがこの曲のポストホルンにもっとも必要な要件だと僕は思っています。この点については理想に近いものでした。そしてこのポストホルン、音程も音色も素晴らしくうまく、まどろむような美しさで吹いていただきました。掛け値なしにブラボーのポストホルンです!わずかに惜しかったのは、特に初日、舞台上でポストホルンとともに演奏されるホルンなどが、ややもたついた感じがしたことです。ここがきっちり決まっていたらさらに酔えたと思います。第三楽章が終わって、ポストホルンを吹いた奏者がふたたび舞台上に戻ってきて、第四楽章が始まりました。

第四楽章の歌手は、声の質は、比較的高い感じの声でした。この楽章、コントラバスをはじめ、弦楽の響きがとてもきれいでした。

話が逸れますが、僕が初めて生で3番を聴いたのは東京文化会館で、ローゼンシュトックの振ったN響の演奏でした。ローゼンシュトックを聴いたなんて言うと、一体歳はいくつなのだと驚かれるかもしれませんね。ローゼンシュトックは1938年に新響(今のN響)で3番を振っていて、これはプリングスハイムによる3番全曲日本初演の3年後です。しかしこれはまだ僕の生まれるずっと前です(^^;)。僕が聴いたのは、ローゼンシュトックが1972年にN響を指揮した演奏です。この時に一番印象にのこったのが第四楽章で、弦楽合奏がとても美しかったことを今でも覚えています。デュトワとN響の奏でる第四楽章の美しい弦楽を聴きながら、遙か昔のローゼンシュトックの第四楽章のことをちょっと思い出したりしました。

さて、このあとが問題のアタッカ無視です。第四楽章が終わってから、デュトワは合唱団に指示を出し、合唱団を立たせ、そして第五楽章が始まりました。その間合いは短かく、デュトワも途中で指揮棒を下げたわけではありませんが、音楽の流れがそこで完全に一度止まってしまいました。客席からは、楽章間の休みだと感じた一部の聴衆の発する咳払いも少し聞こえてきました。咳払いが出るのも無理はないような、間合いだったわけです。折角、曲の開始する前から合唱団が入場してスタンバイしているのに、このアタッカ無視は残念でなりません。

第五楽章と第六楽章の間も、まったく同じように、アタッカが無視されました。すなわち、第五楽章の音が消えてから、デュトワの指示で歌手と合唱団が座り、そこから改めて第六楽章が始まったのでした。この楽章間でも、客席からの咳払いが少し出ました。出ても仕方がない間合いの取り方でした。

このようにして始まった第六楽章ですが、しかしこれが、先行楽章とは驚くほど異なり、ゆっくりしたテンポで、じっくりと歌われて充実しています!N響の弦の実力が余すことなく示されていきます。

金管コラールから盛り上がっていって、主題が高らかに歌われ、ホルンとトランペットがちょっと残ってしずまっていき、そこから再びもりあがって最後の「大いなる歩み」(単に個人的な呼び方です)、このあたりは完璧な揺るぎない美しさがありました。

この大いなる歩みでの二人のティンパニー奏者のうち、第一奏者は指揮者を見ながら叩き、第二奏者は第一奏者を見ながら叩くという方法でした。これ、僕の友達に以前教えてもらったのですが、アバド・ベルリンフィルがこの方式で叩かせていたそうです。二人の奏者がそれぞれに指揮者を見せてあわせるより、打音のタイミングが合わせやすいですね。今回も、二人のタイミングが良く揃っていました。初日はそれでも一箇所だけ、第二奏者が第一奏者から眼を離してしまい、打音がその時だけ僅かにずれましたが、二日目はそういうこともなく、すべての打音が完璧に揃っていました。

第六楽章だけとれば、本当に感動的な、懐深く、美しく、どっしりと安定した、すばらしい音楽でした。弦楽合奏の響きの美しさはさすがN響でしたし、ホルンの安定した力強さもほれぼれしました。N響が2011年にチョンミョンフンの指揮で3番を演奏したときには、ここまでの美しく充実した終楽章の響きは聴こえてきませんでした。この終楽章は本当に素晴らしかったです。

しかし、僕は複雑な思いでした。僕にとっての3番は、第六楽章だけ良ければいいというものではないのです。マーラーの音楽に対する敬意というか愛というか、そういうものが第一楽章から感じられること、そしてそのようにして進む70分余の先行楽章群がきちんと充実していることが、僕にとってはとても大事なのです。技術ではないのです。アマオケであっても、その気持ちを感じさせてくれる演奏にときに接することがあり、そのときに僕は深い幸福な感動に包まれます。

今回の演奏、第六楽章が素晴らしかっただけに、それまでとのギャップが大きすぎて、複雑な思いで受け止めることになった3番でした。

 






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Last updated  2015.12.19 22:54:06
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