2016年初めてのきらクラドンの正解曲は、マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ、間奏曲」でした。この曲には思い出がありますので、まずはそれについて書こうと思います。
今回の放送で最初に読まれた正解曲の投稿が、札幌のリスナーさんからでした。この歌劇を最初に見たのが、高校の文化祭のときだったというお便りで、ちょっとびっくりしました。
というのは、この歌劇は、僕も高校の音楽部のとき、文化祭で上演した、思い出の曲なのです。もう40年ほど前になります。当時の音楽の先生が、ご自身テノールの歌に長け、独唱の指導に情熱を注がれた先生でした。その先生の指導のもと、毎年文化祭に、音楽部でオペラを上演していました。僕はトランペットをかじっていたので、トランペットでオケ伴奏に参加しました。オケと言っても少人数で、多分全部で20人位だったと思います。楽器もそれほどそろっていないので、先輩方が編曲して、自分達でできるようにして伴奏しました。でも独唱や合唱は原曲をそのままで、全曲を上演しました。僕はその頃はもっぱらマーラー・ブルックナーを中心にオケものを聴いていて、オペラはほとんど全く聴いていなかったので、この曲のことはまったく知りませんでした。しかし練習するうちに、きれいなメロディーが沢山出てくるこのオペラを、とても好きになりました。先輩方の歌が素晴らしかったこと、脳裏に刻まれています。
この間奏曲は、僕はトランペットだったので出番がなく、練習ではじっと聴いているだけでしたが、世にも美しいこの調べが弦楽合奏で奏でられるのを、いつも感動しながら聴いていました。途中、メロディーに、ドーレミファソラシドーーーとオクターブの上行音階が出てきますよね。これ、古今東西の曲に数多出てくる上行音階の中でも、もっとも美しいものの一つだと思っています。さらにその後、ドをひたすら繰り返すところ、ここ本当にたまりませんね。(なんだかここ好きクラシックのような感じになってきました。)
ところでこのオケに、自分と同学年のI君がフルートで参加していました。このI君、滅茶苦茶にフルートがうまくて、I君が吹くとどんなパッセージにも、うっとりとさせられていました。この間奏曲ではフルートはずっーとお休みで、最後の最後に長い和音の一部として一音だけ吹くのですが、その一吹きの美しさに、練習のたびに毎回じ~んと感動していました、この曲を聴くと、今もその記憶が鮮やかによみがえってきます。
今回改めて、僕の記憶は正しいのかどうか、本当にフルートは最後のひと吹きだけだったのか、楽譜で確認してみました。まず間奏曲の楽器編成は、弦楽4部(コントラバスお休み)、オルガン、ハープ、フルート3本、オーボエ、クラリネット2本でした。木管に関しては、途中オーボエが、メロディーの合いの手をちょろっといれます。しかしフルートは、ずっーとお休みで、最後の最後に、長い和音に参加していました。やはり記憶のとおり、この一音だけでした。この美しい間奏曲のメロディーに身をゆだねて聴きすすんできて、最後の最後にこの和音に到達するとき、本当にじーんとしますし、I君の奏でたあの美しいひと吹きをいつも思い出します。
I君は、周りからはプロを目指したらどうかと言われていましたが、あくまで趣味でやると言っていました。あのI君、卒業してから会っていないけれど、今はどうしているのかな。きっと今も美しいフルートを吹いていることと思います。