久々に、きらクラ放送の感想記事です。
1月28日放送で、きらクラDONの正解発表が「愛の悲しみ」でした。ご夫婦で農作業をしながらラジオを聴いていて、きらクラDONの出題になると急いでラジオに走り寄るが、間に合わなくて良く聴こえないことも多いというお便りから、お二人の仲の良さが伝わってきました。
ニアピンの「金婚式」に3票集まったそうです。出だしの音型そっくり、どちらもイ短調。じっくり聴いて、ヴァイオリンの弓の弾き方のニュアンスが違うくらいでした。金婚式と表裏一体で愛の悲しみがあるとは、人生は深い。。。
この2曲、どちらが先なのだろうと気になって、調べてみました。マリー(1852~1928年)の金婚式が1884年。クライスラー(1875~1962年)の愛の悲しみの出版が1905年でしたので、マリーが先でした。クライスラーが果たしてマリーの曲を意識していたのかどうか、興味深いところです。
いずれにせよ、マリーは32歳のときに、クライスラーは30歳のときに、それぞれ作曲しているんですね。二人とも30代前半にして、すでに愛の奥深さをかみしめていたのでしょうか。
「愛の悲しみ」は、それほどいろいろな演奏を聴いていませんが、僕がこよなく愛しているのが、「ロッケンハウス音楽祭アンコール集」(Philips 1992年)に収められたクレーメルとアルゲリッチによる演奏です。テンポの揺れが極めて大きく、情感たっぷりに歌われます。愛の悲しみがどんなものか、まだ良くわからない自分ですが、ともかく胸に沁みる演奏です。終わったあとに聴衆が思わず漏らす声と言うか息がまた素敵で、満ち足りた感嘆の念が伝わってきます。
このCDが国内盤として発売された1993年のレコード芸術誌の新譜月評欄で、音楽評論家の岩井さんが「ひょっとすると、この時期のクレーメルには、この曲に託して歌いたい彼の個人的かつ痛切な悲しみがあったのかも知れない。ともあれ、“悲しみ”が妙にリアルに迫ってくる演奏であった。」とコメントされていたのに頷いたものです。
動画サイトにはこの演奏は見つかりませんでした。代わりに、この二人による1989年のモスクワライブの動画がありました。クレーメル42歳、アルゲリッチ48歳位ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=i2kK9LZ9SPU#t=48m58s
これも素晴らしいです。ちなみに演奏時間はこちらが4分10秒ほど。対してロッケンハウスの方は4分35秒ほどです。多分両者ほぼ同時期の演奏だったのだろう、と想像します。