カテゴリ:きらクラ!
もう大分以前、音楽之友社のON BOOKSシリーズの1冊、磯田健一郎著「近代・現代フランス音楽入門」という、肩の凝らない素敵な本を愛読していました。フランス近現代、サティ以後の作曲家ひとりひとりについて、人生と音楽がコンパクトに紹介されていて、お薦めCDガイドもついているという、超親切な本でした。軽妙洒脱な名解説で楽しくもホロリとさせられる文章と情報が満載でした。
その中のピエルネの項目で、お薦めCDとして2枚紹介されていたうちの1枚が、神秘劇「ベツレヘムの子供たち」という曲でした。それまでピエルネの音楽は全く知らなかったので、なんとなく興味を感じて買い求めたところ、ときにわらべ歌風、ときに清らかな児童合唱の響きの美しさに、すっかり魅せられてしまいました。それ以来ピエルネの作品で一番好きな音楽になりました。 とは言っても私、恥ずかしながら歌詞内容には基本的に無頓着なリスナーです。この曲についても、歌詞内容はもちろん、あらすじも、これまで全く知らずに聴いていました。それで満足していました。 そうしたところ、今回(2019年11月)きらクラでピエルネの強化月間になりました!折角の機会なのでこの曲をリクエストしようと思いました。しかしそのためには曲の内容を知らないとまずい、と思って慌てて歌詞内容を調べたところ、イエス・キリスト生誕の夜の心温まる物語であることを、今回初めて知りました。 舞台はベツレヘムの平原。聖なる夜に、星から「イエスが生まれた、寒がっている」と聞いた羊飼いの子供たちが、木の実やらリンゴやら牛乳やら、思い思いの贈り物を持って厩を訪れ、贈り物を渡して帰って行くという、なんとも愛らしい物語です。オーケストラ伴奏の上に、ナレーターが語り、児童合唱が歌い、歌手たちが星、天の声、聖母マリア、羊飼い、ロバや牡牛(^^)、子供たちなどの役で歌い、絵本のような物語が進んでいきます。なかでも子供たちが厩について、聖母マリアに招かれて中に入り、ロバや牡牛と一緒に、すやすやと眠っているみどり児を囲んでひざまずいて見つめ、やがて目をあけたイエスに贈り物を渡す場面の静かな音楽の純朴な美しさは、素晴らしいです。この部分をリクエストしたら、幸いにも番組で流していただけました。 ピエルネ作曲 神秘劇「ベツレヘムの子供たち」 Lasserre de Rozel指揮、ラジオフランスフィル、ラジオフランス児童合唱団ほか 1987年12月10日、パリ、プレザンスのノートルダム教会(調べたら先日消失したノートルダム大聖堂とは違う教会です) このCDは教会でのライブ録音で、最後に拍手が入っています。子供も楽しめるメルヘン的な世界かと思うと、途中突然に天の声で、イエスの十字架上の最後の言葉「神よ、なぜ自分をお見捨てになるのですか」という言葉が歌われたりして、良くわからないけれど大人が聴いても味わい深い内容のようです。 おそらくヨーロッパではこの手の音楽劇をクリスマスの季節に教会で演奏し、子供もおとなも一緒に集まって、皆で音楽と劇を楽しみながら、信仰心と共同体の絆を深めていくのだろうか、と想像します。そんな上演にもしも立ち会えたら素敵だなぁと思いますが、信心のない者にも聴かせていただけるかどうかはわかりません^_^。 CD解説書の中にあるラジオフランス児童合唱団の写真です。 磯田健一郎著「近代・現代フランス音楽入門」(ON BOOKS 93) 音楽之友社 1991年 今は絶版のようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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