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窯にこもって1ヶ月。私は何かに取り付かれたように作り、焼き続けていました。形にしたい想いはどんどんとあふれ出してきました。そのひとつひとつがどういう想いなのかは、私にはどうでもいいことでした。ただ、最後のひとつ、たったひとつの答えにたどり着くまで、作り続けること。自分の全てを出し切るために。私の全て。。悟の死までの19年間、私は悟に手を握ってもらっていました。突然その手がなくなり、闇の中で立ち止まっていた時に、現れたのが悠斗でした。悠斗が伸ばしてくれた手をつかめず、私はこうしてひとりになり、、、窯で断続的に、考えていたこと。私の手を次に握ってくれるのは誰?いえ、私が次に手をつなぎたいのは誰?悠斗?謙吾?それとも、、他の誰か?相手の手が、もう、私に伸びていなくても、これまでのように、ただ、受動的に愛を受け取るだけじゃなく、能動的に、つかみにいきたい。悟や、悠斗や、謙吾のように、今度は自分が誰かを、自分が誰かに、、揺ぎない愛を差し出していきたい。強くなりたい。強くありたい。そして・・・、その作品を窯から出した時、自分のココロの中の、何かが見えた気がしました。しばらく焼きあがったばかりの作品を眺める私。迷いもためらいも洗い流され、ひとつにまとまっていく気持ち。一緒にいた祖父も、私を見て、くしゃっと笑い、「答えは出たみたいだな」と優しく言いました。フジシマくんも、そばに来ました。そして、丹念にそれを眺め、慎重な口調で、「・・・謙吾に連絡しないといけないな。」私は、しっかりと、頷きました。ずっと待たせてしまっていた謙吾。ごめんね。でも、やっとこうして。。答えが出たから。 ← 1日1クリックいただけると嬉しいです。