box 59 ~碓氷~
稽古が終わり外に出る。ほっとする瞬間だ。時計を見る。・・今日は珍しく早く終わったな~。ココロでだけ伸びをして、目をやったはるか前方に、悠斗と慶介の後ろ姿が見える。・・ったく二人して、そそくさと歩いて、・・二人とも、彼女と会うんだな、きっと。そんなことを思うと、ほっこりした気分になり、少し微笑んで歩き始めてから、僕は僕で、ケータイを取り出した。何通かの新着の中から、蒼夜からのものを選んで読む。着信時間は夕方だ。蒼夜→碓氷 おっ疲れ様っ。今何時ですか?また明日になっちゃってる^^;?今日は珍しく、なんとちゃんと大学の講義に出てたんだよー。今からそのお祝い?に久々に会ったトモダチと飲みいってきま~す。またメールするね。元気なメール。講義にも出たのか、えらいえらい。何よりだ、けど。・・・飲み会か~。トモダチってオトコ?オンナ?そんなことどうしても気になる僕。だけどそんなこと思うたびに、ただの恋人としての不安なのか、親子ほど歳の離れた恋人だからの(認めたくはないが親のするような)心配なのか、自分でも分からなくなる。体の関係は多くの女と山ほど持ってきた僕だけど、ちゃんとした恋人関係って、場数踏んでないからな~。しっかり歳をとってきたのに、その部分はほとんど成長してない僕なんだ。・・・そんなことより、早く終わったから、会いたいな~って思ってたけど、トモダチと飲んでるんじゃ、、電話かけるのも気がひけるな、、。それに、昨日の今日だしな・・。年の差なんてない、普通の若者カップルならどうなんだろ~??こういうときもまた年のこと、必要以上に意識しちゃうんだよな。友達と出かけてる先にまで電話して、空気がよめないとか、まさかとは思うけど、ウザがられてもやだしな~。ん~・・・。迷いつつも、ケータイの画面に蒼夜のデータを呼び出して、ふっと夕べの蒼夜を思い出す。夕べは、、ここのとこずっと稽古が忙しくて会えなかったから、久しぶりだったんだ。だから、もちろん、電話で会いたいっていうだけですごく喜んでくれて。迎えにいったときの嬉しそうな無邪気な笑顔。ベッドで見せる大胆で、でも、しなやかなオンナらしい仕種。そして腕の中で眠るあどけない寝顔。色んな蒼夜が僕の頭の中にめぐって・・・。・・・あぁ、やっぱ、ガマンできない。と、電話をかけかけて、僕の中の、オトナの部分が僕を止める。・・昨日の今日だぞ?がつがつし過ぎじゃないか?蒼夜だって他の人間との時間が必要だろ?遊びたい盛りの20歳だぞ?しかも久々に会ったともだちって書いてんだぞ?って。小さく息をついて思う。・・・さらっとしたメールだけにするか。僕はキーを打ち始めた。