14 ~ミリ~ let me sleep beside you
しばらく書いていると、段々と夜が明けて、外が白んできた。ベランダに出て、空を見上げる。山の方はオレンジがかり、そしてまだ蒼い上空には、有明の月。空がとても広く感じる瞬間。少し冷えるな、と思った瞬間、後ろから、抱きしめられた。耳元で囁く慶介。「ミリ、愛してるよ」ありえない不意打ちに、すっごく、ドキドキしてしまう。「え?」と振り返ると、寝不足の顔をしたケースケが、「愛してるって言ったんだよ」ケースケがこんなに気持ちをストレートに伝えてくるなんて。まだまだ気持ちの定まらない私は、素直に受け取れず、ちゃかしてしまう。「何それ~。なんかドキドキしたじゃんっ」「そうか?」それでも、満足げな慶介。「よしよし、作戦成功」「作戦??なんの作戦?」「ドキドキさせる作戦だよ。俺たち、なんていうか、もう、そばにいるの当たり前すぎて、トキメキっていうの?ドキドキが足りないだろ?だから、ミリをもっと俺でドキドキさせようと思って」「あのねえ。。」「なんだよ」「そんなの落ち着かないよ~。ケースケ相手に、ドキドキドキドキしてたら」「それでいんだよ。落ち着いてちゃダメなんだから。分かってるだろうけど、俺、本気で言ってんだぞ?」「ん~。。。あ、じゃあ、ケースケは、あれだね?私にいっつもドキドキしてんだよね?」「ドキドキ?ちっげ~よ、お前。俺がミリには、ドキドキじゃなくて、ハラハラだろ?」「・・・・」「何させても危なっかしいんだからさ。いつでもどこでも、こけそうになるし、いや、実際にこけるし、ワイン1人で開けさせたら、未だに指切りそうになってるし、飲むのだけは一人前だけど。いや、一人前以上だよ、だいたい飲みすぎだし。ああ、ああ、あと、あれもあれも、外で飲んだら、絶対、他の人に間違えてついていこうとするし、誰のそばでも、すぐ眠くなるし」事実過ぎて反論もできない。。ここは、話題を変えなくちゃ。。「ねえ」「ん?」「もう離してよ」「なんで?」「なんでって、恥ずかしいでしょ」「ここ7階だぞ?こんな時間に、誰も見てないよ」「私が、ケースケに恥ずかしいんだよ」「何言ってんだか、今まで散々添い寝させといて。添い寝がいらなくなったら、抱っこもさせてくんないのかよ?すねるぞ?」ほんとにすねた言い方に、ちょっと焦る。「・・・怒ってる?」「添い寝断ったこと?」「うん」「いや、怒ってないよ。夕べはショックだったけど。でも、考えようによっちゃ、あれだろ?添い寝がいらないって、まあさみしいっちゃさみしいけど、そんだけミリが立ち直ったってことだから、今度はこっちから堂々と動けるってことだろ?」「ケースケから??」「そう。俺、これから、本気でお前に猛アタックかけるから、覚悟しとけよ」「ええええ??」「愛してるって口に出すのもそう。今まで、ガマンしてたけど、もうガマンしない。あと、」「あと?」「次、一緒に寝るときがきたら、その時は、一晩中、寝かせないからな。それも覚悟しとけ」真剣な瞳に、不覚にも、くらっときてしまう。私はごまかすために、ケースケをにらんで、「朝から、エロいよ!」って言ってやった。ケースケは、はは、と笑って、「でも、ま、猛アタックかけるけど、返事をもらうのを焦るつもりはない。ミリは、納得いくまで、自分のしたいようにしろよ。俺、答えが出るまで、ちゃんとお行儀よ~く、待ってるから」「これのどこがお行儀いいのよ?」抱きしめる腕をペチペチ叩いていう。笑って離れる、ケースケ。「なあ、、、だけど、ちょっと聞いていいか?」「何?」「俺、かなり劣勢?」「え?」「ミリが挙動不審の原因、、やっぱ、、、男なんだろ?」「はあああ?違うよ」「じゃあ、なんで隠すんだよ」「ノーコメント。」「やっぱり、、、なんだろ?」「あれ?」「ん?」「なんか、いきなりパワーダウンじゃない?ついさっき、覚悟しとけ、なんて言ってたのに??」「・・・だな。もっかい寝るわ。。」ケースケは私を連れて部屋に入ってから、自分は寝室へ、2度寝に戻っていく。私は、(朝だから)コーヒーを淹れながら、あ~あ~あ~、かわいそうに、強がってみても、やっぱり、相当、こたえてるんだよね。私が、添い寝断ったっていうことより、なんか、別の誤解がありそうな感じなのが気になるけど。と、思う。でもね、ケースケ。私が一歩踏み出したら、ケースケも、一歩踏み出そうとしてくれてる。これって、いい感じだよね。ケースケからの、「愛してる」。また思い出して、胸がドキドキする。ケースケからの、久しぶりの、「愛してる」。と、その時、前に言われた時のことを鮮明に思い出して、目を閉じる。決して、甘い記憶じゃない、ケースケの初めての告白。だって、前に、ケースケから、「愛してる」って、言われたのは、・・・私が死のうとした時だったから。←1日1クリックいただけると嬉しいです。