今季のドラマ感想「アンフェア」
初見の印象はあまり良くありませんでしたが、複数の事件が最終的にひとつに繋がっているという構成は非常に私好みであったので、最も楽しみにしていたドラマでもありました。初回、長時間の割に説明不足で展開が急であったことと、ともすればカメラワークや演出に凝り過ぎていて非常に観づらい印象であったのですが、回を重ねるごとに余分な部分を削ぎ落としてスピーディ、かつ絶妙な話の繋げ方に感心いたしました。やや強引というか細部の矛盾は大いにあったものの、意外性というミステリーの基本的な部分はきっちり押さえ、複雑な親子・夫婦愛や、組織内の力関係の暗躍など、それなりに魅力があり、最後まで飽きずに楽しめたものであります。最初にお断りしておきますが、私は概ねこのドラマについては肯定的であります。ではここから突っ込みをw※(以下ネタバレあり)主人公、雪平夏美に最も近い人物がすべての事件の黒幕というオチだったわけですが、”復讐”というキーワードで、犯人が運営する×サイトを通じて第一(瀬崎)第二(牧村)の事件の被疑者が繋がるところまではいいとして、主人公の同僚である蓮見が主人公の娘の命までをも奪おうとする程の動機が一切語られていないのは最大の手落ちでしょう。発覚後、捜査の手がかりを残さねばならぬ行きがかり上、死ぬでもなく生きるでもなく、でも手がかりは教えることができる状態wにしておいて、その手落ちを深く追求できないように施したものの、やはり苦し紛れの感は否めません。犯人にしても、動機という点においては矛盾はなかったかも知れないが、それまでの経緯を観ればどう考えても取ってつけたような印象しか残りません。それは何も犯人に限ったことではなく、蓮見と山路が愛人関係であったことがわかる件も直前になってお揃いの携帯ストラップを見せるなどの不自然さが目立ち、それまでに蓮見が見せたいけすかない野郎という小芝居は一体何だったのか、という気がします。話の展開上”意外性”という要素が重要なのは理解できるのですが、それまで一切そぶりも見せていないどころか明らかに観ている側に対して理不尽な誤誘導は、ドラマのキーワードではないが”アンフェア”なやり方だと思う。尤も、単に私が伏線に気付いてなかっただけなら申し訳ないと言うほかありませんが。あと、第二の事件の牧村が娘の前から連れ出されて後、共犯者であることが判明するシーンであの演出(いきなり煙草を吸い出して口調もガサツになる)をした奴、一歩前へ出ろw木村多江は地味ながらいい女優だと思うが、あの昭和の2時間サスペンスのような陳腐な演出のせいで、恐らく普段吸われないと思われるぎこちない煙草の吸い方と相まって演技自体も安っぽくなってしまったのは大いに残念であった。別のところにも書いたが、狙撃されるなんてあまりにも安直な処理の仕方についてももう少し考えてもらいたかったと思う。あと主人公も、何故に犯人に対していきなり心臓をぶち抜くのか理解に苦しむ。物語上、以降生き残っていては具合が悪いのは何となく想像できるがそれにしてもねぇw普通に考えればその学習能力のなさは大いに疑問であります。・・・とまぁ他にも細々した部分はあるのだが、全体としては本当に面白かったですよ。スタイリッシュな映像も、物語が軌道に乗っていない段階で多用されるのは少々ウザかったですが、オープニングナレーションのリレーなど、随所に見るべき箇所はあったと思います。出演者について、篠原涼子は女優として貫禄がついてきましたね。感情表現が難しいクールな役柄を無難に演じていました。難を言えば、幸せ太りなのか若干肉付きがよかったことと、走るシーンでの女走りくらいでしょうかw瑛太はこのドラマで最もおいしい所を持っていきましたね。これを機に、今後の活躍が十分予想されます。ひょっとしてメインを張れるかも?濱田マリもバイプレイヤーとしてコンスタントにドラマ出演の実績を作り、今回のような恐怖を感じさせる役からコミカルな役まで本当に何でもソツなくこなせる貴重な人材です。モダンチョキチョキズのファンだった私はボーカルの”濱田マリ”も復活して欲しいのですが・・・。寺島進は管理官なんてキャリアよりチンピラ役の方がしっくりきますねw来季に「富豪刑事」が復活しますのでそちらに期待しましょう。その他出演陣も、それぞれ持ち味を発揮できていたのではないかと思います。原作は未見ですが、機会があれば読んでみたいと思います。余談ではありますが、本作の脚本を担当された佐藤嗣麻子氏のお名前に何となく見覚えがあって調べてみたところ、先日までプレイしていた『鬼武者』のCG演出を担当されていたことが判明しました。