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テーマ:ワイン大好き!(30867)
カテゴリ:芸術
Stanley Kramer スタンリー・クレイマー監督は
【ニュルンベルク裁判 Judgement at Nuremberg 1961】や 【招かれざる客 Guess Who's Coming to Dinner 1967】などの名作で映画史に特筆される名匠である。 両方の映画ともかなり深刻なテーマなので、まあ考えさせられるというか、考えたい人向きの映画なのである。 楽しめる映画ではない。 しかし、名作という名画はそういうものだ。 クレイマー監督作品で、文句なく楽しめるのが、イタリアのスプマンテとベルモットの名酒【CINZANO】の産地、サンタ・ヴィットリア村を舞台にしたアンソニー・クィン主演【サンタ・ヴィットリアの秘密 The Secret of SANTA VITTRIA 1969】である。 これは留学していたときに、アメリカのニッケル・オデオン(名画劇場)で最初に見たのだが、実に面白かった。 今でも日本版のDVDは出ていないし、日本で公開された経緯もないようだ。 それがたまたま輸入版DVDの廉価セールで出ていたものだから衝動買いしてしまったのだ。 http://www.comune.santavittoriadalba.cn.it/ アンソニー・クィンという俳優も実に面白い。 典型的なのは、名画【アラビアのロレンス】で無学で粗暴、しかし勇敢でコミカルなアラブのハウェイタット部族長。 その複雑なキャラクターそのままで、イタリアの小さなワイン村の居酒屋の親父イタロ・ボンボリーニを演じている。 ムッソリーニが失脚し、ドイツに亡命した後、ボンボリーニはムッソリーニ政権が建設した巨大な給水塔によじ登り、そこに書かれた「ムッソリーニ万歳」というスローガンを消そうとする。 村人みんなが応援すると、村を支配していたファシストたち顔役は声援を勘違いし、暴動に恐怖して、ボンボリーニに村長の地位を譲り渡してしまうという展開。 映画の主題は、このワイン村をドイツ軍が占領して、銘酒をごっそり強制徴発(つまりは軍事的強奪)しようとしたのに対して、村人たちが一致団結してワイン100万本以上を古代ローマのトンネル遺跡に埋蔵して隠す、それが【サンタ・ヴィットリア村の秘密】というわけ。 今から見直してみると、そんなに優秀な作品ではない。 余計なラブシーンが多い。 血のつながらない連れ子の兄妹がエッチして結婚しちゃうとか、看護師から伯爵夫人になったセレブ女性がローマから故郷に逃げてきて、幼なじみの脱走兵と同棲しちゃうとか、ずいぶんムリしてベッド・シーンを組み込んだなと思わせる。 さらに伯爵夫人が、処刑されかかった脱走兵の生命を助けるために、ドイツ軍大尉(ハルディ・クリューガー)の欲望に言いなりになるとか。 この大尉も悪意の人間ではなくて、最初は「8割のワイン」といっていたのが、ボンボリーニの巧みな値引き交渉で「3分の2でいい」と妥協する。 ワインを搬送した直後、親衛隊将校がやってきて、「この村にはもっとワインがあるはずだ」と過去の出荷記録で疑惑をぶつけ、その場でボンボリーニを拷問しようとした。 そのとき、大尉はすぐ制止にはいり、「私が責任をとるから、私のやり方でワインを探す」と約束した。 つまり約束が守られないなら、大尉が親衛隊に職務怠慢で逮捕される危険もあったわけだ。 これは偉い。 部下が村の娘にセクハラしようとしたら、直ちに懲罰を命じている。 しかし大尉もフラストレーションがたまっていく。 「村人たちは家のドアを閉じると、われわれをバカにして笑っているのだ」とヒステリックに怒り狂う。 ボンボリーニたちも大尉に迷惑をかけてはまずいと考える。 そこでワインを隠した事情を知らない元村長とファシスト支部長を親衛隊にわざと逮捕させ、拷問の餌食に差し出す。 拷問の結果、親衛隊は晴れ晴れとした表情で「ワインがないのは本当だ」と帰っていく。 大尉にも撤収命令が届く。 しかし大尉は最後の最後まで疑念を捨てない。 「大尉、撤収時間です」と部下にうながされた瞬間、ボンボリーニが村のワインを一本みやげに手渡す。 「どこかにいった百万本の中の一本です」とささやいて。 ここが痛快。 ドイツ軍が撤収した後、村人たちは大はしゃぎで踊りまくる。 憎まれ役の大尉、クリューガーも親衛隊准将の役で【遠すぎた橋】に好演した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.02.24 20:00:27
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