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カテゴリ:歌謡曲
7月28日はバロック音楽の大家、ヴィヴァルディとバッハの命日でした。よって「調和の霊感」か「教会カンタータ」辺りを聴きながら故人を偲ぼうと思っていたところへ、闘病中だった川村カオリさんの死を伝えるニュースが飛び込んで来ました。
度重なるがんの転移により、快復は非常に厳しいと誰もが思っていたであろう中、彼女は必死に病魔と闘っていたはずです。それにもかかわらず、運命は非情でした。まだ小学生の一人娘ルチアちゃんが不憫ですし、何よりカオリさん本人が気の毒でなりません。享年38、余りにも早過ぎる死でした。同世代としても痛恨の極みです。ただただ胸が痛みます。 デビュー当時の彼女の歌唱力は、正直厳しいものがありました。誤解を恐れずに言えば今聴き直しても魅力に乏しく、私の趣味ではありません。しかし、今年発売された代表曲「ZOO」の20周年記念テイクや「バタフライ ~あの晴れた空の向こうへ~」における歌声は、深みを増した大人のそれへと見事に変貌を遂げています。ドキュメンタリー番組で触れられていた通り、波瀾万丈の20年間で培った人生経験が大きく寄与したのでしょう。これからさらなる進化を見せてくれるはずだったのに。。神様は時に、残酷なことをします。 【ZOO(20th Anniversary)/川村カオリ】 【バタフライ ~あの晴れた空の向こうへ~/川村カオリ】 その後は川村さんを追悼すべく、ずっとバッハのロ短調ミサを聴いていました。リヒターやレオンハルト指揮の録音が定盤でしたが、最近手に入れたソリスト、合唱、演奏の全てが素晴らしい、鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン盤を厳粛に聴き入りました。冒頭のキリエ・エレイソンが流れる中、天国に旅立った彼女に黙祷を捧げては、己自身の未来によぎる不安を打ち消すのに必死でした。 【ロ短調ミサ~キリエ・エレイソン/指揮:カール・リヒター】 最後に、ロシアの国民詩人プーシキンの抒情詩を川村さんに捧げます。早逝したロシア人のお母さんと共に、どうか天国からルチアちゃんの成長を見守ってあげて下さい。合掌。 「ナターシャに」 ひかりの夏の傾きに あかるい日々は流れ去って 音なき夜のまどろむかげには つめたい霧がたちこめる。 たり穂の麦は刈りとられて さざめく小川のひややかさ。 色あせる森のみどりに あかるい空も蒼ざめる。 ナターシャよ ぼくのひかり 君はいまどこにいるのだろう? こころの友とひとときを過ごすのがいやなのかしら。 朝やゆうべの さざ波走るみずうみのほとりにも かぐわしい菩提樹の木立のかげにも 君のすがたは見られない。 やがてきびしい冬の寒さが茂みや野べをおとずれて 煙のこもる伏屋のなかには あかるい灯がともるだろう。 ぼくはいとしい友にも会えずに かごのなかのまひわのように 家にこもって 悲しいこころで ナターシャのことを思いつづけよう。 -「プーシキン詩集」- 金子幸彦・訳(岩波文庫)
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最終更新日
2009.07.29 20:07:57
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