イージス艦と漁船衝突事故に思ふ
衝突1分前、全力で減速=イージス艦に回避義務の疑い-海保が強制捜査2月20日0時30分配信 時事通信<イージス艦事故>直前遭遇の船長「イージス艦は減速せず」2月19日21時5分配信 毎日新聞漁船発見は衝突2分前、「あたご」の回避行動遅れる2月20日3時1分配信 読売新聞 またもや残念な事故が起きてしまいました。すでに、新聞テレビ等で様々な報道がなされておりますが、やはり報道の方向性にも色々あるようですね。 最新鋭のイージス艦が何故?という馬鹿げたタイトルは相変わらずですが、全体としてトン数で1000倍にもなるイージス艦側の過失というのが流れのようですね。 確かに、軍事用艦船として、レーダー視認、肉眼監視など果たさねばならないことがいくつもあり、報道では勤務交代の間隙だったとか、回避行動の遅れ(伝達判断経路の遅れ)という指摘も見られます。 多分、いずれも多かれ少なかれ要因の一つになっているのだろうと思いますし、やはりイージス艦側の過失責任は大きいものになるでしょう。 ただ、気になるのは海の交通で単純にそういうものなのだろうかということです。陸上の乗り物では、やはり大型車輌であればあるほど過失責任が大きくなります。それに伴い、交通制限や安全確認義務が発生するわけです。大型のバスやトラックは左側通行で、ゆっくり徐行で相手を優先と言う具合に。 しかし、海の場合はどうなのでしょう。 今日の読売新聞の記事で識者のコメントの中に、イージス艦が前方の漁船を回避(右旋回もしくは停船)するには1,000m必要だとありました。10ノット(18km/h)で動いているイージス艦は曲がるにも止まるにも約3分は必要だということです。つまり、海の交通ルールでいくらイージス艦側に右回避の義務があったとしても、陸上交通のように簡単に曲がれるものではないということです。識者はコメントの中で、機動性の高い漁船側にも過失があったとし、海の上では両者が回避行動をおこなうことが大事であるとしていました。 なるほど、海の上ではどちらかが悪いと単純に決められるものではないのだということなのですね。最終的には過失責任割合というものが出てくるのでしょうが、現実に海の惨事を防ぐためには、双方の注意が必要なのです。 一般のコメントなどを見ておりますと、「イージス艦が2分もあるのに何故避けることが出来なかったのか」などというのも見かけますが、漁船の動きとイージス艦の動きを同一視している錯覚なんでしょうね。イージス艦が漁船並みの機動性を果たすには相当馬鹿でかいエンジンと舵を搭載してなければならないんでしょうね。 そういう意味で、お互いに急には止まらない、曲がれないという状況の中、より機動性の高い小型船のアクションで状況が変化するのが海の特性だと言えるでしょう。そのためには、大型船による小型船の早期発見と、警鐘発信がいかに大切かということになるのでしょう。 もし、今回の事故でももっと早く発見し、漁船に向かって警笛や発信信号等で回避行動を示していたら・・・なんとか回避できたのかもしれませんね。 いずれにしても、残念な事故です。