|
カテゴリ:歴史人物
新鮮組・斎藤一はやはりスパイだった? 歴史研究家 あさくらゆう 水戸藩郷士『雑記』に裏付ける記述を発見 斎藤一(1844~1915)は、幕末に存在した新選組の副長助勤、いわゆる中間管理職の地位にある人物にすぎなかった。ところがいまや、斎藤は、局長の近藤勇や沖田総司を超える人気を誇っている。その理由は、漫画、アニメによる影響が大きい。特に近年、実写映画されているマンガ作品「るろうに剣心」では、登場人物として斎藤一が実名で、影のあるクールなキャラクターとして登場し、若い男女を中心に人気を博している。斎藤一は昭和40年代頃からすでにTVドラマや小説で主人公扱いされていたが、当時はよくスパイとして描かれるなどで、新撰組ファンにとっては認知度の高い存在だった。 ところが、実在の彼の記録は断片的にしか存在しない。新選組隊士のなかでもめずらしく大正まで存命だったが、本人の記録は明治以降に集中し、特に新選組に入る前の記録は自伝もなく、子孫の回想録に記載があるのみだ。 今回、私は、文久三年(1863)に上洛した水戸藩郷士(半官半民)の田尻邁種著『雑記』(茨城県立歴史館所蔵)という文書の中に、斎藤一の記述を発見した。同書は文久三年の上洛時の記録とされ、二月三日の頃に「小川町(現・東京都千代田区)住居旛下士田沼元五郎内山口右助伜斎藤一 廿三才位」と書かれており、斎藤一の名がある。 さらに「右(井伊)掃部頭召抱ニ相成当時京地へ召出探索致居候之由」とあり、彦根藩の探索方、つまりスパイとして雇われていたことが読み取れる。それに続き、同書には同じ郷士の堀江芳之助の談として「土岐丹波守内山口喜藤太(喜間多)右ハ右人の兄弟ニ而是へ文通往来之事」と付記されており、右助、喜間多ともに親兄弟が一致していることから、後の新選組の斎藤一であることは間違いない。 当時の水戸藩は、彦根藩と安政の大獄、藩主への襲撃等で犬猿の仲にあったので、水戸藩が彦根藩の情報を文書として残したのも納得できる。 また、田尻は水戸藩の内紛として知られる元治元年(1864)の天狗党の乱で暗躍し、慶応余年(1868)の戊辰戦争にも従軍した人物だ。その幕末の志士でもある田尻から一目置かれていたことは、同人をして重要視されていた可能性は否めまい。おそらく斎藤はほどなく彦根藩を辞したのであろう。その後、浪士組として上洛した近藤勇らと合流し、新選組に入隊して中堅幹部として支えた。 イメージでスパイとして描かれていた斎藤一。新選組に入る直前、本当にスパイ経験があったことはこれからの彼の履歴に興味深い一頁を残したといえよう。
【文化】公明新聞2022.7.27 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 15, 2023 06:40:02 AM
コメント(0) | コメントを書く
[歴史人物] カテゴリの最新記事
|
|