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カテゴリ:誌上セミナー
〝希望の種〟をまき続ける 総埼玉農漁光部女性部長 沼尻 宣子 〔プロフィル〕ぬまじり・のりこ 家族とともに野菜農家を営む。1960年(昭和35年)入会。埼玉県深谷市在住。分県副女性部長。
生命の大地を耕す農家に 冷えた体を鍋料理で温める――今年もそんな季節が巡ってきました。お鍋に欠かせない具剤の一つがネギです。私の住む埼玉県深谷市は、ネギの一大生産地。地元特産の「深谷ネギ」は旬を迎え、来月から始まる出荷の準備で大忙しです。 深谷ネギの規格は厳しく、白い部分が30㌢ないと等級が下がってしまいます。上部まで白く育てるために、何度も土を高く寄せる「土寄せ」が品質の決め手です。 甘くて美しい、深谷ネギのブランド力を高めるために、地域の農家と一体になって品質をそろえて、お客さまの信頼に応えています。 50aのネギ畑に加えて、70㌃の畑でブロッコリーも栽培しています。農産物直売所では、生産者の名前を見て、「沼尻さんのだから」と選んで購入して下さる方がいます。「ブロッコリーが甘かったよ!』――皆さんに喜んでもらえることが、一番の生きがいです。
「いい野菜が実証」 19年前、夫が勤める会社の経営が悪化。祈り悩んだ末、夫は早期退職制度を使い、実家の農家を継ぐことになりました。私は3人の子育てをしながら作業を手伝い、夫は慣れない作業で毎日ヘトヘトに。夫の前進に、何枚の湿布を貼ったことでしょうか。 義父は夫に対して、「農業は無理だ」と強く反対していました。それでも、私たちが真剣に働く姿を見て、農業を一から教えてくれるようになりました。その中で、特に印象深い言葉があります。 「いい野菜を作ることが、信心の実証なんだよ」 ――義父母は、3人の子どもを病気や事故で亡くし、三男である夫の「特発性血小板減少性紫斑病」を機に入会。医師の予想をはねのけ、回復へ。信心の確信を胸に、当時、九州深かったこの地で人の何倍もとの思いで働いて、いい野菜を作ることで信頼を築いていきました。 日蓮だ聖人は、門下の四条金吾に「強盛の大信力をいだして、『法華衆の四条金吾、四条金吾』と鎌倉中の上下万人、乃至日本国の一切衆生の口にうたわれ給え」(新1522・全1118)と仰せです。 信心を根本に、社会で仕事などの責任を果たす中で、大聖人門下の四条金吾として、周囲の人々から称賛されるような人間になることを教えられています。 私たち夫婦も、義父母に続いて、創価学会の看板を背負う覚悟で、地域に根を下ろし、信頼を広げるようにしてきました。 夫はこれまで、農協理事、直売所本部役員などを歴任。60歳になっても、農協の青年部で奮闘しています(笑い)。また、ブロッコリーの品種検討会を実施するなど、脳か仲間と切磋琢磨しています。 私は、〝野菜の袋詰めは、どこよりも丁寧に〟と心掛けて、販売所に並べています。 今では野菜の品種が認められ、中央卸売市場でも好評です。さらに、大手スーパーマーケットでも取り扱ってもらえるようになりました。 親子2代で築いてきた多くの方との信頼関係が、わが家の宝です。
地域の灯台として 本年6月2日、北関東を中心に大量の雨と、ひょうが襲い、周辺の農家の被害に心を痛めました。過去にわが家も、台風でネギが全滅したことがあります。 「ここまで育っていたのに……」 やり切れない思いでいっぱいになります。それでも、また種をまく。一度負けても、次に勝てばいい。必ず応えてくれるから――信心を通して培ってきた〝農家の負けじ魂〟を胸に、家族の悩みにも向き合ってきました。 12年前、長男の非行と長女の不登校に、同時に直面。2人とも多感な時期でした。子どもたちの幸せを願い、真剣に題目を唱え続ける中でハッと気がつきました。世間の常識で子どもたちを捉えて、可能性を狭めてしまっていることを。 〝まず、自分が変わろう――〟そう思えるようになってから、家庭で笑顔が増え、子どもたちを受け止め、応援できるように変わりました。夫婦の絆も強くなったと実感しています。子育ての経験を通して、同じ悩みを抱える方に、寄り添えるようになりました。 進路に悩んできた次男は、苦労が実り、来春から法曹界へ進みます。 私自身、9年前から体調不良が続いたため、胆のうと脳下垂体腫瘍を摘出。今は元気に仕事と学会活動に励めるようになりました。 悩んだ分、生命の大地を耕すことで、自身を変えていけるのが信心の力です。 肥料や資材が高騰を続ける昨今、明るい話題がありました。先月、近隣に大型アウトレットモールがオープン。地域に多くの人が訪れ、農産物直売所も盛況です。 池田先生は、農漁光部に「地域の灯台たれ」との指針を示してくださっています。これからも、家族で仲よく、地域の農家と力を合わせて、美味しい野菜をお届けしていきます。触れ合う人に、〝希望の種〟をまき続ける――これが私の生きる道です。
視点 仏は「植え手」 沼尻さんは自慢の野菜を携え、友人と語らうのが大好きです。 私たちは妙法を語ることで、相手の生命にある仏性を呼び覚ますことができます。このことを、日蓮大聖人は、「法華経は種のごとく、仏はうえてのごとく、衆生は田のごとくなり」(新1435・全1056)と仰せです。法華経の肝心である南無妙法蓮華経は、万人を仏にする根源の、「「仏種」です。仏は「植え手」となて、人々の「心田」に成仏の「種」を植えます。 私たちが実践する対話は、友の心に仏種を植える〝仏の行動〟そのものです。たとえ、自身の思いが相手に届かないように見えても、必ず発心する時が来る。その時を信じ、呼び寄せるのが祈りの力です。
【紙上セミナー「仏法思想の輝き」生命の大地を耕す農家に】聖教新聞2022.11.29 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 16, 2024 07:12:22 PM
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