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March 29, 2024
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カテゴリ:誌上セミナー

子どもの可能性を開く喜び

信越教育部女性部長  齊藤 順子

 

〔プロフィル〕さいとう・じゅんこ

創価大学を卒業後、公立小学校に勤務。特別支援教育士。弘仁心理士。1962年(昭和37年)入会。新潟県三条市在住。女性部副本部長。

 

「ことばの教室」で自立を支援

一つの出会いには、人生を変えるほどの力があります。

大学4年の時、小学校で教育実習を終えた私に、児童たちはメッセージカードを贈ってくれました。その中に、「算数が楽しかった」との言葉が。書いてくれたのは、実習中、一番時間をかけた男子児童。彼は算数が大嫌いでした。

彼と接したのは、わずか2週間。彼の変化に心打たれ、教育の道を歩み抜くことを決意しました。

卒業後、地元・新潟の小学校の教員に採用され、通常学級を15年間、特別支援教育を24年間、担当してきました。

子どもの自立と社会参加を見据え、その子どもに最も適した教育を提供する――それが特別支援教育の役割です。

私は主に、言語障がいの通級指導教室、通称「ことばの教室」を担当してきました。子どもたちの発音の誤りを改善したり、コミュニケーションを向上させたりする仕事です。通教とは、1週間のうち数時間だけ特別支援教育を受ける制度。1こまごとに、子どもが入れ替わります。一人一人、課題が異なるので、きめ細かな学習方法で応えています。

子どもの幸福のために、自分に何ができるか試行錯誤の連続でした。

 

 

小さな変化を褒める

特別支援教育の担当になった頃、「なぜ、教えたことを忘れてしまうの?」と、自分の尺度で子どもと接触してしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

今では、子どもの状況に応じて触れ合えるようになりましたが、当時の私には、多くの人とは異なる、その子に適した学習法が分かりませんでした。

「子どもの可能性を開けるように」――。題目を唱える中で、「教育の原点」ともいわれる特別支援教育に携わる姿勢を見つめ直しました。

そんな時、「一代の肝心は法華経、法華経の修行の肝心は不軽品にて候なり」(新1597・全1174)との御文を拝しました。不軽菩薩は、一切衆生に仏性があると信じ、どんな人をも敬い続けた菩薩です。

御文の続きでは、あらゆる人を敬う振る舞いをする示すことが、釈尊がこの世に現れた根本目的である、と結論されています。

子どもたち一人一人に仏の生命が具わっていることを確信し、子どもたちの幸せを願い、寄り添うことが一番大切だと気が付いたのです。不軽菩薩の実践に、理想の教育者像を見ました。

次第に、授業で教えたことが身に着くまで時間がかかっても、〝必ず分かってくれる〟と信じられように。授業の終りには、子どもと一対一で向き合って、「ありがとうございました」とお礼を述べ合います。〝教育にとって大切なことを教えてくれて、ありがとう〟――心から、そう思えるようになりました。

また、小さな変化を見つけて、すぐ褒めるようになりました。「〝力〟の発音が上手になったね!」――親指を立てながら、感動を全身で表現するようにしています。

子どもは、大人の気持ちを敏感に察知します。だから、子どもの成長を心から喜び、たたえれば、必ず通じるのです。

こうした積み重ねを通じて、子どもたちが自らの言葉で表現できるように成長する姿に、可能性の豊かさを教えてもらいました。

 

 

探求心を燃やして

特別支援教育を必要とする学齢期の子どもの数は、ここ10年で2倍に増え、約53万人(昨年度)といわれています。

発達障がいなどに対する社会の認識や理解が深まり、診断を受ける人が多くなったこと、学びの場が整備されてきたことが背景に挙げられます。

しかし、専門知識や経験豊かな教員の育成が追い付いておらず、児童や保護者の要望に応えきれない課題があります。

池田先生が「教司こそ最大の教育環境」と言われているように、学校教育においては教員の姿が子どもの成長に直結します。

そこで、自身の経験を若手の教員に伝えるようにと、「おひさまカフェ」という研修会を2年間、隔月で開催しました。

経験の浅い教員は、多忙さから心が削られる場合もあります。若い教員を孤立させずに、チームで仕事に当たる大切さを伝えてきました。

また、最新の研究や、専門知識を学ぶことも大切にしています。仕事と学会活動の合間を縫って、机に向かい、資格試験にも意欲的に挑戦。これまで、特別支援教育士、公認心理師を取得しました。子どもの気持ちを一層汲み取れるよう、臨床心理学を学び、カウンセリングの研修も続けています。

先日、友人から、「なんで、そんなに頑張れるに?」と驚かれました。探求心を燃やして自分が成長してこそ、子どもの可能性を開けると確信しているからです。

池田先生は、『わが教育者に贈る」で、「全生徒から信頼される先生」との指針を示してくださいました。

この三者からの信頼にこたえ、子どもたちの笑顔が輝く社会を築いていきます。

 

視点

教育は共育

日蓮大聖人は「宝や財宝を積んだ蔵でも、鍵がなければ開いて、中の財宝を見ることはできない」(親36・全943、趣意)と仰せです。あらゆる人に具わる仏界を開く、信心の実践が大切であると教えてくださっています。

子どもも本来、困難を乗り越え、幸福に生きていく力を持った存在です。その可能性を信じて関わる、齊藤さんの自身の「人間革命」が、子どもの可能性を開く「鍵」となりました。池田先生が、〝教育は共育〟と言われているとおり、大人と子どもが共に成長する中に、真の人間教育があるのです。

きょうまで「未来部勝利月間」。受験を控えるメンバーをはじめ、後継の宝をあたたかく育んでいきましょう。

 

 

 

【紙上セミナー「仏法思想の輝き」】聖教新聞2022.12.18






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Last updated  March 29, 2024 06:18:24 AM
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