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カテゴリ:文化
風流踊の無形文化遺産登録 国学院大学教授 小川 直之 先日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産保護条約に基づく、代表一覧表に「風流踊」が記載(登録)された。これによって日本文化に対する国際的理解の一層の深まりが期待できる。 世界各地の無形文化遺産の保護を目的とする無形文化遺産保護条約は、2006年に発効し、現在、締約国180カ国に及ぶ。今回の「風流踊」は、2009年に無形文化遺産に登録された神奈川県の「キャッキロコ」に新たに40件を加えた提案で、24都府県の41件が一括登録された。 今回、代表一覧表に記載された41件の「風流踊」は、すべてが国指定重要無形文化民俗文化財である。それは無形文化遺産保護条約が定める申請条件に、すでに国が保護措置を講じていることが含まれているためだが、「風流踊」の分野で国指定重要無形民俗文化財は42件あり、1件は申請に加わらなかった。それは、七夕踊りを行っている当事者が人口減少と少子高齢化で、今後の継承が極めて困難との判断からのようである。ユネスコ無形文化遺産には、近年表面化した制度自体が抱える課題と、対象となる無形文化遺産を巡る厳しい現実があるが、重要なことは今次の登録を地域の文化継承や活性化、コミュニティーの持続にどう活用するかである。 「風流踊」というのは、歴史的には平安時代末から現れ始め、室町時代から江戸時代に大きく花を咲かせて現在に至る庶民の民俗芸能である。一覧にある京都府の「やすらい花」が一つの典型で、華やかで耳目を集め、心躍らせるという「風流」の精神に基づく芸能で、これには太鼓踊系、念仏踊系、小歌踊系など多様な踊りがある。その目的も疫病などの災厄祓い、死者供養、雨乞祈願などと多岐にわたる。また、太鼓踊系には田植の囃子を起源とするもの、獅子や鹿の踊りなどがあり、念仏踊系には踊り念仏、念仏剣舞なども多種がある。
地域で育まれた多彩な民俗芸能 実情に応じた、活用の模索を
盆踊系では、秋田県の「西馬音内(にしもない)の盆踊」が、かがり火を囲んでの輪踊りで、踊り手は端縫いや絞り染めの浴衣を着て、鳥追笠を被るか、彦三頭巾で死者を表す覆面をする。長野県の「新野の盆踊」は、最後に新仏の精霊を集落境へ送る踊りもあるというように、それぞれに個性がある。 室町時代に成長した「風流」の精神は、現在につながる新たな多種多様な文化をいくつも生み出していて、その保存を活用は、それぞれの歴史と内容を・目的を踏まえる必要がある。国として一括的な扱いではなく、個別事情に沿うことが肝要で、「風流踊」を擁する地方自治体は、その主体者と協議を行いながら、ユネスコの無形文化遺産登録を今後どのように生かすか、具体的な方向付けが望まれる。例えば、新仏くようの盆踊りや踊り念仏、小さなお堂での踊りに観光客を無条件で受け入れることは困難で、紋切り型の観光資源化は無形文化遺産そのものを壊しかねないといえる。 (おがわ・なおゆき)
【文化】公明新聞2022.12.14 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 26, 2024 04:48:53 AM
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