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March 27, 2024
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カテゴリ:文化

異状死になると何が起こるのか

ノンフィクション作家  平野 久美子

自宅での老衰や心不全も

皆さんは異状死という言葉をご存じですか? ともすると「イジョウ」という読み方から「異常」という言葉を思い浮かべて、事件や事故に巻き込まれた「正常ではない死にかた」と思っている方がほとんどではないでしょうか。

異状死をネットで検索すると、「明らかな病死以外の死」「診断されている病気で亡くなる以外の死」などの説明ができます。つまり、病院に入院しているなら担当医が、自宅なら在宅医が看取ってくれる場合を除くと、ほとんどが異状死扱いになるわけです。

たとえば私の父がそうだったように、老衰で眠るような大往生をしても、かかりつけ医が死後診断をしてくれなければ異状死です。お風呂で倒れ、病院に運ばれて24時間以内に亡くなっても、独居の頃津下、自然災害に書き込まれた場合も同様です。

子のように、日本では5人に1人が異状死と判断されていて、高齢化とともにますます増えることが懸念されています。にもかかわらず情報が少なく、異状死の遺族となると、どれほど面倒なことが待ち受けているのか、知っている人は少ない。実は私もその一人でした。

そこで、2年前の母の死をきっかけに調べていくうち、日本の死因不明社会の問題点も分かってきました。それらのことをお伝えしたく、『異状死 日本人の5人に1人は死んだら警察のお世話になる」(小学館新書)を出版したのです。

 

まず警察がやって来る

事情聴取など長時間の対応

 

事件性を前提に捜査に来る

異状死と判断されるとどうなるのか――大きな違いは警察がやって来ることです。病気などが原因で入院中に死亡した場合、医師が死亡診断書を作成します。

一方、異状死になると警察による事情聴取と検視、監察医や警察医によって死因を確定する検案が行われ、最終的に検案書(死亡診断書に相当)が出されます。これを受けないと、火葬も埋葬もできません。

検視というのは、犯罪性の有無を確認するためのもの。そのため、警察がやって来るのですが、これが遺族にとっては非常に煩わしい。警察の皆さんは遺族のことを気にかけてくれますし、「あくまで形式的」という説明はあるものの、聴取される側からすると慣れないことばかりですから、唖然・呆然の連続です。

亡くなったときの状況はもちろんのこと、個人情報、年金額、保険加入の有無など、遺族を被疑者として疑っているかのような質問や、死者への尊厳を欠いたりということも、ないとはいえません。

私のいとこは、パートナーが風呂場で溺死した時、15時間も事情聴取に追われて一睡もできませんでした。「風呂場でヒートショックを起こしても、警察は事件性を前提にして捜査に来ることがわかった」と話してくれたのが印象的でした。

 

 

本当の死因は誰が決めるのか

遺族にとってもう一つの思いは、亡くなった時の最期の様子を知りたいということではないでしょうか。

私の母はショートステイ先の介護施設で誤嚥をおこし、横浜市内の病院で死亡宣告されました。突然死だったため異状死扱いとなりました。

聴取を担当した警察官は「何かあればいつでも連絡ください」との心配りは見せてくれたものの、その後、どのようなことを施設側が証言し、どのように結論付けたのかは「捜査上の理由」から遺族には知らされずじまいでした。

そこで私と妹は3か月後に施設を訪れて「あの日何があったのか」を教えていただくことにしました。警察から何も知らされなかった遺族の、やむに已まれぬ気持がそうさせたのです。母を最期までお世話してくださったことにも感謝を伝えたいと思いました。

自分は〝ピンピンコロリ〟でいいと思っていても、ある日突然、異状死扱いになると、残された遺族に苦労や困惑や思わぬ金銭負担を強いることになりかねません。

元気なうちから終活の一環として、かかりつけ医をしっかり確保し、最期をどのように、どこで迎えたいのか、家族や親友やかかりつけ医やケアマネージャーなどを交えて、いわゆる〝人生会議〟を開いて、計画を立てておくのも一つの方法だと思います。

今回、さまざまな異状死事例を取材して感じたのは、犯罪に関係ないとなると、日本では公衆衛生にとって大切な死因究明がおろそかになりがちだということです。その背景には解剖を避けたい遺族の感情もあると思います。

欧米のように監察医制度を充実させるのが難しいなら、せめてAi(死亡時画像診断)の導入、家庭医・見取り医の充実、孤独死を減らす努力など、さまざまな対策を実行して、正確な死因を国策に反映できる社会に変えていく。そのためには、ひとごとと思わすに皆が関心をもつことが必要ですね。                                     =談

 

ひらの・くみこ 東京都出身。編集者を経て執筆活動に。学生時代から各国を回り、その経験を生かして日本との関係をテーマにしている。著書に『テレサ・テンが見た夢 華人歌星伝記』『トオサンの桜 台湾日本語世代からの遺言』など多数。



【文化Culture】聖教新聞202212.15






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Last updated  March 27, 2024 06:04:33 AM
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