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March 28, 2024
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カテゴリ:教育

テーマ

気を付けたい声かけ

犯罪心理学者  出口 保行さん

どう受け止めているか

全国各地の少年鑑別所で、多くの親子の面会に立ち会ってきました。子どもに無関心であったり虐待をしていたりする親がいます。一方で、子育てを放棄しているわけでも虐待をしているわけでもなく、「自分なりに一生懸命やって来たのにどうして」と思っている親も多くいます。

親が思っている子どもの気持ち(客観的現実)と、子ども自身の気持ち(主観的現実)が一致していない。つまり、ギャップがあるのです。客観的現実と主観的現実。子どもが親の言葉をどう受け止めているのかを意識することで、そのギャップを埋めるヒントは見つかります。

よく子どもに言ってしまいがちな言葉ほど、注意が必要です。ここではそんな言葉を六つ挙げます。

みんなと仲良く

②早くしなさい

③頑張って

④何度言ったらわかるの

⑤勉強しなさい

⑥気を付けて

一つでも言ったことがない親御さんの方が少ないかもしれません。一見すると、どの言葉も社会的には正しいように聞こえます。しかし、親は「良かれと思って」「子どものために」との思いから言っている場合がほとんどです。しかし、だからこそ注意が必要とも言えます。一つ一つ具体的に掘り下げてみましょう。

一つ目の(みんなと仲良く)は個性を抑えてしまう危険があります。大人でも気が合う人もいれば、気が合わない人もいますよね。好き嫌いは誰にだってあります。なのに、子どもには、どんな人とも仲よくしなさいというのは、無理があります。

実際に「みんなと仲良く」を「個性を抑えろ」というメッセージで受け止めている子もいました。協調性は大事ですが、仲良くできないならどうすればいいのか考えよう、というスタンスで話を聴くのが望ましいのです。

 

 

プロセスを褒めよう

二つ目の「早くしなさい」は、言い続けると子供の〝先を読む力〟が育ちません。先を読む力は、生まれながらに持っているものではありません。

子供は「早くしなさい」といわれれば、その場でなんとかしようとはします。しかし、自分で判断できないままです。「早くしなさい」といいたくなった時は、なぜ急いでほしいかも説明しましょう。忙しくて丁寧に説明できなければ、後からでも理由を伝えて、本人に考えさせたいものです。急ぐ必要性を理解することで、自分で時間を見ながら動けるようになります。

 

 

「良かれと思って」「子どものため」は要注意

 

 

三つ目の「頑張って」も、つい言ってしまいますよね。言葉自体はポジティブなものであっても、被害感や疎外感が強い子は否定的に受け止めます。

応援の意味で「頑張って」といわれても「頑張れないお前はダメだ」「もっとやる気を出さないとダメだ」と言われているように感じるのです。

「頑張って」ではなく「頑張っているね」「よく頑張ったね」とほめることが応援になります。結果ではなくポロセス」(過程)を褒めることで意欲は高まります。

四つ目の「何度言ったら分かるの」は、「何度言ってもできないお前はダメだ」というメッセージになっているかもしれません。

「何度言ったら分かるの」は、親が子どもに対し、「こうあるべき」と思っていることを裏切られたという怒りの表出です。しかし本当にそうあるべきなのか、点検してみる必要があります。「何度言ったら分かるの」と言いたくなった時は、自分の思い込みに気づくチャンスです。

 

 

方針を点検する

五つ目の「勉強しなさい」は、繰り返し言われると、返って勉強をやりたくなります。心理学ではブーメラン効果と呼びます。相手を一生懸命に説得するほど、反発が起こって逆の行動を導いてしまう現象です。

ブーメラン効果が起きやすい条件は二つあります。相手が「説得者と同じ意見である時」と「説得者を信用していない時」。「勉強しなさい」と只伝えるのではなく、勉強の面白さを伝えることが大事です。何かにつまづいているようであれば、目標を細分化して、小さな目標を達成することを積み重ねましょう。

六つ目は「気を付けて」。何でも制止すれば、子どもは経験のチャンスを失います。失敗から、落ち込んだり、いやな気持になったりすることもありますが、それが経験の糧になります。

もちろん本当に危ないことは止めなければなりません。ただ、人体・生命の安全に関すること以外は、あえて口出しせずに見守ることも必要です。

心理学では、自分に都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまうことを「確証バイアス」といいます。自分が正しいと思うことを支持する情報に目が行き、否定するような情報を無視してしまう。その結果、思い込みが強固になり、偏った判断をするようになるというものです。子育てでは、特に確証バイアスが働きがちです。子育てや家族のことは、周りが口に出しにくいからです。

この確証バイアスから抜け出すためには、「良かれと思って」「子どものために」と思っていることが、押し付けになっていないかを検証することです。それには夫婦や保護者間で話し合うしかありません。子どもをどう育てていきたいか。子どもがどう受け止めているか。親は確証バイアスに陥りやすいからこそ、新たに触れて見直す機会を設け、親子の信頼関係を築くきっかけにしていきたいものです。

 

 

 

【教育】聖教新聞2022.12.15






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Last updated  March 28, 2024 06:29:26 AM
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