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カテゴリ:仕事学
時代に対応する術を学ぼう
読書の効用として最初に挙げられるのは、本を読むことによって、自分の置かれた状況を正しく理解したり、新しいアイデアのヒントを得たり、あるいは失敗の原因を探ったりする際にたいへんに役に立つということです。オーソドックスな発想かもしれませんが、とりわけ、いまは明日の見えにくい「不確実な時代」ですから、未来予測まではできなくとも、万一に備えるための準備として、過去のさまざまな事例を本から学んでおくのがいいと思います。 時代というのは、たえず移り変わっていくものですが、その流れを見ていると、ことさらに大きな変わり目が、何年に一度、十年に一度いう単位で現れることに気づかされます。電車の軌道を切り替えるポイントを「転轍」と言いますが、そのような転轍が、ときおり歴史の中にもあるからです。 今の日本社会は、まさに転轍の最中にあるように感じます。何度か申し上げたように、学歴社会モデルから個人経験モデルへの大転換が起きているからです。厳し社会を生き抜いていくビジネスパーソンは、このような路線変更をいち早く気づき、その意味を正しく見抜く必要があります。そして、それに臨機応変に対応できなければなりません。 世の中の動きに敏感であろうという思考は、私はおそらく普通の力よりも強く、若い頃から習い症になっていた気がします。それは自分の出自にも関係していて、世の趨勢しだいでどう変わるかわからない身の上なので、常に安閑としていられず、ややもすれば疑心暗鬼になって社会を見つめるくせがついたのではないかと思います。しかし、いまやこれほども、予測不調和な時代ですから、不安になるのはみな同じです。社会を見る目をつけるためにも、できるだけよい本をたくさん読んでください。 本の中には、同時代では的外れのように思え、何十年か経ったのちに正しかったことが分かるものもあります。逆に、リアルタイムでは時代をたいへん言い当てているように見えながら、わずか数年で古びてしまう本もあります。私たちはその辺りを見る目もしっかり養って、「今だけの流行りのもの」と「普遍的な真理を蔵しているもの」を見分ける必要があるのでしょう。そこを鍛えて、10年先、20年先の肥しとして、自分の中にしっかりストックしていきたいものです。
【逆境からの仕事学】姜 尚中kang sang-jung/NHK出版新書 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 21, 2024 05:42:42 AM
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