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May 22, 2024
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カテゴリ:文化

今年127日に逝去――

永井路子と古河

詩人 山本 十四尾

 

文学館の開設など

 歴史文化の礎を築く

 

都心からJR宇都宮線に乗り約1時間で着く古河駅。よく質問されることは、古河はどんな町かと。私は即座に文学の町と答えるのを常としている。それはいまから190年前に雪の結晶・雪姿を観察し183種の雪片を雪華と名付け「雪華図説」を著した古賀城主の土井利位(としつら)を「雪の殿様」と愛称している町であり。1998年に茨城県で初の文学館である古河文学館の開館に尽力し、蔵書や自筆原稿さらに資金の寄付などをし、古河の歴史文化の礎となってくれた立役者で、かつ2003年に古賀名誉市民、2007年に初代古賀大使にもなっている永井路子を「さん」呼びをするほどの親しみをもって呼称している町でもありからです。

 

高校時代から見えた文学的な才能の片鱗

 

その永井路子さんが2923127日に逝去された。享年97歳であった。永井路子さんは3歳のとき、つまり1928年に母親の実家である古河市に移住して以来、今の古賀第二高校から東京女子大にすすみ、卒業後古河に戻り24歳で結婚するまで古河で暮らしている。高校在学中に校友会誌「桃林十号」に「秋に感じたことどもの中から」という随想を書き、大学一年生のときには、「実朝の和歌政策についての時代的考察」を発表するなど文学才能の片鱗をうかがわせている。そして24歳のとき、1949年に歴史学者の黒板伸夫氏と結婚している。「永井路子の歴史小説の特徴は従来の歴史観にとらわれない独自の視点がある」との評があるのは、夫である黒板氏の歴史学者としての歴史観に影響を受けたと私は推考している。ちなみに黒板氏は20155月に92歳で逝去されている。このことを考えても無理のない推考であろうと思われる。

結婚を機に永井さんは小学館に入社に「マドモアゼル」の編集に関わりながら、司馬遼太郎、黒岩重吾らの同人誌「近代説話」に参加している。1962年より鎌倉に移住して40年の間に、実に多くの文学賞を受ける活動をしている。この期間の事績は別の機会にゆずるとして、古河における永井さんは古河歴史博物館開館5周年記念特別展示として、「土井の殿様」の雪の華の模様の世界について、エッセーを書いている。これは名文で、全国の永井路子愛読者にご一読をおすすめする。そして200910月には古河文学館テーマ展記念講演会で『「岩倉具視」でいいたかったこと』を講演している。

このように永井路子さんと古河のつながりは、その年齢を考えるとき天命だったともいえるものの市民は深い哀悼の意を表している。

古河文学館では追悼コーナーを210日に設置した。1028日から224日まで特別展「追悼 永井路子―透徹なる歴史への眼差し」を開催する。その前に624日~820日「『岩倉具視』――永井路子の描く幕末維新史』、8月26日~1022日「原画でたどる永井路子『茜さす』」、202415日~317日「永井路子 珠玉の短編作品」などを企画している。かつ永井路子展は展示室で通年展示されていることも付記しておきたい。なお、永井路子さんの古河での最後の公演は、013年の企画展記念「歴史現象としての女性―女性の果たした歴史的役割」であった。全国の永井路子さんの歴史小説を愛読して下さっている人たちに、ぜひ旅行を兼ねておいで下さりたく、ここにご案内させていただく次第である。

(やまもと・としお)

 

 

【文化】公明新聞2023.35






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Last updated  May 22, 2024 06:13:21 AM
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