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カテゴリ:文化
誰もが演劇を楽しめるように 障がいある人へ鑑賞サポート アートマネジメント学会賞受賞 兵庫県立尼崎青少年想像劇場 (ピッコロシアター)広報専門員 古川 知可子
ピッコロシアターは、「2022年度日本アートマネジメント学会賞」を受賞しました。 この賞は、文化芸術の現場の優れた取り組みを検証するもので、➀特別支援学会でのオリジナル公演②地域の外国人との日本人をつなぐ演劇ワークショップ③視覚・聴覚障がいのほうが舞台を楽しむための鑑賞サポート――の三つの社会包摂の取り組みが評価されました。 その中で最も早い2015年から始めた鑑賞サポートでご紹介します。 当シアターでは劇場附属の兵庫県立ピッコロ劇団の公演で、年数回、「音声ガイド」や「字幕」をつけて上演しています。音声ガイドは視覚障がい者に、舞台上の風景や俳優の動き、表情などを専用のイヤホンを通して音声で伝えるものです。字幕は聴覚障がい者に、セリフや音楽や効果音など、音の情報を文字文化にてタブレットや舞台上に表示して提供します。生の舞台公演に鑑賞サポートが付く劇場は、全国でまだごくわずかです。 私たちのサポートの最大の特徴は、こうしたガイドを劇団員だ作製し、ライブでナレーションや操作を行っていることです。プルの俳優という強みを生かし、演出意図を酌み、作品の雰囲気にあったガイドが好評です。
当事者との対話や専門家の意見に学び
たとえば12月に上演したピッコロ劇団ファミリー劇場『飛んで 孫悟空』の莫開きの音声ガイドは次のようなものでした。 「舞台がパッと明るくなる。一面に広がる筋膜の砂漠布。さあ、旅の始まりです! ツアー客たちの登場。皆、軽快な足取り。希望に満ちた表情で辺りの景色を見まわします」。 いかがですか? 開演のワクワク感が伝わりましたか? 字幕にも劇団員ならではの工夫が凝らされ、大声で発するセリフは大きなサイズで表示し、俳優の縁起のニュアンスを伝えるために、「!」「?」「…」なども活用します。音楽も、作曲家から局のイメージを聞き取り、より雰囲気の伝わるように字幕を造ります。 これらのサポートによって、県内の視覚・聴覚特別支援学校の皆さんも、演劇鑑賞を楽しみに来られます。子どもからシニアまで、この7年間で延べ400人の視覚・聴覚障がいの方が鑑賞されました。 ただ、必ずしも音声ガイドや字幕が必要とは限りません。普段の催しに、どのような工夫や配慮があれば来場できるのか。これから取り組む劇場や演劇団体の関係者には、まず地域の関係団体や当事者グループに直接相談することをお勧めします。私たちも当事者の方との対話や専門家の意見から学びや発見を得て、サポートの改善を続けています。障がいの特性を知る研修から始めても良いでしょう。 コロナ禍、生きづらさや閉塞感を抱えている方も多いと思います。障がいのある方もない方も、社会の中でさまざまな「障害」や「障壁」を感じていることでしょう。そうした経験が、気づきや想像力となって、お互いが思いやれる社会に向かうことを望みたいですし、鑑賞サポートの意義も考えていただければうれしいです。できることから、一歩ずつ進めていきましょう。 (ふるかわ・ちかこ)
【文化】公明新聞2023.3.10 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 25, 2024 04:09:58 PM
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