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カテゴリ:紙上セミナー
〝子どもに最敬礼〟の姿勢で 総千葉教育部女性部長 伊佐治 泉 [プロフィル]いさじ・いずみ 保育歴40年。2011年から12年間、保育部長を務めてきた。現在も都内の保育園に、保育士として勤める。60歳。1962年(昭和37年)入会。千葉県市川市在住。支部副女性部長。
「おはよう! 今日も頑張って、よく来たね」——保育園の一日は、朝の受け入れからスタートします。みんな不安でいっぱいで、最初の頃は号泣です。そんな我が子をみると、お父さん、お母さんも「保育園に預けて良いのだろうか」と思ってしまうでしょう。 でも、心配はいりません。保育園は子どもにとって、〝初めての社会〟です。ここで、人間関係を豊かに結ぶのです。人格形成や発達のためにとっても大事な環境なんです。時間がたてば、みんなニコニコと園で生活を楽しめるようになっていくものです。 子どもたちの〝社会〟を育み、守る立場の保育士として働き始めて40年。延長も2年間、努めました。その中で私は、「1歳の子どもにも、こちらの言葉や思いが伝わるように」と、心と心を結ぶ保育に徹してきました。〝どんなに小さな子どもも、立派なひとりの人間である〟——この信念で接していくことで心を通わせ、信頼を深めてきました。 ある時、また言葉を話せないAちゃんが、自分の思い通りにいかず、お友達にケガをさせてしまいました。怪我をしてしまったお子さんへのケアは当然ですが、Aちゃんにもフォローが必要です。「Aちゃん、先生悲しいよ。お友達もいたかったよ」「でも、あなたも思いが伝わらなくて、つらかったよね」。こう声をかけると、〝気持ちを分かってくれた〟とばかりに、わっと声をあげて泣き出したのです。 避難訓練も真剣です。大人が全力で訓練を行うと、初めは、物々しさにおびえて泣いてしまいます。しかし、「何があっても先生が守るからね」「絶体に大丈夫だよ」と目を合わせて伝えると、泣くのをやめて、安心したような表情を見せてくれます。 子どもは大人の姿や言葉をよく見て、よく聞いています。心を込めて伝えれば、必ず通じています。長年、保育に携わってきた者として、そのことを深く実感しています。
祈って最高の言葉を 池田先生は教育部に、〝教師こそ最大の教育環境〟との指針を示してくださいました。そのためには、常に自分が成長していなければなりません。御書には「南無妙法蓮華経とばかり唱えて仏になるべきこと、もっとも大切なり」(新2088・全1244)とあります。唱題根本に、自身の仏の生命を湧き出していくところに、自身の成長があります。 さらに指針集『わが教育者に贈る』には、「私たちの唱える題目には、ありとあらゆる人の生命から、仏性という最高の善性を呼び覚ましていく響きがあります。朝の強盛なる祈りから、『子どもの幸福』という大目的に向かって、全生徒、全教職員、全保護者の力を引き出し、結集しゆく、希望の回転が着実に始まるのです」とあります。こうした指針の重要性を痛感したのは、子どもだけでなく、保育士などの職員や保護者とも広くかかわる園長の立場になってからでした。 最初は、うまくいかないことだらけ。しかし、〝子どもにとって一番大切なタイミングで、最高の言葉をかけてあげられる自分になろう〟〝関わる全ての人の、さらにその周囲にいる陰の人のことまで祈り、仏性を引き出していこう!〟——こう一念が定まってからは、職員とは、仕事上の「会話」だけでなく、心を通わせる「対話」をするように。また、子どもたちを送り出してくださる保護者の方が、安心して子どもを預けられるよう。多忙な中にあっても、折々に悩みに寄り添い、関わってきました。 先日、60歳を迎え、園長を終えることに。すると、40年前に初めて担任として受け持った、かつての園児から手紙をいただきました。そこには、「先生が誰よりも子どものことを大切にしてくれることを、幼いながらも見抜いていましたよ」と。ありがたいことに、ともに担任を務めたかつての同僚や保護者などからも、深く信頼を寄せていただきました。これらもすべて、学会活動で目の前の一人と心を通わせる力を養ってきたからこそです。また、教育部では。家庭教育懇談会などを通して、保護者の方の悩みに、とことん寄り添ってきました。そうしたえ難い経験が功徳となり、信頼という実証として花開いたことに感謝しています。
万人の仏性を確信 私が保育士の道を志したのは、私を含めて9人のきょうだいを巣立て抜いた母の影響でした。子どもには、全く疲れた様子を見せない母。それどころか。近所の子供の面倒まで見るほど。91歳になった今でも元気いっぱいで、今でも私の方が体調を気遣われています(笑)。元気の秘訣は、〝人に尽くし抜くこと〟にあるのかもしれません。 そんな母は、草創期の学会に入会しました。子どもをどこまでも大切にする戸田城聖先生の姿、戸田先生から聞いた牧口先生の姿を、いつも聞かせてくれました。私自身、小学生の時に直接お会いした池田先生が、子どもたちに温かく優しくしてくださる姿を胸に刻んでいます。 母と、創価三代に師匠に教わった〝子どもに最敬礼〟の姿勢は、万人の生命の仏性を確信する仏法の根幹の精神です。 この精神をさらに貫き、「この保育園に預けて良かった」と保護者の方が安心できる、心と心をつなぐ保育に取り組んでいきます。
視点 六根清浄 御書には、「今、日蓮等の類い、南無教法蓮華経と唱え奉る者は、『六根清浄』なり」(新1062・全762)とあります。この信仰を貫くことで、六根(眼・耳・鼻・舌・心・意。六つの知覚器官)、すなわち生命の全体が浄化され、本来持っている働きを十分に発揮できるという功徳を得ることができるのです。伊佐治さんは、子どものどんな変化も見逃さず最高の言葉をかけられる自分なれるように、また関わる全ての人を幸福に、との祈りの通りの振る舞いで、多くの人から信頼を勝ち取ってきました。心の声を感じ取る。これこそ、生命を持つ力を最大に発揮した、六根清浄の功徳と言えます。御本尊に祈り、仏法を実践する人の生命に行き詰まりは愛のです。
【紙上セミナー「仏法思想の輝き」心と心を結ぶ保育】聖教新聞2023.5.14 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 20, 2024 04:46:37 AM
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