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カテゴリ:文化
注目されるエコ住宅 住宅デザイン研究所所長 金堀 一郎
自分だけの快適さ追求するのはエゴ 日本が工業化の道をたどり、機能やコストを重要視し新建材を使用する中、1970年代のヨーロッパの住宅を見て、カルチャーショックを覚えました。 自然素材で家を造り、手入れをしながら長く住んでいた。暮らしにしても、主婦が織ったタペストリーを壁に飾ったり、窓辺には花やカーテンで個性を演出しているのです。そこには住んでいる人が暮らしを楽しんでいる姿がありました。 当時は旅行者も少なく、日本から来た建築家だと話すと、喜んで家の中を見せてくれました。それぞれ、こだわりがあるから、自分の家を見せたいんです。しかも、これは奥さんが作ったもの。これは有名な職人の作品等々、一生懸命に説明してくれるのです。 住宅の価値は機能性とコストだけでなく、もっと別の、暮らしやすさ休む人に優しいなどの価値もあるのだと気づかされた経験でした。 エコ住宅というのは、人と地球にやさしい家のことです。ほどほどの不便さを受け入れながら、豊かに暮らしていける家を指します。 近代化の中で人間は、便利さを求めてきました。それは、いかに早く、快適にするかというもの。その結果、プラスティックを多用する生活になり、人の健康と地球環境に大きな負担をかけることになったのです。 急に、プラスティックを排除した生活するのは難しいかもしれません。でも、できるだけ自然素材、無垢の木材などを使用して暮らしていくことはできるはずです。 エコロジーには「生態学」という意味があります。自分だけでなく、周囲の環境、宇宙にまで視点を広げ、好ましい環境をつくっていくのが、エコなのです。「エコの反対語はエゴ」と言われるように、自分だけの快適さを追求するのはエゴです。それを一人一人が考えて、実践していくのがエコ生活なのです。
地球にも優しい家 ほどほどの不便さは受け入れる
国産材循環させる持続可能な仕組み 2001年、エコモデル住宅として、広島市安佐南区の我が家を30坪増築した時に、有名な工務店の社長たちを招待しました。すると社長たちは座り込んで動こうとしないのです。自分たちが造っている家とは違う。心地いいと。 完全空調で、高気密・高断熱の住宅の心地よさもあると思います。でも、それとは違う、エコ住宅の心地よさは、体感しなければ分かりません。15年くらい前から、自宅の裏山のツリーハウスを造っていますが、これも、皆さんに、木の良さを体感してもらいたいからです。 近年、自然建材を取り入れる取り組みとして、「DIY型リフォーム」に取り組んでいます。高度経済成長期に建てられた都市部の住宅は空き家となり、中山間地では古民家などの空き家も増えています。これらをリノベーション、リフォームする際に、椋木をはじめとする自然素材を用いようというもの。 普及・指導するための人材を育成する「DIYフォームアドバイザー」資格制度を創設。各地で『木の学校』を開催し、体験学習やワークショップを行います。 マンションにしても、戸建て住宅にしても、いずれは建建て直すかリフォームすることになります。その時に、手軽だからとビニールクロスなどのプラスティック素材を使うのでは、素材自体が環境に負荷をかけ、解体時にも大きな負荷がかかる廃棄物になります。したがって、使用する木材は近い国産の方がいいのです。 そんな「持続可能な木のまちづくり」を目指して、島根・邑南町の製材所と協力して、古楊木材パーツ作りを開始しました。 例えば、10平方㍍程度の小さな小屋を造るには——。工場でパネル化したものを、現場で組み立てるだけの〝お手軽商品〟もありますが、けっこう高価。しかし、パネルではなく、木材のパーツを作れば、もっと安価にできるのです。このパーツはツリーハウスにも利用できるので、木の学校で造り方を学び、木の良さを体感して、そこから自分でDIYリフォームに挑戦しているといいでしょう。その経験は、自分の家を木で建てる際の参考にもなるはずです。 =談
かなほり・いちろう 1947年、広島県生まれ。元安田女子大学教授、住宅デザイン研究所所長。工学博士、一級建築士、早くからエコロジー住宅を提唱し、研究・設計を行う。08年に竣工した「ペンシルビル」がエコ建築として注目を集める。著書に、『DIYリフォームアドバイザー資格認定講座公式キャスト』『「いい家」はこうつくる』など多数。
【文化Culture】聖教新聞2023.6.1 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 1, 2024 05:38:04 AM
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