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September 18, 2024
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カテゴリ:文化

生誕100年 山下清展 百年目の大回想

SONPO美術館主任学芸員  武笠 由以子

 

自由を求めた放浪の先へ

放浪の天才画家、山下清は、日本各地の光景を貼絵で表したことで知られています。現在、東京・新宿にあるSONPO美術館で開催している「生誕100年 山下清展 百年目の大回想」は、代表的な貼絵に加えて、ペン画や油彩、そして絵付をした陶磁器といった幅広い作品をご紹介し、山下清の創作活動の変遷を辿るものです。さらに当時、身に付けていた浴衣やリュックサックなどの身の回りの品、旅行中の思い出やエピソードを書いた日記を通じて、山下清の本来の人物像に迫ります。

ここで山下清についてご紹介しましょう。1922(大正11)年に東京・浅草に生まれた清は、吃音と発達障害のため周囲になじむことが難しく、12歳の時に養護施設「八幡学園」に入園します。ここで、ちぎった色紙を台紙に貼る「ちぎり絵」に触れた清は、次第に画才を開花させ、様々な工夫を凝らした独自の「貼絵」の世界を開拓した清は、18歳のときに学園を抜け出し、自由気ままな放浪の旅を始めます。家々を訪ねて食べ物を乞い、駅の待合室で眠る放浪生活は時に厳しい一方で、清の冒険心を満足させるものでした。旅先で絵を描かなかった清は、時折自宅や学園に戻ると、驚異的な記憶力を頼りに、道中の風景を克明に思い出し、貼絵にしました。こうして、放浪から戻っては貼絵を制作し、再び旅に出るという生活が10年以上にわたって続きました。

大きな転機が訪れたのは、31歳のときでした。放浪中の画家として新聞記事に取り上げられたことで、一躍注目を集めたのです。画業に専念すると決意した清は、高度な技術をもって緻密な貼り絵を制作しつつ、ピン画など新しい政策手法をはじめ、日本全国で開催された個展は大きな評判を呼びました。

さて、本展は5章構成で山下清の初期から晩年までの作品をご紹介します。第1章「山下清の誕生—昆虫そして絵との出会い」では少年時代の最初の貼絵を、つづく第2章「学園生活と放浪の旅立ち」では、学園の日常生活や、日本各地の舞所旧跡などを主な題材とした作品を展示します。この時期の代表作である《長岡の花火》(1950年)は、小さくちぎった色紙や「こより」による緻密な描写と、繊細な色彩表現を顕著に示しています。第3章「画家・山下清のはじまり—多彩な芸術への試み」では、放浪をやめて方着手したペン画や油彩をご紹介します。第4章「ヨーロッパにて—清が見た風景」で取り上げるのは、初の海外旅行で訪れたパリやロンドンの街並みを題材にした貼絵やペン画です。この時期の貼絵は、鮮やかな色彩と遠近法を用いた堅固な画面構成を特徴とします。

5章「円熟期の制作活動」では、絵付けをした陶磁器や、遺作である「東海道五十三次」のペン画をご覧いただきます。この展覧会を通じて、1971(昭和46)年に49歳の若さで逝去するまで、芸術家であり続けた山下清の世界をご堪能いただければ幸いです。

(むかさ・ゆいこ)

 

 

 

【文化】公明新聞2023.7.26

 






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Last updated  September 18, 2024 04:49:50 PM
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