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October 22, 2024
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カテゴリ:紙上セミナー

食する「命」に全力で向き合い

養鶏家  宮下 寛美

[プルフィル]みやした・ひろみ

酪農・養鶏等の「宮下ファーム」を営む。家畜人工授精師。農業経営士。認定農業者。76歳。1987年(昭和42年)入会。愛知県瀬戸市在住。副支部長。県農光部長。

 

「地産地消」の生産者

〝物価の優等生〟と呼ばれるタマゴ。しかし、最近では、飼料や輸送費の高騰などで、価格が値上がりを続けています。やはり今の時代、地元の食料を地元で消費する「地産地消」で、「食」を守っていくことこそ、大事なことだと感じています。

「宮下ファーム」では、標高約600㍍の涼しい気候下で、名古屋コーチンやウコッケイなど約3000羽のニワトリを飼育しています。そのタマゴを、地元の愛知県瀬戸市を中心に販売しています。地域の方々からは、「このタマゴばっかり買ってるよ」と、とても好評。かつて近隣に住んでいて、他県に引っ越した方も、〝宮下ファームのタマゴじゃダメなんです〟と、わざわざ取り寄せてくださるほどです。

農家になって、妻(美代子さん=女性部副本部長)と歩んできた約半世紀、地域のみなさまに愛していただき、ここまで続けてくることができました。

 

 

少しも気を緩めずに

もともと、ウシ1頭から始めた酪農業が宮下ファームの〝原点〟です。酪農も養鶏も、毎日世話を欠かしてしまっては成り立たない〝一日も休めない〟仕事です。

休めないだけではありません。ニワトリやウシの鳴き声から体調を推測し、温度変化に気を使い、エサの配合も工夫。朝は午前5時に起きて祈り、タマゴ配達に駆け回り、戻ってきたら翌日配達するタマゴの回収……。やることは尽きません。

少しでも気を緩めてしまえば、みんな病気にかかってしまいます。逆に、少しの目配りで、大きな違いが表れることもあります。

日蓮大聖人は、「白米は白米にはあらず、すなわち命なり」(新2064・全1597)と仰せです。

「食」としていただく大切な命に全力で向き合い、私たちも命を注いでいく——。こうした思いがありますから、いかなる小事もおろそかにすることはできないのです。歩んできた日々を振り返ると、「月々日々につより給え。すこしもたゆむ心あらば、魔たよりをうべし」(新1620・全1190)とも御文も、心に迫ってきます。

信心の歩みとともに、環境の変化に対応するため、今でも酪農の勉強を重ね、少しでも質の高い「食」を皆様に届けようと、奮闘しています。2015年には、農畜産物の生産拡大と、「地産地消」の推進への貢献を評価していただき、瀬戸市から功労表彰を受けました。厳しい農業の世界で、〝他の人の何十倍も〟との思いで積み重ねてきた努力が実を結んだ瞬間でした。

 

 

地域を「食」で照らす

妻と私は、これまで地元農協の責任者も経験。地域の小中学校の職場体験や、農業大学の研修の受け入れなど、池田先生から農漁光部に贈ってくださった「地域の灯台たれ」との指針を胸に、常に進んできました。

ここ数年は、海外からの農業実習性も受け入れ、学んだことを彼らが帰国後、自国で実践している様子を伺い、世界とも農業でつながっていることを実感しています。

一方、全国各地の農家では、後継ぎに悩むことばかりで、瀬戸市でも農家は激減しており、厳しい状況です。そうした状況の中でも、大学卒業後、ヨーロッパでも農業を学んだ二女(優子さん=地区副女性部長)夫妻が、酪農を担ってくれ、孫たちも「跡を継ぐよ」と農業を学びながら携わってくれています。

ウシ約60頭の飼育や、搾った牛乳を使用した菓子の生産など、朝鮮を重ねています。跡を継いでくれる家族がいることにも、感謝の思いでいっぱいです。すべて題目の力だと実感しています。

地域を、世界を「食」で照らしゆく使命を胸に、まだまだ頑張っていきます

 

 

妻・三代子さんの話

夫と共に歩んできた半世紀は、苦難の連続。「我ならびに我が弟子、諸難ありとも疑う心なくば、自然に仏界へいたるるべし、天の加護なきことを疑わざれ。現世の安穏ならざることをなげかざれ」(新117・全234)との一節を抱きしめ進んできました。

夫は、これまで胃潰瘍や、異穿孔などで何度も入院を重ねてきました。近年も、入院する事態が。少しでも王衣装などが残ってしまった場合、仕事は即、廃業せざるをえません。

しかし、信心の功徳で、その後は回復。今も元気に働くことができています。

池田先生に教えていただいた信心と、〝地元のために〟との思いがなければ、多くの苦難を乗り越えて長年、農業は続けていくことはできませんでした。現在、経営は安定。事業の規模を拡大できており、信心の喜びを実感しています。

 

視点

食の三徳

宮下さんは、「自分たちの事だけを考えていたら、絶対にここまで続けることはできなかった」と語っていました。

日蓮大聖人は「食物三徳御書」(新2156・全1598)で、「食の三徳」——すなわち、食の三つの働きについて教えられています。①生命を維持する働き②健康を増す働き③心身の力を盛んにする働きです。食は命の源です、その職を守り、人々を支える功徳が絶大であることは、間違いありません。

この御書には、「人のために火をともせば、我がまえあきらかにまるがごとし」とも。〝人々のために〟——この思いで行動を起こしていく中に、自身の福徳がらんまんと咲き薫っていくのです。

 

 

 

【紙上セミナー「仏法思想の輝き」地消地産の生産者】聖教新聞2023.9.12






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Last updated  October 22, 2024 05:22:46 AM
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