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車筆太

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2006年10月02日
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 はい。昨日のつづき。
 「アメリカ史上初の女性連続殺人鬼」「モンスター」と冠されたアイリーン・ウォーノスが如何にして「作られた」かに迫るドキュメンタリーが、この『アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女』。
 『テルマ&ルイーズ』『モンスター』と既に2本の映画が製作され、本作以外にもドキュメンタリーが何本も制作されているように、性的虐待の過去、犯罪にいたる過程、司法制度、そして裁判所におけるパフォーマンスと、彼女を巡る境遇は劇的であり、マスコミにとり上げられるには十分すぎる素材であった。
 本作では、この連続殺人事件にまとわり付く、メディアの利権、「シリアル・キラー」という商品に群がる人々が描かれている。しかし、自己言及的になるためか、そこの部分はさほど掘り下げてはいない。実はこのドキュメンタリーの痛恨はそこ。

 アンチ・ヒーロー風に犯罪者を取り上げたり、O・J・シンプソン事件のように裁判が劇場化したりと、アメリカでは犯罪は大衆の好奇心、興味を満たす娯楽として機能しているのだが、その現状に肯定的にしろ、否定的にしろ、深く切り込むことなく、中途半端に客観的な立場からそのジレンマに触れることなく撮影されているのでは、物足りない。
 殺人が娯楽という自覚のないアメリカにとってはこれで十分なんだろうけれど、こちらとしては、それを踏まえた上でのその先が観たかったのに、それ以前の葛藤もないのでは、なんとも浅い。
 
 この態度は死刑廃止を思想の根幹におく、製作者側の態度にも表れていて、その考えを前面に出すでもなく、かといってその理不尽を描くのでもなく、所々にその声が漏れ聞こえてくるのみ。
 昨日も触れたホワイト・トラッシュ、社会の歪みにも距離をおいているのでは、正直得るものは少ない。これでは、便乗して製作されたと言われても仕方がないのでは?
 
 ドキュメンタリーとしては及第点には至らないけれど、『モンスター』のみを観てよしとするよりは、本作とセットで観た方がいい。
 少なくとも、考えるきっかけにはなるのだろうから。

 テルマ&ルイーズ アルティメット・コレクションモンスターキングレコード アイリーン・ウォーノス/シリアル・キラー アイリーン「モンスター」と呼ばれ...





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最終更新日  2006年10月02日 23時11分54秒
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