『タンポポの雪が降ってた』・香納諒一さん
短編7話「海を撃つ日」新婚旅行での豪華客船でのクルージング。カジノで会ったディック・モーガンという美青年。ルーレットの賭け方もポーンと大きく一賭け・・・・で、負ければさっと帰っていく。どうして彼はこんなにお金持ちなのか?何故、船のスタッフ達はそんなお金持ちの彼をよい目で見ないのか?青年と主人公には、共通するものがあった。越えなければいけないものが・・・<追記>ルーレットで楽しく過ごし、それなりの勝ちを納め方。ボワザン・デュ・ゼロ(ゼロとその周辺)」ゼロを中心に並ぶ17個の数字全部に賭けるやり方。0/2/3のトランスベルサルに2枚、4/7、12/15,18/21,19/22,32/35のア・シュバルに各1枚,25/26,28/29のカレに2枚、と合計9枚のチップを張る。出目によって、チップ7枚から13枚が戻ってくる。「ティエール・デュ・シランドル(シリンダーの3分の1)」回転板の27から33までの、連続12個の数字に賭ける。58,1011,1316,2324,2730,3336のア・シュバルに合計6枚のチップを置き、的中すればチップ17枚が戻ってくる。「タンポポの雪が降った」アルバイトをしてやっと貯めたお金でアメリカ留学をした福島信治(シンちゃん)。新橋のスナックでバーテンのアルバイトしていた時に、そこで働く妙子と付き合った。そして半年後、アメリカ留学が決まり妙子とはそれで終わったと思った。何通かの手紙の交換は有ったが・・・しかし、ある日大学に妙子が尋ねてきた。一日は付き合うが、ちょっとした嘘で妙子を帰してしまった。見送るバススティションで、タンポポが雪のように降っていた。。。。。。「世界は冬に終わる」郵便局員のゴローちゃんの夢物語とそれを語る外国人出稼ぎ労働者。「ジンバラン・カフェ」バリ島に遊びに来た女性二人。それぞれに現地のボーイフレンドが出来た。日本での恋人の面白味の無さを感じていた頃に、刺激的な出会い。アラックという椰子の樹脂から造る蒸留酒で、日本のどぶろく・・だというアルコールを飲んだ。”ふわふわした身体が奥の方から燃立つような、日本では経験した事がない酔い方だ。トランプの数字や時計の針や壁のシミや、互いの肌の細かいざらざらなど、些細で普段なら気にしないようなものがやけにくっきりと、しかも目の前に迫ってくるかのように見えた”「歳月」桶谷は、カメラマンの父が撮った写真が雑誌に掲載され、その中の一つの写真の少女が何故か記憶から離れない。もう30年・・・・その少女を捜し始める・・・と!意外な結末が。。。。「大空と大地」今年36歳の祥子、非常に大雑把で男勝りの性格といわれていた。入社当時は、大手出版社の旅行雑誌部に配属された。しかし、異動、異動・・・で「不良の樹」ラーメン屋を父から継いだ英治と妻。英治の兄は今日、刑務所から出所してくる。遅くなって酒臭い兄が帰ってきた。兄の好物のエビフライを揃え、英治夫婦、姉・・・皆、心配して待っているのに。。。子供の頃から、不良の兄・・・父が一番心配していた。ふと、子供の頃に近所の子を刺した事件は、兄ではなく自分だったと思い出す英治。***************************ミステリ作家の香納さんだと思って読んだのだけど・・・なんか、純文学っぽかった。この中では「歳月」がミステリーで、また心に沁みた。