カテゴリ:わかりやすい認知行動療法シリーズ
前回のおさらいをしておきましょう。
なぜどうしても認めてほしくなってしまうのか?それはあなたに「絶対に相手に大切にされる・愛される必要があるのだ!」という根深い悪い思考があるためでした。単に愛情(恋愛・大切にされること)への飢えだけでなく、承認中毒すらも生み出す元凶でしたね。 根深い悪い思考の中の第3の思い込み(第1は承認中毒 第2は愛情依存)は、「人間の価値は、他人と競って勝利し、人生で何を成し遂げたかによって決まる」というものです。このような価値観は、アメリカやヨーロッパで主流の倫理観の基本になっています。恐らくあなたにとってもなじみが深い考え方だと思いますが、実は有害で不正確な概念です。にもかかわらず、自分の業績にこだわる考え方は、ビジネスに熱心に取り組む人間に多くみられます。近年は子供のときから他人と激しく競わされ、何かを成し遂げることに重点を置かれて教育されるため、仕事上の失敗に対して、特に弱い傾向があります。 このような態度を変えるための第一歩は、それがあなたの得になるのかを考えてみることです。確かにあなたの成し得た業績は「一時的に」あなたの価値を高め、幸福感を増やすものでしょう。その結果、やる気もあがることでしょう。 しかし、その結果自分を更に価値ある人間として高めようという気持ちが駆り立てられ、「平均的人間」であることは避けようとし始めます。「勝つため」に懸命に働き、勝利できたからさらに自分を好きになってよい!と思い込みます。 この行過ぎた姿勢は、仕事や勉強が順調なときは、常に仕事や勉強にのめりこむようになり、それら以外の喜びや満足を感じられなくなることを意味します。仕事や学校を辞めたり、成果を上げられなければ、心の内側でひどい空虚感が起こるような気がしてますます仕事・勉強中毒になっていくのです。そして業績が上がらないときは、自分を無価値に感じてしまいます。下手をすると自分には価値がないと思い込み、自分は「良い存在」ではない、とのひどいうつ状態に陥ることすらあるのです。 仕事にのめりこむあまり、家庭を顧みなければ、必ずゆがみも生じます。健康を害してしまうことも起こりえます。真の自己価値を確立できていないためにこれらは起こり、明かに損をするわけです。 成功は幸せを保証するものではありません。成功と幸せは同一のものではなく、互いに因果関係もありません。だから砂地に高い建物を建て続けるような無駄な追求は止めるべきでしょう。成功ではなく、あなたの考え方こそ気分を決める鍵ですから、勝利の興奮などすぐに消えてしまいます。中年あるいは初老期に、ビジネス上の華やかな成功の幻想が崩れてくると、治療を求めるケースが増大します。彼らは結局「成功を求めてきたのだが、私の人生とは何なのか?」という問いにたどりついてしまうのです。 大半の人間は決して大成功者とは言えませんが、それでも多くの人が幸せで、周囲の方々から適度な尊敬も集めています。このことから考えても、幸せと愛は成功だけからくるとは言えないことが明確にわかります。幸せと偉大な業績とはつながりはないのです。 もしもあなたに時間があるならば、日本の戦国時代の有名な戦国大名がどんな業績を上げ、そしてどんな最期を遂げたか。あるいは成功した経営者として名を挙げた人々が、その後どのような人生を送ったのか。それを調べてみるといいでしょう。例えば戦国時代なら武田信玄、ビジネス系ならナポレオンヒルの生涯やその後を調べてみるといいでしょう。幸せとは無縁だと思えることでしょう… では仕事の業績に関係なく自尊心を得るには、どうすればいいのでしょうか。まず、実用的かつ哲学的な方法です。本質的に人間の「価値」などは抽象的であり、実は存在しないと悟ることです。「価値」を求めるよりも、日常生活での満足、喜び、新しい知識、熟達あるいは自分の成長や他人との交際を求めることです。 次に自分を責め、不必要で不合理な考えによって自尊心は失われるということを理解することです。たとえば、創業者の親の意向に怯え続ける某業界の大企業の社長よりも、町の工務店の社長さんのほうが自信があることは十分ありえます。 次に自尊心(プライド)は、自分自身を親友のように扱うことで得られます。大切なお客様をもてなすように、自分自身にも接するのです。意外なことですが、これをしていない人は非常に多いのではないでしょうか。(実は私も昔はそうでした…) 業績至上主義的な考えから離れられない場合、いつものダブルカラム法を用いて、現実的・客観的な反論を加えることです。例えば私を例にしてみましょう。 【自動思考】 私はもっと優秀なカウンセラーにならなければ、多大な業績を上げることはできないし、皆から才能豊かなカウンセラーだと賞賛されない。(注意!本当はこんなことを思っていません) 【合理的な反応】 私はボランティアでカウンセラー活動を行っているが、それでも相手に貢献できたケースは1500件以上あった。優秀になれば貢献の質や量も増えるのかもしれないが、今でも貢献できていて、嬉しい気持ちになれる。 さらに才能豊かとも思われる必要はないので、今後も匿名での活動を継続する予定だ。その方が本当に相手の幸せを考え、営利に関係のない純粋なカウンセリングを提供できる。 つまり!「承認中毒」「愛情飢餓」そして今回の「仕事勉強中毒(価値依存)」の3者には、次のような公式が浮かび上がります。 私は 他人から承認してもらえる。→ 愛情を手に入れている。 →だから!私には価値があるはずだ! 仕事で成功している。 → そして上記の3パターンは全て、自分以外の要素に依存しているということなのです。このからくりに気付き、改善できれば、承認中毒・愛情依存・仕事中毒(価値依存)は同時に解消へと向かっていくことでしょう! 次の「シリーズ14」に続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2024.10.23 15:39:42
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