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テーマ:生き方・人生訓(163)
カテゴリ:処世術
あたかも一万年も生きるかのように行動するな。 不可避のものが君の上にかかっている。 生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。 マルクス・アウレリウス『自省録』(訳:神谷美恵子、岩波書店) マルクス・アウレリウスは以前「君の内面の平和は・・・」で触れたのでプロフィールは省略。 「明日死ぬかのように生きよ。」というガンジーの言葉を思い出す。 人生は永遠ではないのだから、今を精一杯生きろ!という意味だろう。 「不可避のもの」とは“死”に違いない。 ん?「善き人たれ」という表現なので、単純に精一杯というわけではないか? 西欧人だし、バチカンのあるローマの皇帝ということから、パッと見では、 「死後の永劫の地獄を怖れ、生きている間に悔い改める」というキリスト教を連想する。 が、キリストを公認するのは200年程後のコンスタンティヌス帝まで待たなければならない。 アウレリウスの時代のキリスト教は、勢力を伸ばしてきたといえ、ローマの神々を敬う 既存の多神教文化を批判し、その上皇帝崇拝を拒むというとんでもない社会の異分子であり、 怪しい新興宗教の一つに過ぎない。 アウレリウスにしてみれば、自分が統治する社会を乱す悪者だったはず。 キリスト教が全く関係ないとすれば、どういう意味なのか? 彼はストア派の哲学者だったので、当然のごとく答えはその学派にある。 ではこの哲学のいう“善き人”とはどんな人をさしているのだろう。 結論だけいうと、 「内なる自然」である「ロゴス」にジタバタしないで素直に従うということ、 (「ロゴス」は知性と近いのものだと思う。徳とすべきなのかも。) がストア派の理想とする人間の生き方。 この状態を「アパテイア(不動心)」と呼んだ。 (最初、結論の前にストア派の世界観を説明しようとしたのだが、 あんまり意味ないと思い直し削除した。 興味あれば参考として最後に置いておいたので見てみて) 好奇心でストア派の説に触れたが、学説なんて実はどうでもいい。 自分自身が理想とする生き方を送るには、時間が限られてるんだよ。 ということが大事。 生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。 参考 --------------------------------------------------------------------- キプロスのゼノンが創始したとされるストア派の世界観では、 この世界は原因と結果の「因果律」と万物を支配する宇宙原理である「自然」(神?) によって決定されている。 この「自然」は自然法則と動物の内にある「自己保存の衝動」(本能?)をいうが、 人間だけはこの本能よりも「内なる自然」である「ロゴス」に従って生きる存在。 自らの支配原理である「ロゴス」にではなく、動物的な「衝動」の方に従いたいという 欲求こそが「ロゴスにいやいや従う」という人間の悪しき生き方の元凶であると考える。 この「衝動に従おうとする欲求」さえ取っ払ってしまえば、人間は「ロゴスに素直に従う」 という善き生き方を実現できる。 かくして「パトス」(負の方向に偏っているものすごく強い感情)の排除を目指す。 「衝動」に関係するありとあらゆる「パトス」を排除した結果として、 「アパテイア(不動心)」という状態を、人間の理想的なものとして提示している。 この衝動の排除がストイック(禁欲主義)の語源となった由来だろう。 --------------------------------------------------------------------- 参考とさせていただいたHP Webで読む西洋哲学史 ストア派(History of Western Philosophy Stoics) このHPによると ----------------------------------------------------------------- ストア派の冒頭で、彼らの学説は実践的な方向に偏りすぎていたために、 理論的な部分の完成度がプラトンやアリストテレスよりも低下して結果的に 後世にまとまった形で残らなかったということを主張しました。 ----------------------------------------------------------------- という事らしい。 確かに哲学という学問としては理論的な部分が重要なのでしょう。 そこから完成度が低いとみなされるのも理解できる。 でも私個人は実践し易いことの方が重要に思えるし、そっちを好む傾向があるようだ。 なんとなく、儒教、それも孔子等初期のものに通じるものを感じる。 儒教も朱子や王陽明になってくると理論的に完成されてくるが、 『論語』をみるかぎりでは理論はないといってもいいぐらい。笑 でも、深い! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.03.21 21:29:46
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