やっぱり天才!
今日はヴァイオリニストのヴェンゲーロフのカーネギーホールでのリサイタルでした。プログラムは下記の通りです。__________________________Bach: Violin Sonata No.1 in B minor,BWV1014Brahms: Violin Sonata No.2 in A major, Op.100---intermission----Brahms: Scherzo in C Minor for violin and PianoBeethoven: Violin Sonata No.9 in A Major, op.47, "Kreutzer"アンコールブラームス:ハンガリアンダンス第5番自作自演??:子供の為のおとぎ話マスネ:タイスの瞑想曲___________________________今日は朝すごい雪でどうなることかと思いましたが、午後にはけっこう溶けてマンハッタンなどはすっかり跡形もなく溶けていました。前々からチケットを3枚買っていたのですが、パパが急に京都に出張になって行けなくなったので、S先生に1枚差し上げることにしてユカとS先生と3人で聞きました。席はセコンドティアーの正面やや右寄りで、けっこうよく見える場所でした。前回の竹沢さんのコンサートのときのようにかぶりつきではないので少し遠かったけれど、よく見え、音も一番よく飛んでくる場所です。私はヴェンゲーロフを聞くのは今夜が初めてでした。会場はほぼ満席。小さい子供連れの人もいつもよりたくさん来ていました。ウィーンやロンドンでの演奏会を聞いた方のウワサ通り、ピアニストはちょっと変わった人でした。必要のない場所で頻繁におもむろに体をねじるようにしてふりかえってヴェンゲーロフをみながら弾くのでちょっと目障りなかんじ。(笑)「めざせグレングールド」ってかんじのちょっといっちゃってる感じの自己陶酔型ピアニストでした。途中、ところどころメロディーを歌ううなり声が聞こえていたのですが、これはピアニストが声を出していたのかな?カーネギーホールの残響に溶けてしまって会場の人が一緒に歌っていたのかヴェンゲーロフかピアニストか誰が声を出しているのかわかりかねましたが、たぶんピアニストかな?さて、プログラム1曲目のバッハ。あまりヴィヴラートをかけない演奏で、それがまた新鮮でした。カーネギーホール全体に音がふわ~っと広がってすごく美しい音色でした。ヴィヴラートがあまりなくてもここまで表現できるんだな~と感心しました。とても清楚な感じで好感が持てました。2曲目のブラームスのソナタ。一転してすっごいヴィブラートの嵐。(笑)大曲ですが、ちっとも長いと感じさせない演奏でした。ヴェンゲーロフは本当に聴衆の心をとらえる力をもった人だと思いました。ピアノの蓋は全開でしたが、ぜんぜんピアノに消されることはないほどに彼の音はよく飛んできました。目立ちたがりやのピアニストのことなど忘れてしまうほど(笑)ヴェンゲーロフから溢れるオーラは会場を惹き付けていました。休憩のあと、ブラームスのスケルツォ。これはちょっとピアノがやかましかったけれど、短いけれど力強くなかなか聞き映えのする曲です。そして、プログラム最後のベートーヴェンのクロイツェル。せっかくヴェンゲーロフの美しいソロで始まったのがピアニストの第1音がガシャーンときてちょっと現実に引き戻されたような、、、(^^;でも、あの長い曲をあまり長いと感じさせないヴェンゲーロフはすごいです。あっというまに終わりました。途中何度か弦が狂ったのか、ほんの1小節とか2小節の短いお休みの間(ピアノが間奏を弾いている間)に弾きながら左手でペグをくいっとひねって一瞬で調弦しなおして弾き続けている超早業にはびっくりしました。アンコール1曲目はおハコのブラームスのハンガリアンダンス。独自のアレンジも中間部分のブーワッ、ブーワッ、ブーワッ、ブーワッ、チャチャチャチャチャララ~というところの大袈裟な表現もコメディアンみたいにちょっとやりすぎぐらいでしたが、アメリカの聴衆にはとてもウケがよく、演奏中に何度も会場から笑いがどどっとでました。固めの正規プログラムは思ったよりオーソドックスでまじめな演奏だったけれど、アンコールは思いきり自分が楽しんでしまって聴衆を巻き込んで遊んでいるかんじで一気にリラックスムードでした。2曲目のアンコールはヴェンゲーロフひとりが出て来ていきなりヴァイオリンを構え、現代曲風の重音の曲を弾きはじめ、短い1曲目が終わると拍手がきたのですが、それをとめるしぐさをし、いきなり英語でなにやら話しはじめたかと思うと、「むかし、むかし、あるところに」で始まり、それはおとぎ話のよう。彼の弾き語りひとり芝居。聞いたことのない曲でしたが、すごくすごく楽しかった。ストーリーは全部はききとれなかったのですが、動物がでてきたり、ババール?が出てきたり、妖精が出てきたり、誰かがおなかがすいて泣いているところとか、楽しいシーンとか、しゃべりながらどんどんその感情を音に出して弾いていく。話し方もとても上手で子供達にかたりかけるような、ニコニコと大きな声でわかりやすく会場にむかってわくわくするようなドキドキするような笑わせるようなお話と、ものすごい高度なテクニックをいとも簡単にあやつっておもしろおかしく聞かせる弾き語り。ベートーヴェンの2楽章でとうとう眠りこけてしまったユカを思わず起こしました。(笑)本当に素晴らしかった~!ヴェンゲーロフはやっぱり天才だと思いました。ブロードウェイの役者さんも顔負けの演技力というか、表情豊かな語りのうまさに驚きました。お客の心を惹き付けて離さないというかんじ。会場からも笑いがいっぱい。私もいっしょに笑っちゃうくらい楽しんじゃいました。本当にヴァイオリンがからだの一部となっていて、まるで、パパが寝る前に子供に即席でつくって話して聞かせる寝物語のような、、、。落語家の落語のような、、、。(笑)そんな感じの曲というかステージでした。S先生にきいてもこんな曲今までにきいたことないっていうので、これってひょっとしてヴェンゲーロフの即興自作自演なのかな。これだけでも立派なプログラムになりそうなくらい長かったけど、すごく楽しめました。弾き終わって舞台袖にもどって再びピアニストをつれて出て来て最後のアンコール曲のタイスの瞑想曲を演奏するまえに、さっきの弾き語りの曲のことについて説明してくれました。自分の子供時代によくきいたおとぎ話で、「ボクはいつも子供達の笑顔を見るのが大好きだから」と言う言葉が印象的でした。メインのプログラムよりこのおとぎ話風弾き語りのほうが強烈に印象に残りました。本当にヴァイオリン活き活きと楽しそうに自由自在にいろんな音色でそのシーンを表現して弾くんだもの~♪で、最後の1曲はタイスの瞑想曲。1音1音すべてに心がこめられているような美しさ。終わってからもためいきが出るほど余韻があってから割れるような拍手の中終演。すべての演奏が終了したときはもう10時半をまわっていました。楽屋にいってサインもらおうかと思っていましたが、あきらめて帰ってきました。帰ってきたら11時半をまわっていました。ユカはバタンキューでした。それにしても、全部のステージ、最初から最後まで全く暗譜での演奏でした。普通、ヴァイオリンのリサイタルではソナタの場合プロでも譜面台をおいて演奏する人も多いけれど、完全に自分のものにしちゃってるんでしょうね。譜面台もなく気持ちよさそうに演奏していました。さすがです。彼はやっぱり天才。超一流の演奏家でした。