カテゴリ:ガキの頃
昔も、今も、私は鉛筆を最後まで使った想い出がない。 いつも途中でなくしてしまうか、囓ってきたなくなる。 そうそう、使って短くなった鉛筆で彫刻をするヤツがいたよな。 うん、肥後守を使って、器用に彫るんだ。 モアイ象のような何ともしれないものを彫ったり 仏像をきれいに彫ったりしていたね。 それも次第にエスカレートしてくる。 版画用の彫刻刀を使って花や犬などを彫る。 美しいの可愛いの何の……女の子が欲しがっていたな。 ヤツは、一躍、女の子の人気者になったね。 ただ、鉛筆はそう簡単に短くはならない。 ふふふ、そうすると長い鉛筆を短く切って彫る。 すると、先生の怒鳴り声が落ちてくる。 「鉛筆を粗末にするなあーーーーーあっ」 ああ、芸術を理解しない先生のおかげで、ヤツの芸術センスはつぶれる。 うん、つぶれはしなかったけれど、ヤツはそれだけだったね。 「あの、鉛筆の彫刻のアイツ、アイツ、どうしてる」 同窓会では今でもそんな噂が飛び交う。 うん、小さなヤツだった。おとなしいヤツだったよな。 うん、鉛筆彫刻に生き甲斐を持っていたのだろうな。 微笑みの薄いヤツだった。 会ってみたい。 時が過ぎた……五十年……あまりにも長い時が過ぎた。(つづく) 人気blogランキングへ←ふふふ、ランクアップのためにクリックして下さいな! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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