フランスの田舎の女の子
昨日のブログで女の子の話を書いたら、三年前、ドイツとフランスの旅で会った女の子のことを思い出した。その昔の旅のことをちょっと書いてみたい。夏のはじめ、ドイツとフランス国境付近だった。 バスは走っていた。ひとつの河が見えた。ライン河だ。橋が架かっている。橋を渡り、フランス領へ入る。何にもなかった。誰もいなかった。バスはスピードを落とさないままフランスへ入った。「ユーロ」になった事実を、私は知った。国境はなかった。国境を具体的に眼にすることはなかった。バスはいつの間にかフランス国内を走っていた。バスを降りた。確かにフランスだ。町の名前はドイツ語ではヴァイセンブルク、しかし、今のところフランスに属しているからヴィサンブールと呼ばれている。小さな広場を通って、路地の奥にある店で昼食をとることにした。看板もない店の扉を開ける。薄暗い。ひとりの女の子がいた。五、六歳くらいだろうか。私は彼女に向かってボンジュールと言った。女の子もボンジューと言った。ウン、なかなか愛嬌のあるフランスギャルじゃわい。 窓際に座った。まずはビールを頼む。料理はなにかお好み焼きの薄い焼きのようなものが出た。これがなかなかビールにあう。窓からは小川が見え、その向こうに教会が見えた。なかなかいい席だと思っていたら、先程の女の子が近づいてきた。「ポコン」私は口と親指で音を鳴らした。女の子はニコッと笑った。お母さんらしき人が料理を運びながら何か叫んだ。「お客さんの料理を食べる邪魔をしたら駄目だよ。奥にいってなさい」もちろんフランス語だ。口調からそのようなことを言っているらしい。女の子はそれを無視するかのように私に向かって微笑む。それがまた可愛いい。「ポコ」私は仕方なく口と指で音を出す。女の子が笑う。「ポコ」私は仕方なくくり返す。女の子が声をあげて笑った。オット、お母さんが近づいてきた。女の子の手を強く掴むと奥へ引っ張っていった。「エレーヌ、ポアン、ソワン、ジュール、ヘンナント」おそらくフランス語でお客様の邪魔をしてはだめじゃないのと言っているのだろう。お母さんが女の子エレーヌちゃんのお尻を叩いている音が聞こえてきた。う~ん、フランスの田舎町ではまだまだ子供のしつけはお尻を叩いてするらしい。エレーヌちゃんの泣き声が聞こえてきた。私はせつなくなった。せつなくてせつなくて、私はビールを呑んだ。食事が終わった。出口へ私は向かった。出口の空いている席にエレーヌちゃんは泣き顔でちょこんと座っていた。私の顔を見ると、エレーヌちゃんはニコッと微笑んだ。このような子供の笑顔を見ると、この世の中は絶対に平和でなくはいけないと、私は思う。「エレーヌ、バイバイ」私は手を振った。エレーヌちゃんが手を差し出してきた。握手ということらしい。エレーヌちゃんの小さな手を握って私も微笑んだ。ドアを開けて外へ出た。青い空があった。フランスの田舎の空だった。エレーヌちゃんもこの空の下で生きていくのだろう。あのお母さんの厳しいしつけの中で、たくましくもエレガントなフランスギャルとなるのだろう。もうこの町へ来ることはないだろう。エレーヌちゃんにももう会うことはないだろう。私はなぜかため息を吐いて、ゆっくりと歩き始めた。人気blogランキングへ←ランクアップのために良かったらクリックして下さいな!■私が応援しているブログです。フク爺さんが私です。 下記をクリックして、一度覗いてみて下さいな。 →里の茶店「しゃらの木」・フク爺さんとサチ婆さんの立ち話