スモールハンドレッドの時代?!
~ホンマにお久のビジネス研究会レポ~ト~ロードスタ~ 電気自動車は、これまで日本の歴史に3度登場しています。第一号は、1947年に東京電気自動車(後のプリンス自動車)から発売された「たま号」です。2度目は1970年代に、オイルショックと大気汚染問題で、電気自動車が再浮上してきた時です。しかしこれも、「ガソリン供給の安定化」と「排気ガス浄化性能の向上」で、立ち消えになってしまったのです。そして、化石燃料の枯渇が懸念される今、ついに自動車業界も本腰を入れ、電気自動車の開発に取り組み始めました。電気自動車がガソリン車と異なる点は、エンジン構造がカンタンで、部品数が10分の一ということです。これは、中小企業にも参入のチャンスがあることを意味します。特に1~3人乗りの超小型車の場合、技術を持った中小企業がもっとも力を発揮するのです。実際、看板屋をやっていた富山の「タケオカ自動車工芸」は、1~3人乗りEVカーを、浜松の「タカヤナギ」は、一人乗りの高級EV自動車「ミルイラ」を製造販売しています。このほか、いくつかの中小企業が集まって、超小型の電気自動車を作ろう...というプロジェクトが生まれつつあります。それは、東京都墨田区の「すみだ新製品開発プロジェクト実行委員会」であり、大阪府守口市の「あっぱれEVプロジェクト」、静岡県浜松市の「Smallest Vehicle System Project」です。不況が続くなか、彼らはその地域を何とか活性化しようと、力をあわせて電気自動車の開発に取り組んでいます。 「あっぱれEVプロジェクト」は、守口市の淀川製作所社長・小倉庸敬(のぶゆき)氏が周りの経営者に声をかけて始めたものです。メンバーは守口市、門真市を中心にした中小企業で、板金やプラスチック加工、漆、竹、扇、刃物、リチウム電池などを扱う会社です。ただでさえ不況で苦しいのに、お金にならないプロジェクトに取り組むなんて、と従業員からは非難囂々。しかも、自動車の製造知識をもつ者は、殆どいません。そんな反対の声を押し切ってスタートした小倉氏ですが、その本音は死ぬほど不安だったのです。大阪市に助成金を申請し、予算200万円の内100万円を獲得しますが、製作期限はわずか半年でした。漆塗り仕様の車体に、扇の扉、竹張りの床など、和風デザインを強調しますが、それを形にするのに、まさに地獄を味わうのです。「車の設計図はありませんか」「一応のもんがデザイナーさんから上がってくるから」数日後、渡された図面を見た社員は、「社長、これホンマに一応の図面ですよ...」。デザイナーの後藤美香さんは、これまで車のデザインをしたことがありませんでした。車の製造に関しての知識がないのですから、彼女が次々と出す要求は、難題以外の何ものでもありませんでした。しかし、この知らないということが、個性的なデザインを形にする強力なパワーになったのです。 「このまま座席の帳尻あわそうと思ったら、サスペンションつけられへんで」 「じゃあ、そのサスペンション、取って下さい」 「えええええっ~~~!」そのストレスは、図太さを自認する氏でさえ、顔面神経痛を発症するほどでした。「もう、やめようかな...」と呟く氏に、奥さんは「しんどいんやったら、やめたらえぇやん」の一言。 「何をあっさり言うねん。もっと励ますとか、ないんかいな。」 「そやけど、しんどいんやろ?」 「そんな簡単に辞められるかいな。マスコミには、3月完成って流れてるねんで。」 ムキになって言い返すうちに、奥さん流の励ましに乗せられ、立ち直っていく氏でした。こうして数々の困難を乗り越え、期限ギリギリに完成したのが、「Meguru」です。人生に何度もない大感動でした。氏は、「利害を優先するなら共同プロジェクトなどやらない方がいい。空中分解することは目に見えているから」と言います。地元を活気づけたい、新しい話題を作りたいという思いが何物にも変えがたいエネルギーだったのです。氏は今、このときの経験を人々に伝えるために、講演やセミナーを行い、「Meguru」と一緒に全国を飛び回っています。日本中のあちこちで、「ご当地EVプロジェクトが生まれますように...」と願いながら。 ところで今年の7月2日、トヨタ自動車は、一人乗りの超小型電気自動車「コムス」を約300台、セブン・イレブン・ジャパンにリースすることで合意しました。記者発表会において、セブン・イレブンの井阪隆一社長は、「コムスを選んだのは、環境に優しい電気自動車であること、非常に小型で店舗の駐車場に置いてもお客様の車の邪魔にならないこと、操作性が優れていること、この3点が大きな理由です」と語りました。コムスは最高時速が60キロメートル、最大積載量は30キログラムです。そして後部トランクには、専用の保冷ボックスが搭載され、温度管理が必要な商品の宅配も可能です。セブン・イレブンは弁当や惣菜を配達する「セブンミール」を全国の約1万4千店で展開しています。従来は宅配便を使ってましたが、今後は同車を用いて店長や店員が配達することになりそうです。セブン・イレブンの取り組みが成功すれば、他のコンビニやスーパーが追随する可能性があります。これらが刺激となって、近距離圏での「食品の配達」や「買い物」、テーマパークでの移動手段等に、ますます用途が拡がるのではと、期待が高まっています。超小型自動車の市場が活性化すれば、「スモールハンドレッド(注)」にも大いなる可能性が開かれるのではないでしょうか。〔注:100社単位のベンチャー企業、異業種からの参入企業が出てくることを指す。東京大学特任教授の村沢義久氏の造語。 〕さて 1991年7月24日は‥‥ 太陽系の外にも惑星が発見されたことが正式発表された日。Don't look at Jaques as if he was a human being, he comes from another planet. from The Great Blue. 「あいつを人間と思っちゃいけない、別の惑星から来た異星人だ。」 映画『グラン・ブルー 完全版 -デジタル・レストア・バージョン-』予告編 - YouTube