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カテゴリ:社会
数字というものはまことに不思議なもので、人にいろいろな力を及ぼす。たとえば、このブログにはアクセスカウンターが付いているが、これを見ると、もう少しで30000というところに近づいている。すると、よし、ここはくだらない記事でもいいからどんどん書いて、早く目標を達成しようなんて気についついなってしまう。
人間はなぜか数字に弱いもので、目標数値などを示されるとなんとしてもそれを達成しなければと思い込んでしまう。まして、目標を達成できなかったら、様々な不利益が予想されるとなればなおさらのことだ。ならば、どうするか。目標数値を達成するのに最も確実で最も簡単な方法を考案することだ。これはきわめて合理的な発想である。 全国学力テストをめぐっていろんな 「不正」 が明るみに出ているようだ。目標平均点をなんとしてでも達成しなければならないとなれば、どうすればよいか。簡単なことだ。「足を引っ張る生徒」、すなわち平均点を下げる 「できの悪い」 生徒を出席させなければよい。 では、会社からノルマを課せられた訪問販売員の場合はどうするか。これも簡単だ。押しに弱く、ちょっとした親切にすぐ心を開き、クーリングオフなどのような手続きを知らない高齢者などを狙えばよい。そしていったん捕まえたかもは、最後まで逃がさずしゃぶりつくすことだ。 そういうわけで、1回ある業者からなにかを購入した家には、次から次へと商品が持ち込まれる。やれ布団だ、健康器具だ、健康食品だと、いりもせず役にもたたない、値段ばかりがやたらと高いものが部屋いっぱいにあふれることになる。 何百万ものローンを抱えた老人の生活はどうなるかだって。そんなことは知ったことではない。大事なのは数値目標を達成することなのだ。 北九州市で生活保護を打ち切られた男性が餓死したという。これも同じことだ。生活保護を減らせという数値目標が上から課せられれば、当然現場の人間はその達成を第一に考える。これは当たり前のことだ。ならば、どうすればよいか。一番弱そうな受給者を狙えばよい。これもまたきわめて合理的な戦略だ。バレーボールでもサッカーでも、真っ先に狙われるのは一番下手な選手だ。敵を倒すにはその最も弱い環を狙え、これはあらゆる戦略の根本原則なのだから。 生活保護を受ける権利は、日本国憲法第25条で保障された当然の権利だ。そのことをきちんと知っている受給者に辞退を迫るのは難しい。また、たしかに一部には不正受給者もいるかもしれない。しかし、その不正を暴くのはそう簡単ではない。 というわけで、上から圧力を受けた現場の人間は、数値目標を達成するために一番確実な方法を選ぶ。つまり、たとえば保護を受けていることに疚しさやひけ目のようなものを感じている人、気の弱そうな人、文句を言いそうにない人、法律に疎い人、相談相手などいそうにない孤独な人、そういうまさしく一番弱い人、最も保護を必要とする人たちをターゲットにして辞退を迫るということになる。これは当然だ。なんといっても、これが数値目標を達成する一番確実で効果的な方法なのだから。 数値目標などというと少しは聞こえがいいかもしれないが、ようはノルマということだ。ものごとは正しい名前で呼ばなければならない。「美しい国」 を目指すと言うのなら、まずはそこから始めるべきだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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