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2007.10.21
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カテゴリ:社会

 彼岸を過ぎても真夏日が続いていたが、いつの間にやら秋である。夜半を過ぎて丑三つごろに空を見ると、巨大なオリオンが燦然と輝いている。神話によれば、神をおそれぬ不逞の輩であったオリオンは、怒った神の放ったサソリによって殺され、いらい星になってもサソリを恐れ、けっして一緒には空には昇らぬそうである。

 もっとも、何千年 (?) も空の上で追いかけっこと隠れん坊を続けていては、もはや両者ともどっちが追いかけ、どっちが逃げているのか、分からぬ状態ではないかとも思うが。

 とにかく、この一週間はやたらと忙しい疾風怒濤、Strum und Drang の毎日であった。日が昇ってから床に就き、昼過ぎに起きるという生活をしていては、いったいいつ一日が始まっていつ終わるのか、まったく分からない。それでも、締め切り日だけはなんとか間違えずにすんだので、めでたしめでたしというところである。

 ひところマスコミを騒がせていた 「亀田問題」 も、あのなんだか意味不明の 「記者会見」 で、どうやらようやく下火になりつつようだ。ニュースによれば、ゴマキの弟が電線ドロで逮捕されたとかで、週明けからの芸能ニュースは間違いなくこっちの事件で持ち切りとなるだろう。まったく、世の中は次から次へと事件や話題に事欠かないもので、亀田家にとっては、むろんすべて元通りとはいかないが、とりあえずはほっと一息というところだろう。

 亀田家の誤算は、一言で言えば、まっとうなボクシングファンのほとんどを敵に回したことにある。企業であれなんであれ、成長を続けるにはもちろんのこと、ただ現状を維持するためだけであっても、つねに新しい客を開拓する努力が必要であろう。ましてや、現状のままではジリ貧が予想されるという状況にあれば、なんらかの新しい手を打つ喫緊の必要性にも迫られ、焦りが生じるのも分からなくはない。

 そういうとき、人はえてして 「清水の舞台から飛び降りる気で」 とか、「現状打破」 などと称して、とにかくドカーンと一発花火を上げてみたくなるものである。「座して死を待つよりも、乾坤一擲の大勝負に打って出る」 といえば聞こえはいいが、ようするにそういうことである。

 一見それまでとは違う、はちゃめちゃで「型破り」「常識破り」 なキャラクターを押し出して、なにはともあれ新しい話題を次々と飽かせぬように提供し続け、昔からの目の肥えたツウや、散々お世話になった固定支持層ではなく、むしろそれまではほとんど関心も持ってなかったような層をターゲットとし、実力ではなく、中身のない派手なパフォーマンスだけで、とりあえず人気を盛り上げる。

 その先のことなどは知ったことではない。むろんメッキはいつか剥げるものではあるが、そうなったらそうなったで、またそのときに考えればいいというわけだ。

 いうまでもなく、こういった戦略を (それほど複雑というわけでもないが)、あの亀田パパが自力で考え出したはずはない。黒幕は、当然協栄ジムやテレビ局などであり、彼らは、そのような戦略にぴったりのキャラクターとして、選び出されたということなのだろう。

 しかしながら、そういった新しい顧客というものは、だいたいにおいて気まぐれなものであり、あまり当てにならないものである。しかも、そのような、ちゃんとした鑑賞眼を持った本来の顧客よりも、そうではない気楽な新参者たちを重視するといった戦略は、当然のことながら、おれたちこそが本当のファンであり、業界をずっと支えてきた功労者なのだと自負しているような当の人たちからは、強い反発をかうことになるだろう。

 亀田家と協栄ジムの転落の本質は、ようするに、本当の顧客を大事にせず、目先の利益のみを追い続けてきたことのつけがまわってきたということだ。もちろん、そういった失敗は、これまでもあちこちの業界とかであったことなのだろうが、他人の失敗から学ぶということは、口で言うほど簡単なものではない。

 ところで、ここまで書いてきて、このような出たとこ勝負的な 「一発屋」 戦略には、大先輩がいることに気がついた。それはむろん、何年か前の総裁選で 「自民党をぶっ壊す」 などと放言して、新しいファン層を大いに開拓したあの人のことである。

 ただし、こちらの場合は本人ではなく、あわれな後任者がつけを払わされるということになってしまったが。 






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Last updated  2007.10.22 06:19:33
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