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2008.06.14
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カテゴリ:社会

 あちらこちらで話題になっているが、秋葉原で事件を起こした青年の実家にマスコミが押しかけて、なんやかんやと質問したらしい。今に始まった話ではないが、事件報道など、ワイドショーも含めてどれも似たり寄ったりである。なので、もう見ないことにしていたので、これも実際に見たわけではないのだが、なんともうんざりする話である。

 つい連想するのは、と言っても本当はこれもあとからなにかの本で読んだ話であるが、浅間山荘事件の実況報道を家人とともに見ていた犯人の一人、坂東国男の父親が、報道の途中で、誰にもなにも言わずに部屋を出て、家の裏でひっそりと首をつったと言う話である。(参照)

 この事件の犯人について 「自己中心的」 だとか 「自己愛」 が強いなどと言っている人らがいるようだが、そんなことを言ってみても、なんの説明にもなりはしない。犯行直前まで、彼が携帯サイトに頻繁に書き込みをしていたことを取り上げて、「自己顕示欲」 が強いなどと言っている一部の 「識者」 とかについても同じことだ。

 人間というものは、みな多かれ少なかれそんなものである。菩提樹の下で悟りを開いたというお釈迦様ならともかく、「自己中心的」 でない人間だとか、「自己愛」「自己顕示欲」 を持たない人間など、この世にいるはずがない。そもそも、そういった欲望だって、ごく普通の生活の中で、ごく普通の手段により、ごく普通に満たされているならば、別になんの問題も生じはしない。むしろ問題が生じるのは、そのような人間の基本的な欲望が満たされていないときではないのか。「人はパンのみにて生きるにあらず」 とは、「聖書」 にあるキリスト様のお言葉だが、まさにそのとおりである。

 そういった欲望は、誰しもが持っている人間の煩悩ともいうべきものなのだから、その意味においては、むしろ 「肯定」 されるべきものである。現に存在するものを、存在してはならぬものであるかのように言ってみたところで、なんの足しにもならない。おそらく彼は、そういう人間なら誰しも持っていて、それなりに満たされてしかるべきである欲望を、日頃は否定的なものとして抑圧していたのではないだろうか。彼は、そのような欲望を、日常の生活の中で普通に満たすべき方法というものを知らなかったのかもしれない。

 「政界」 でも 「芸能界」 でもよいが、世の中をちょっとでも見渡してみれば、彼などよりはるかに 「自己愛」「自己顕示欲」 の強い人間など、いくらでもいるではないか。どこの何様かは知らぬが、こういうことをしたり顔で言っている 「識者」 というものは、本当にバカではないかと思う。

 犯行現場に予定より早く着いたために、車を現場近くに止めたり、その周辺を行ったり来たりして時間をつぶしていたという報道もある。携帯サイトへの 「書き込み」 についても、警察での取調の中で、「誰かに止めてほしかったからだ」 と言っているという報道もある。それはそうかもしれないし、そうではないかもしれない。おそらく、彼にも本当のところは分からないのだろう。

 いささか勘ぐった見方をすれば、それはむしろ逮捕されて 「正気」 に戻ってから、後付けで考えた理屈なのではないのかという気もする。しかし、そのような彼の一見不可解な行動から伺えるのは、むしろ彼がどちらかといえば融通のきかぬ、きわめて生真面目で自己抑圧的な性格の持ち主であったということのように思える。 






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Last updated  2008.06.14 15:58:40
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