カテゴリ:┌ 詩
金曜夜に呼吸が止まった父 幸い、幸い また息ができるようになった でも、声が出ない 指先で空中に小さな文字を書く なんて書いてるの? そうか、大きな字は書けないんだね 視線が合わないときもあるけれど こちらの話すことは、ちゃんとわかっている 伝えたいことは何? 母が50音ボードを作った お父さん、ほら、お母さんの字だよ 指でさすのは、難しく でも、ボードを持って離さない父 日曜の夕方 ふと楽になった父 ボードを使うことができた 最初にさしたのは 「おばあちゃん」 小さい「ゃ」まで、わかってた 幸せだね、おばあちゃん 次にさしたのは 「いつおかえりですか」 私がいつ自宅に戻るか聞いてきた どうして、そんな丁寧語? 笑えるよ 大丈夫、明日も来るよと言ったら、父の目に涙がにじむ やだやだ、泣くなー 「けいたいどうなつていますか」 自分の携帯、気になるんだね 大丈夫、家に持って帰って充電してくるよ 「じゆうでんき」 そうか、充電器も一緒に持っていかなきゃね すごい、よく気が付いたね これが ボードで一文字一文字さした すべての言葉 日曜の夜中から再び高熱が出て ボードは使えなくなっているけれど 絶対、また使えるよね 熱が下がりますように 身体が楽になりますように みんなの声 全部聴こえているよね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.06.07 19:51:20
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