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テーマ:古民家再生(78)
カテゴリ:家族・親族
母が亡くなり、実家は妹が一人で住んで管理している。
渡道四代目なので、私が若い頃までは農地だった場所も、今では周囲が住宅地や商業施設に変貌した。 それでも、曾祖父(渡道からは125年)の時代からの庭や木々、築100年は経つであろう納屋や築50年の旧住宅があり、敷地もそれなりに広い。 妹は、自分が元気なうちにそれらをキチンと処分することが自分の仕事と考えていて、 数年以内に納屋や小屋や庭などを解体処分して売り払い、自分が住む住宅だけ残そうと考えている。 私や末の妹は、妹の考え方に従うだけだ。 再活用できたらと思ってはいたが、あの敷地や庭をまるごと購入してくれる人はなかなか見つからなかったのだから。 ところが、「もったいないなあ」と数人の思いが集合すると、道が開けてくるのが不思議だ。 長男の住む近くに、古民家再生もしている建築会社がある。 息子たちのワイナリーもその会社が建ててくれたので、せめて納屋の木材だけでも再活用できないかと相談してもらった。 それで、昨日その会社の社長と社員と長男が実家に見に来てくれたのだ。 納屋は、およそ百年前に曾祖父と祖父が、地元の大工に建ててもらったと聞いている。 今はもう無くなってしまった最初の旧実家も、「蔵」と呼んでいた穀物倉庫もその人が建てたと思う。 曾祖父と祖父は、持山から木材を切り出し、乾燥させて準備して、住居・蔵・納屋と建てていった。 社長はその納屋を一目見るなり、「どこも歪んでいない」という。 土台も梁もしっかりしているし、地中に埋まっている柱は傷んでいるかもしれないが再生には問題なさそうだし、「これを建てた棟梁の腕が良かった」とも。 実は息子は、ワイン倉庫を作りたいと言っているので、納屋の木材の一部でも使ってもらえればと思って相談したのだ。 色々と調べた社長は「これは、このまま移築してリノベーションした方がいい」とおっしゃる。 私達はそれほどまでのことは全く考えていなかったので、ビックリである。 それを聞いた私の胸には、なぜか不思議な思いが湧き上ってきた。 実家の姓は妹で絶える。 父は生前、私達が三姉妹なので「姓なんて消えたっていいんだ。その命がつながっていればそれでいい」と言っていた。 しかし、きっと内心では娘の代で祖先からつないできた姓が消えることに寂しさはあったと思う。 曾祖父は養子に入って姓をつないだが、明治維新の波の中で北海道に渡り、新たな地で一族をつなごうとした。 その子である祖父もそうだし、多分父もそうだったはずだ。 戦後の農地解放、平成・令和の時代の土地開発の波の中で、とうとう苦労して手に入れたはずの土地も残りわずかだ。 その中で開拓時代の名残を残す納屋もなくなる寸前で再利用されると知った時、 あちらの世界の曾祖父母・祖父母・両親がどれほど喜んでいるだろうかと思うと、 ひょっとすると今回のことは、ご先祖様たちがそのように仕向けてくれたのかもしれないとさえ感じる。 だが、移築して再生するとなれば、新築よりも費用がかかるかもしれない。 でも、開拓時代の木々を次の世代に残すことは、きっと大きな意味があると思うので、できるだけ応援をしたいと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年04月05日 09時06分09秒
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