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カテゴリ:読書
「谷から来た女」桜木紫乃
【出版社の紹介】 アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。 彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。 自分の気持ちに、傷ついてしまう――。 そして、彼女は去ってゆく。忘れられない言葉を残して。 桜木紫乃の真骨頂、 静かに刺してくる大人の物語。 (収録作) 「谷から来た女」…2021年。大学教授の滝沢は、テレビ局の番組審議会でミワと出会う。大人の恋愛を楽しむ二人だったが…。 「ひとり、そしてひとり」…2004年。アクセサリーショップとセクシーパブで働く千紗は、夜のすすきのでデザイン学校の同期・ミワと再会する。 「誘う花」…1999年。教育通信の記者・譲司は、取材で出会ったミワの弟・トクシがいじめられていることに気づく。 「無事に、行きなさい」…2015年。レストランシェフの倫彦は、ミワとの将来を信じながらも、どこか遠さを感じている。 「谷へゆく女」…1982年。母を亡くした中川時江は、高校卒業と同時に、文通相手の赤城礼良を頼って北海道へ向かう。 「谷で生まれた女」…2023年。北海道テレビプロデューサーの久志木は、ミワのドキュメンタリーを撮影するが…。 多分、この記事を読んで読みたいと思いネットで購入。(市内に書店がなくなった😢) 桜木さんは、アイヌ文様デザイナーの貝澤珠美さんと話していて、 彼女が周囲から〈あなたはアイヌに見えないからだいじょうぶよ〉と言われたと聞き、この作品を書くことになったそうだ。 私も桜木さんと同様に、北海道に生まれた時から暮らし、学校では同級生ではないけれどアイヌ民族がルーツと思われる友達がいても、あからさまな差別的な言葉を耳にしたことはない。 私が単に鈍感だったからなのかもしれないが、間違いなく「アイヌだ」という言葉は禁句というかタブーのような感じはあったと思う。 成人してから仕事を通してアイヌ民族の歴史を知り、隠れた差別意識が根強くあることに気が付いたと思う。 ということでこの小説だが、主人公の赤城ミワをとりまく人たちの短編連作というようなお話。 本の紹介にも書かれているように、「大人の小説」である。 現代の問題もちりばめられていて、桜木さんやっぱりうまいなーという感じだ。 その通底にある「民族の無意識」「他民族への無意識」が、赤城ミワに関わる人の描写から立ち上る。 昔は、知人が(ひょっとしたらアイヌの人かもしれない)と思っても、そのことで直接聞くことはできなかった。 本当は知りたいことが一杯あったのにである。 今の私なら、聞きたいと思ったら素直に聞けるような気もする。 それは、その人をもっと理解したいと思うからだ。 昔の私は、人に必要以上に立ち入りたくないと思っていたが、今では気になる人ならもっと深く知って色々語り合いたいと思うようになった。 主人公の赤城ミワは、まっすぐで正直で力強くいさぎよい。 とてもカッコいいと思うのだが、人によってはどう感じるのだろう。 私はこのような人に憧れてしまうのだが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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