カテゴリ:第二章 123 ~ 187 話
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住人 『ここから出せーーー!』 『私達を見殺しにするつもりかっ!』 もの凄い血相で怒鳴りちらす住人。 防菌防護服隊員 「政府の方針です。 みなさんをここから出す訳には・・・・」 住人 「柵を隔ててここもそこも変わらないだろっ!」 「おれ達はなんともない!」 防菌防護服隊員 「検査方法を今検討中です。 内容が決定されるまでしばらく辛抱して下さい。」 懸命に説得する隊員達であったが、中には後方から投石する住人も現れた。 手のひらに入る程の石が、いくつもいくつも投げ込まれて、 防菌防護服隊員やトラックに当たっている。 それを見かねた一人のシルバーの防菌防護服隊員が、トラックを見て手を上げた。 すると、シルバーの防菌防護服隊員が透明な強化合成樹脂製の盾を片手に、 トラック後方から何人も出てきた。 鉄の扉を通り、エアシャワー室を通過し、住人とモメている地点に向かっていく。 そして、住人側との境界線最後の扉を開けて中に入り、 盾を住人に押し付けて後方に押し下げ始めた。 尚も反抗する住人に対し、盾を持つ数人の防菌防護服隊員達は、殴る、蹴るの実力行使で 住人の沈静化を図り始めた。 それを見たゆうすけ、 ゆうすけ 「行くぞ、こういち!」 ポスト横から駆け出そうとした時、 こういち 「待って。」 ( ゆうすけのズボンのベルトを掴んで引き止めた。) ゆうすけ 「なんだよ。」 こういち 「あいつらだ、組織の戦闘員は。 住人と接触した時に、[気]が強くなって分ったよ。 それに、殺すつもりで殴ってはなさそうだし。」 ゆうすけ 「そ、そっか。 やつら、普通に機動隊として活動しているのなら、まっいっか・・・。 今俺たちが出てって、万が一また拘束されるのも困るしな。」 そのひともんちゃくの間に、一人の住人が高さ 5m は有りそうな柵を登り始めた。 柵の上部は敷地内に向かって角度が付いており、先端付近には有刺鉄線が何本も 走っていた。 スルスルと柵をうまく登りつめ、乗り越えようと先端付近まで到着した住人が突然、 ビリっ うわっ~ 悲鳴を上げて落下し、地面に叩き付けられた! 彡ドサ 防菌防護服隊員 「乗り越えようとしても無駄だ。 先端部分には電気が流してある。」 ゆうすけ 「だとよ。」 こういち 「そんな事までしなくていいのに・・・・」 ゆうすけ 「得体の知れない菌を拡散しないためには、政府としては止むを得ない部分だろうな。 [大]を生かして[小]はなんたらさ。 それに電気は電圧が 100v 程度ならビリっと来るだけだから、落ちて骨折程度の 被害さ。」 急に腕を組んで考え始めるゆうすけ。 ゆうすけ ( それにしても不自然だ。 なんで組織の戦闘員が機動隊の中に居るんだ? それも対応は至って普通だし・・・・・ ) こういち 「警察が組織から買った訳でもないだろうしね。」 ゆうすけ 「そこだ。 普通に紛れ込んでいるのなら、何か目的があるはずだ。 でも住人を殺すでも無く・・・・ 何か他に理由があるんだろうぜ。 ちょいと探ってみる必要がありそうだ。」 こういち 「うん。」 ~ ~ ~ 二階から降りてきて、ダイニングで TV を見ていた父に、 利江 「お父さん、私、お姉さんの所に行って来る。」 利江 父 「外出禁止なんだぞ。」 利江 母 「そうよ、それに万が一ウイルスに感染でもしたら・・・・」 利江 「そうなんだけど、 外では殺菌剤を撒いている訳でもないから室内も外も変わらないわ。 ここに居ても・・・・ ねっ、行ってくる!」 利江 母 「まったく・・・・」 利江 父 「一度言い出すと聞かない娘だから・・・・ 気をつけて行って来るんだぞ。」 利江 「ありがとう、パパ、ママ♪」 ~ ~ ~ 戦闘員の居た交差点を通り過ぎ、禁止区域の柵と平行した道路を歩くこういちと ゆうすけの二人。 突然、こういちが片ひざを付いて座り込み、目頭を右手の指で揉むしぐさを始めた。 ゆうすけ 「おっと、急にきたな・・・・・」 こういち 「すまない、ちょっと横になり・・・・」 言いかけたまま、横にゴロンと寝てしまった。 ゆうすけ 「ハードな日々が続いたから・・・・・」 よっこらしょとこういちの腕を肩に乗せ、フラフラしながらその道路から離れるように 歩き出すゆうすけ。 ゆうすけ ( こいつの身体、人並み外れている分たっぷりと休まないとダメなんだよな。 昔から、そうだったから・・・・・ にしても、今回の一連の出来事では今になって・・・・ 以前よりは持つようになったか・・・・・ ) こういちを昔からよく知るゆうすけ。睡魔が襲うことには慣れていたようだ。 フラついてはいるものの、しっかりとこういちを運んでいる。 こういちは、早くもゆうすけの隣でどっぷりと熟睡 してしまっていた。 ゆうすけ ( どこか近くの公園で休ませよう。。。 ) ~ 街の中の小さな公園。 周りはビル街、そしてアスファルトの道路に囲まれて、道路近くには背の低い植樹が なされていた。 スベリ台、一人用ブランコが2席並んでいる程度の広さ。 今ここで遊ぶ子供の姿、監視する大人の姿などは見当たらず、 人っ子一人いない寂しい状態。 そこへフラフラとした足取りで入り口の低いポールの間を抜け、 こういちを背負ったゆうすけが入ってきた。 手頃なベンチを見つけ、そこへこういちを横に寝かせつけた。 ゆうすけ ( ふぅ~、やれやれ、やっと一息つける。 スポーツドリンクでも買って来るか。。。 ) 汗だくの顔をTシャツのお腹の部分で拭い去る。 公園の外を見渡し、近くの自動販売機に目をやるゆうすけ。 ゆうすけ ( こいつの分はまだいいや。 当分は起きないだろうしな。 ) ベンチの横から歩きだす。 夏の日差しがビルのガラスに反射して、汗だくのゆうすけを眩しく照らしている。 顔に手を当て日差しを遮る。 公園に立ち並ぶ木々からは、せみの大合唱が高らかに鳴き響く。 ミーンミンミンミン ツクツクボーシ ツクツクボーシ イ-シシシ オーシンツクツク オーシンツクツク オーシンツクツク オーシンツクツク オーシンツクツク オーシンツクツク ヒッ!? カイーヨ カイーヨ カイーヨ ヒィィーーーー ゆうすけ ( もうすぐ学校も始まるってのに、この騒動じゃそれも危ういな。 ) 自販機の前に立ち、小銭を投入。ボタンを押して出てきたペットボトルタイプの スポーツドリンクを下の出口から取り出す。 キャップを捻って蓋を開け、一気に半分ぐらいを飲み干した。 ゆうすけ ( プハァ~、生き返るぜ。 さて、こういちがあの状態だと、動きが取れねぇ。 この間に今日の出来事を少し整理しないとな。 ) その場にしゃがみ込んで、物思いにふけ始めるゆうすけであった。 -つづく- (正義の味方・・・・じゃなくてすまねーな) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年09月15日 11時16分23秒
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