カテゴリ:第二章 123 ~ 187 話
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居酒屋 華夢on の前に、一人のシルバー服を着た男が立ち止まった。 薄暗くなった通りで辺りをキョロキョロとしている。 人目を避けているようだ。 そしてさっと入り口から中に入ってきた。 和恵姉さん 「大丈夫なんですか・・・?」 その男に気を使う和恵。 男が、着ていた防菌防護服を脱ぎだす。 そう、中から顔を出したのは北見刑事だった。 美咲先生 「こんにちは、北見さん。」 北見刑事 「すいません、こんな格好で・・・・」 和恵姉さん 「いいのよ。気にしないで。」 とくさんが冷たい麦茶を差し出した。 とくさん 「ご苦労様ですね。」 北見刑事 「あ、すいません。 頂きます。」 ゴクゴク と飲み干す北見。 美咲先生 「暑いのにその格好では大変ね。」 北見刑事 「この騒ぎでは、仕方ありません。 えっと、まずゆうすけは?」 和恵姉さん 「今日は朝からこういちと組織の工場に行きましたよ。」 北見刑事 「えぇ、そのようですね。 我々もゆうすけにそれを聞いていたので、時間を見計らって向かったんです。 ところが、現場に着くともう誰も居ない状態でして・・・。 その後、こちらに連絡でも入っていないかと・・・・」 和恵姉さん 「あら、二人ともこの騒ぎで敷地の中に入れないでいるんだと思うけど・・・・ 連絡ぐらいしてきてもいいのに。」 北見刑事 「そうですか・・・・こちらにも・・・・。 ところが私が現場に駆けつけた後、到着報告の連絡の時に上司が こんなことを口にしていました。 政府の特務機動隊もそちらに向かったらしい。 現場でかち合ったら、あちらの指示に従うようにと。」 美咲先生 「特務機動隊・・・?」 北見刑事 「えぇ、政府直下の秘密任務をこなす機動隊の精鋭部隊です。 我々警察もその存在のこと聞かされてはいますが、実態については良く知らない んです。 その部隊があの工場に・・・。 ちょっとおかしいんです。 組織の連中を捕らえに行ったのであればやつらと争うはずなんですが、 そんな形跡が全くなかったんです。 それにゆうすけとこういち君も向かったはずなのに・・・・」 和恵姉さん 「それは変ね・・・・。 戦闘集団が一堂に会したのに・・・・争った形跡が全く無いなんて・・・・」 和恵もちょっと首をかしげて不思議そうな素振りをみせる。 北見刑事 「争った痕はおろか、もぬけの殻。 工場内部は重要書類やデータは持ち去られ、大きな機器類だけがそのまま残って ました。 どうもやつらは事前にそれらを運び出していたようなんです。」 和恵姉さん 「すると、その機動隊もこういちも、空振りしたってことかしら。」 北見刑事 「おそらく、そう考える方が筋が通ります。 ただ、なんで特務機動隊が動いたかってことが、大いに謎なんです。 それに、アジトを察知していたのであれば、事前に見張りを立て、 持ち出す動きがあったのならばその場で取り押さえるはずなんですが・・・・。 それだって、所轄の我々ですらまだ情報を集めだしたばかりだというのに。」 和恵姉さん 「警察や政府のことは良く分らないけど、刑事さんがおかしいというのであれば、 なにか別の目的でもあったのかもしれないわね。」 北見刑事 「ゆうすけが現場に向かっているので、他の情報でも持っていればと。 この騒ぎでは、その後の動向の経過が全く入ってこないので・・・。 問い合わせても、機密機関、回答は知れてます。」 和恵姉さん 「二人が戻ったら聞いてみましょう。 それとこの騒ぎ。 その後の進展はあるの・・・?」 北見刑事 「それなんですが、これまたどうにも・・・・。 朝、行き成り道路を閉鎖するから交通整理に当たれと。 他にもやることがあるはずなんでが、所轄は交通整理だけやっていろと。 見てると、処置、調査なんてやってるように見えないんです。」 和恵姉さん 「ウイルスの種類などを調べているとマスコミでは流しているわ。 新種だと中々進展しないみたいね。」 美咲先生 「新種の調査って、思ったより多くの時間は必要としないのに。 ワクチン類ならかなりの時間を必要とするのだけど。」 和恵姉さん 「政府はなにモタモタしてるのかしら。 北見さん、その後の感染者は増えていないの・・・?」 北見刑事 「区域内を巡回しているのは自衛隊なんですが、戻ってきても死者の数の確認をせ ず、ただ 『異常なし』 の報告だけなんです。 マスコミも中に入れませんから、我々にも新しい情報って入ってこないんですよ。 市民のみなさんと同様に・・・。」 美咲先生 「何かしらの滅菌・消毒とかの噴霧もしないの?」 北見刑事 「えぇ、全てこちらでやるからと所轄は手出し出来ないんです。 今ここに来るまでの状況では、数人ずつ組んでの巡回だけですね。 消毒の動きはまだ・・・・」 和恵姉さん 「散歩しただけで、異常なし・・・・か・・・・。 かなり不自然ね。何か裏がありそうよ。」 北見刑事 「私も可能な範囲で調べてみます。」 和恵姉さん 「お願いね。」 ~~~ ~~~ ~~~ 丸一日が経過した。既に辺りは真っ暗。 完全に日が沈んでから一時(いっとき)が過ぎていた。 そんな静粛した闇夜を一人の怒鳴る声がかき消した。 ゾルダ 『 そんなこと、スペック-1に任せておけばいいだろうっ! いちいちオレに頼るなっ! この腰抜け共めっ! 』 ガシャン 病院内一階の部屋でえらいけんまくのゾルダ、手にした無線のマイクを投げ捨てた。 戦闘員 「ゾルダ様、スペック-1の出来も今はピンキリ。 それに住人相手に思う存分力を出すわけにも・・・・」 ゾルダ 「バカ者っ! 力を振えないのなら、オレが出向いた所で同じことだっ! 数でものを言わせればいいだろう。 くそ、ブッチめたいのは山々だが、相手が住人ってのが困り種だ。 まったく、つまらん所に配属になったものだ・・・・」 戦闘員 「ゾルダ様!」 ゾルダ 「今度はなんだっ!」 戦闘員 「Dブロック 21番出入口からの救援要請です。」 ゾルダ 「また数で対処させろっ!」 戦闘員 「一人の住人が立ち入り禁止区域に入ろうとしているそうです。 ところがその少年一人に、まるで歯が立たないそうで・・・・・」 ゾルダ 「まったく、小僧一人に何を・・・・・ 強引にこちらに入ろうってやつがいるのか・・・ そんな小僧一人に歯が立たないだとっ! 待てよ、 そうか、あいつだっ! 分った! すぐ行くと伝えろ!」 戦闘員 「ハハっ!」 ゾルダ 「何だ何だ、ここもいいところではないか。。。」 ニタニタしながら立ち上がり、シルバーの防護服を上から被ったゾルダ。 10人余りの戦闘員を引き連れて部屋から出て行った。 病院の外に出たゾルダ、 正門前からドーンと伸びる道、その前方からこちら向かって来る見廻りから戻ったと みられるシルバー服の2人組みに声を掛けた。 ゾルダ 「街の様子はどうだ。」 すると前から来た2人組みの一人が立ち止まり、足を横に出し腕組みを始めた。 それを見たもう一人が、腕を叩いてダメダメと手を振って見せ、 二人顔を見合わせた後、姿勢を正して OK サインを指で作って見せていた。 ゾルダ 「おかしなやつらだ。 おぃっ、お前達も一緒に付いてこいっ!」 その言葉を聞いて敬礼をするシルバー服の二人組。 続々とゾルダに付いていくシルバー服を着た戦闘員達の最後部に回り、後に続いた。 -つづく- (ここが病院でよかったな) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年09月15日 11時47分54秒
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