カテゴリ:第二章 123 ~ 187 話
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居酒屋 華夢on に戻った和恵、 和恵姉さん 「とくさん、呼び出しがあって、リツコと仕事に出かけてくるわ。」 とくさん 「はい、お気をつけて。」 美咲先生 「あら、戻ってきたのにもう出かけるの?」 和恵姉さん 「そう、行ってくるね。 それと、こういちがこの街に戻ってきていたわ。」 とくさん 「分りました。」 和恵姉さん 「じゃ、お願いね。」 バタン キュルキュル フォン フォン フォンフォーーーン フォン フォーーー 闇夜で人通り、そして車の往来も無い街中を、一台の黄色いスポーツカーが、 そのけたたましいサウンドを残して消えていった。 美咲先生 「忙しい人ね・・・・」 4人用テーブルに一人座って、教科書とノートを広げて何か書き物をしながらの美咲先生。 とくさん 「じっとしているのが苦手な人ですから、何か起きていた方が落ち着くみたいですよ。」 ノートの上で走らせていた赤い万年筆を止めて、 美咲先生 「そういえば、今・・・ まんまの姿で帰って来てたわよね。 感染しちゃうかもしれないのに・・・・」 とくさん 「おっちょこちょいの人ではありませんから、何かを掴んだのかもしれません。 それにお車で出ていきましたし。。。」 美咲先生 「なによ、一言置いてってくれてもいいのに・・・・ それに車でなんて・・・・閉鎖されてて出られないんじゃないのかしら。」 とくさん 「それも何か確証がお有りなんでしょ。 無くてもなんとかしてしまう方でもありますから。」 美咲先生 「そうですよね、こんな紙の上の筋書きなんか全く関係なく、道を切り開くって 言うか、計算しても無駄よみたいな・・・・ 私達の常識なんか簡単に覆す(くつがえす)姉弟ですものね。 ・・・ねえ、とくさん、 以前、何かがあって和恵に命救われたと・・・・」 とくさん 「はい、申し上げました。」 美咲先生 「もし、差し支えなければちょっと聞かせて頂けないかしら。。。 彼女をもっと知りたいの・・・・。」 とくさん 「えぇ、美咲さんになら構いませんよ。 そうですね、あれは私がまだ夜のお仕事をしていた時のことでした。。。」 _/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ 辺りが漆黒を迎えた高級店が立ち並ぶ繁華街。 通りを歩く人の目を、きらびやかなネオン、そしてあちらこちらで見かける店先の ホステスさんの綺麗なドレスとスタイルが大いに刺激し、男心を誘惑している。 その中でも、一、二(いちに)を争うほど有名な『高級サパークラブ クリスティーナ』 この看板の下を、落ち着いた淡い緑と白の着物の装いで静かに潜る徳江ママ。 ホステス 『おはようございま~す。』 テーブルを拭いていた手を休め、きちんとママに向かって行儀良く立ちながら 一礼していた。 徳江ママ 「おはよう。 今日もよろしくね♪」 ホステス 『はいっ!』 元気な掛け声が返ってくる。 お店の規律良さが伺える一面だ。 天井からは豪華なシャンデリアが誇らしげに腰をすえ、きらびやかに店内を照らす。 その光が、金色のパイプやガラス細工の置物からカクテル光線を反射させ、 店内の演出をやさしく引き立てていた。 徳江ママ 「あら、千紗(ちさ)ちゃんの姿が見えないわね。 同伴の連絡はないのだけど・・・・」 ホステス 「そうですよね、遅刻する人ではありませんから・・・・」 その時、表の入り口に一台の白いリムジンが横付けされた。 一人の黒服の男が、真ん中のドアを開けて出て来ると、そのまま最後尾のドアの横に 立ち、ノブを握りドアを開けた。 中から、葉巻をくわえた白いスーツ、白いエナメルの靴の装いで大柄の男が出てくる。 その男、ドアを開けてくれた男を引き連れ、キラめくネオンの看板の下を通過する。 案内役のボーイ 「困ります。 まだ開店前なので、お時間になるまでもうしばらく・・・・」 短いほうきで掃除していた手を休め、引き止める案内役のボーイ。 黒服男 「うるさいっ! ママに用があるんだ。 そこをどけっ!」 引きとめていた案内役のボーイを一蹴し、階段から突き落とすと、そのまま二人が店内に 入っていく。 徳江ママ 「なにか騒々しいようね。」 ホステス 「きゃっ!」 一人のホステスが驚きの悲鳴を上げる。 黒服男 「おらおら、道を空けろっ!」 通路に立つホステス達を掻き分けるように入ってくる黒服の男。 ウエイター 「乱暴はやめて下さい。 それにまだ開店前・・・・」 黒服男 「うるさいっ!」 引止めに出てきたウエイターを突き飛ばした。 ドスン ガラガラ ・・・・ 後ろにあったボトル棚まで飛ばされ、ぶつかってフロアに転げたウエイター。 白服のボス 「悪いね、邪魔するよ。」 黒服男の後ろから、のっしと現れたボス。 徳江ママ 「なんですか、騒々しい。」 黒服の男がギョロギョロと、店内のホステスににらみを効かせている。 白服のボス 「いや何、飲みに来た訳ではないのだ。」 のっしのっしとそのまま足を運び、広い店内の一番おくの一段高くなっている とてもゴージャスなテーブルスペースに向かい、ドッシリと腰を下ろした。 徳江ママ 「灰皿を用意して差し上げて。」 横に居たホステスと目を合わせて指示をする。 そしておしとやかに草履を左右互い違いに運びながら同じくそのテーブルに着く徳江ママ。 すぐに今しがた指示を受けたホステスが、ガラスの立派な灰皿を持ってきた。 徳江ママはそれを受け取り、白服のボスの前に差し出すと、 白服のボス、口にくわえていた葉巻を手に取り、灰皿の近くに持っていくと、 灰皿で消すのではなく、徳江ママの手の甲に当ててギリギリと擦り付けるように消した。 顔色一つ変えない徳江ママ。 白服のボス 「見上げた根性をお持ちのようですなママ。 今日はそのママにちょいと話があって来たのだよ。」 店内のホステスが、声にもならない恐怖で身をすくめ、その一部始終に注目している。 徳江ママ 「私に、何のご用件でございましょうか。」 白服のボス 「うむ、実はな、 お宅のナンバー・ワンのホステスさんがね、わが社に多額の借金をしてましてな。 今日はその借金の回収に伺った訳でして。 オイ。」 黒服男が、階段下に待機していたもう一人の男に合図する。 待機していた男は、その場から階段上に待機していたさらに別の男に合図する。 合図を受けた男は、白いリムジンと店の入り口を囲むようにぞろぞろと取り巻いていた 数十人の男達に更に合図を送ると、白いリムジンの中からこれまた黒い服を着た男が 出てきた後、引きずられるようにして衣服の乱れた一人の女性を連れ出してきた。 丁度その時、当時中学生であの 『鬼劉館(きりゅうかん)』 で大立ち回りをしてきた その帰り道でたまたま通りすがった和恵が、その様子に気づき遠くでこちらに歩きなが ら見つめていた。 和恵ちゃん 「あの異様な雰囲気の人だかり・・・・・ そして傷ついた女性が一人ひきづられるように・・・・・ 何かあるわね。」 -つづく- (話は最後まで聞きなさい) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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