カテゴリ:第二章 123 ~ 187 話
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黒服の男が白服のボスの顔を見る。 そのボス、 葉巻を口にして、煙を大きく吐き出した。 そして野太い声で、 白服のボス 「待てないね。」 徳江ママの厳しい視線がボスに向けられる。 白服のボス 「3日とはスピーディーな日数で、 それは評価できる素敵な数字をくれたのだが・・・・・今回、 残念な事に、この借金の費用を別件に回す予定だったんだ。 それも 明日の午前10時までに都合しなければならない。 つまり、そんなに時間がないってことよ。」 徳江ママ 「明日の10時・・・・」 白服のボス 「そう、明日の10時だ。それまでに現ナマ、またはそれに代わるものが必要なんでな。」 徳江ママ 「無理です。 明日の午前中までになんて・・・・」 白服のボス 「まぁ、現金でってことになると中々2億って額がすぐって人も少ないわな。 そこでだ、 現金に代わるものの条件を用意してきたよ。」 徳江ママ 「現金に代わる条件・・・・」 白服のボス 「ありがたいだろう。それも2つも提案できる。 つまり選択肢があるってことだ。 感謝するんだな。」 徳江ママ ( ・・・・ ) 白服のボス 「早速だが、その提案の一つ目・・・・」 息を殺し、唾を飲み込んで聞く徳江ママ。 白服のボス 「この店、『高級サパークラブ クリスティーナ』の権利書だ。」 徳江ママ 「店の権利書 !! 」 白服のボス 「そうだ、その店の権利と交換条件ならば良しとしよう。 権利書がこちら名義ならば、現金ではなくても相手は納得するからな。 オーナーママと聞く。 これなら時間はハンコ一つだ、十分に間に合う。」 突然の話に驚いた徳江ママであったが、落ち着きを取り戻しながら、 徳江ママ 「では選択肢となる二つ目はなんですの・・・?」 黒服の男 「二つ目はこれだっ!」 今度は別の数枚一組の紙を懐から取り出し、 徳江ママの目の前のテーブルに叩き付けた! バンっ 白服のボス 「そいつに必要事項を書いて戴こう。」 徳江ママがその紙に目線を落とす。 今度は少し予測していたのか、至って冷静な素振りで口にした。 徳江ママ 「生命保険の加入用紙・・・・。」 ホステス 『えっ!』 驚きをもらすホステス達。 白服のボス 「そうだ。 そちらに記載してくれれば後の手続きはこちらでやっておくよ。 額面は 250,000,000- 受取人はこの私だ。」 徳江ママ 「命と引き換えですね・・・・」 白服のボス 「その通りだ。 手っ取り早くて素敵な名案だろう。」 目を瞑ってしばらく無言の徳江ママ。 しばらく考えごとをしていたのであろう、数分後にようやく目を開けた。 開いたその瞳は、覚悟を決めたようにキリっと視線の先をしっかりと見据え、 見られるとなにか突き刺さるのではないかと思うほど険しかった。 すっと立ち上がると徳江ママ、 徳江ママ 「判りました。 その加入用紙にサインしましょう。」 その一言を告げた後、用紙の置かれたテーブルに座り直し、胸元から万年筆を取り出して サラサラと記載始めた。 ホステス千紗・他のホステス達 『ママ・・・・』 ホステス五月 「ママ、何も生命保険にサインをなんて選択しなくても・・・・」 尚もペンを走らせながら、 徳江ママ 「いいのよ、これは私の人生なんだからスキにさせて頂戴。 ただね、ここの権利書だけはダメなの、この人達に渡してしまっては。 五月ちゃん、ここのママ、次期候補はあなたに決めてたの。 それに権利が移ると、従業員だって総入れ替えの可能性もあるでしょ? あなた達を困らせたくないもの。 お客様だって、ここに居るあなた達があってこそでしょ。 後はしっかりと頼むわよ。 五月ちゃん、私のバックを持ってきて頂けるかしら。」 しばらくして走らせていたペンを置き、ホステス五月が持ってきたバックの中から、 判子を取り出し、押すところを確認しながらポンポンと押していく。 徳江ママ 「さ、確認して頂戴。」 白服のボスに記載した用紙を差し出す徳江ママ。 白服のボス 「こちらを選ぶとは思ってもみなかったが、まぁ私はどちらでも構わないのだがね。」 一通り書類に目を通したボス、 顔を上げて黒服の男にアゴで合図した。 すると黒服の男、数歩下がって今度は胸から拳銃を取り出し、徳江ママに向けたっ! カシャ (安全装置を外す) 黒服の男 「さぁ覚悟しな。 ぶっ放したら俺もムショ行きなんでな。」 徳江ママ 「ちょっと、店の中で・・・・・」 黒服の男 「うるさいっ! おれも覚悟がいるんだ! いちいちあそこで、ここでと殺す場所を選択していられるかっ! 決まったらその場でってのがスッキリ手早く済むからなっ 覚悟っ!」 『キャーーー』 店に悲鳴がこだまするっ! バキューーン 話終えて、有無を言わさず引き金を引いた黒服の男っ! その直前、階段下 入り口付近から 突然疾風の如く人影が動いたかと思うと、 シューーーっ パシ ザッ 銃声音と同時に、何かを掴む音。 と同時に通路付近にいた人達の髪の毛やヒラヒラのスカートが ふわっ と揺れた・・・。 和恵ちゃん 「この速度から止まるのって、意外と大変なんだから・・・」 そこには足を踏ん張り、右手を逆手にして、 徳江の目の前に手を出していた学生服の和恵の姿が。 急ブレーキにより前方に向かって伸び切っていた格闘着が振り子のように揺れ始めた。 銃をぶっ放した黒服の男は、目を瞑って拳銃を両手で前に差し出したまま。 和恵ちゃん 「ちょっと、相手は丸腰なのよ・・・・。 こんなもの ぶっ放して・・・・何考えてるのよ。」 その声に、ホステス、白服のボス、千紗、さらには徳江ママが伏せていた目を開いた。 黒服の男もきつくつぶっていた目を開き、突然現れた目の前の少女に驚いた。 その男の目の前で、徳江ママの額スレスレのところにある逆手にしていた右手を クルっと回し、手のひらを広げて銃弾を見つめる。 そして手のひらの上に転がっている銃弾を下に ポトン と落としたのだった。 フロアーに居た全員が銃の発砲で顔を背き(そむき)、目を瞑った(つぶった)その直後、 なぜか少女の声・・・。 そして目の前に突如として現れた少女の存在、 見るとその少女の手のひらからは、発砲した銃弾が転がり落ちる・・・・。 緊張の一瞬から一転し、摩訶不思議な空間と化した店内。 その店に居た一同、何が起きたのか訳が判らずにぼー然としている。 和恵ちゃん 「ちょっとおっちゃん! 聞いてるのっ!」 覚悟して引き金を引いた自分、発砲の衝撃をズッシリと両手に受けた。 次に目を開いた時には、頭を打ちぬかれ、フロア一面が真っ赤に染まり、 倒れ込んだ徳江ママの姿があるはず。 その後警察に自首して刑務所に・・・・。 そんなストーリーが頭にあり、当然の如く、 それに基づくシーンが目の前に繰り広げられているはずなのに。 なぜか・・・・ 今、突然現れた少女が、 きっと・・・・たぶん自分に向かって何かをしゃべっているのだろうが、 まるで聞き取れない・・・・。 『なんで目の前に学生服の少女が・・・・? 今オレは何をやってたんだ・・・・』 視線はどこにも焦点が合っていない力の無い瞳。 全く現状を把握しきれていない黒服の男がそこに居た。 -つづく- (ボス、そりゃなんかのトリックですよ) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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