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■ ドラマ 永久の彼方へ

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2007年04月04日
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カテゴリ:第二章 123 ~ 187 話
.
和恵ちゃん
  「はぁ、もぅやってらんない。わからん
   そこの割腹(かっぷく)のいい白服のおっちゃん、
   咥えてた葉巻、ズボンに落としてるわよ。」

 ポカンと口を開けた白服のボスの太ももに、咥えていたはずの葉巻が転がっている。
 そして太ももの白いズボンを黒く焦がして煙を巻き上げ始めていた。
 じわっとその辺りが黒く変化し始めたころ、

白服のボス
 『うわっ ちっちっ!』  パンパン パンパン

 あわてて立ち上がり、その太ももを両手で叩く。

白服のボス
  「み、水っ!雫

 中でもいち早く正気に戻った一人のホステスが、コップに水を酌んできて
 コップをボスに差し出す。 それをむしり取ってボス、

 ジャーー雫雫    ジュっ

 太ももにポッカリと空いた穴。 その周りが黒く焦げていておまけにビショビショ。
 その中に、赤く腫れ上がったミディアムレアのロースの脂身が顔を出していた。
 ちょっとおまぬけな姿だ。

和恵ちゃん
  「ひと一人を殺めようって人が、そんなちっぽけなことでギャーギャーと騒ぐな!ムカッ

 この出来事で、店内の全員がほぼ正気に戻り始めた。
 立ち上がっていた腰を再びイスに落としながらボス。

白服のボス
  「お、お嬢ちゃん、あんたがなんでここに・・・?」

 突きだした左手でぶら下げたくすんだ色の格闘着を下におろしながら話す和恵。

和恵ちゃん
  「ただの通行人Aだけどね。
   通りを歩いていたら、なにやら怪しい集団が一人の女性を連れ込んでいたでしょ。

   それも衣服ボロボロ。 引きずるようにじゃ。
   興味が湧いちゃうわよね。

   上のおじさん達に聞いたんだけど、教えてくれないから自分で見に来たって訳~♪」

白服のボス
  「その通行人Aのお嬢ちゃんが、今、ここで何をやったんだ・・・?」

 今目の前で起きた出来事を、一つ一つ確かめるように聞いてくるボス。

和恵ちゃん
  「見ての通り、入ってきて浮いてた塊(かたまり)を止めただけよ。」
白服のボス
  「塊って・・・・」

 その一言でその場に居た一同が、フロアーに転がっている一つの銃弾に注目した。

白服のボス
  「そりゃハジキの弾だぞ・・・・ それが浮いてるだと?」
和恵ちゃん
  「そうね。
   後ろに空気の[渦]が出来ていたけど。。。」

 と話す和恵の後ろから、千紗を担いできた数人の黒服の男たちを掻き分け、
 一人のガタイの良い男が前に歩み出てきた。 そして、

ガタイの良い黒服男
  「ボス、そりゃなんかのトリックですよ。
   ハジキの弾を掴むなんて芸当、出来る訳がない。

   話も催眠効果のひとつに過ぎない。
   この私がマジシャンの鼻を明かしてご覧に入れましょう。」

 着ていた上着を脱いで横に投げ捨てた。

和恵ちゃん
  「あらあら・・・・・
   居るのよね、どこにでもこういう出しゃばりさんが。」

 手にぶら下げた くすんだ色の格闘着 を横のイスに放り投げ、次に
 足元にへたり込んでいた徳江ママを抱き上げ、

和恵ちゃん
  「大丈夫ですか・・・?
   こちらで休んでいてくださいね。」

 と、長イスに抱きかかえたまま移動させた。
 続いてフロアに寝そべっていたホステス千紗も同様に別の長イスに横たわらせてから、

和恵ちゃん
  「マジシャンか。
   素人さんにはそう言われてもしょうがないかもね。」

 すっと胸を張り、右足荷重で左足を少し横に出し、腕組みをした和恵、

和恵ちゃん
  「出しゃばりのおっちゃん、
   なんでも自分が強い、一番、でしゃばればねじ伏せられるなんて思わないことね。」
ガタイの良い黒服男
  「くっ、口だけは達者なようだな。
   その胴着からして、拳法か何かかじっているようだが、
   そんなものが何にもならないこと、おれが教えてやるよ。
   たった今から、このおれが捻り潰してやる。
   断っておくが、女のガキだからって容赦しないからな。」
和恵ちゃん
  「いいわよ。
   私もね、今日はとっても機嫌が悪いの。
   身体も気合が入っちゃってるから、手加減できないかも。
   だからそのつもりでいてね。

   さっ、ごたくはもういいから早くいらっしゃい。」

 なんと和恵、腕組みをしていた右手を、ガタイのいい黒服男に向かって差し出し、
 人差し指で、おいでおいで と合図したのだった。

ガタイの良い黒服男
  「なまいきなガキだ! おれに挑発などっ! ゆるさんっ!怒ってる
   『 うぉぉぉぉぉぉぉ!

 一気に前に出るガタイの良い黒服男、 完全なボクシングスタイルのステップ。
 両手の拳を顔下に収め、低い姿勢で軽やかな左右に振るステップで和恵に迫る。

白服のボス
  「ヤツはウエルター級の元世界チャンプだ。
   あまりに強すぎて、何人もの対戦相手が病院送りに・・・・
   その後は試合をさせてもらえず引退。 お嬢ちゃん、死ぬぜ。」

 イスに座り、ニヤけながらつぶやくボス。
 それを聞いた徳江ママが はっ として今まさに激突する二人を振り返って見た。

         ぐームカッドスっ    店内に響くにぶい音。

白服のボス
  「かわいそうに、ボディに一発か。。。」

 先程落ちた葉巻を拾って、口に咥えたボス。
 戦況は見えていない。 だが・・・・


和恵ちゃん
  「ねぇねぇ、ボディー一発ぐらいで沈まないでよね。」


 !! ​っ​  その一言で、慌てて店内中央で激突している二人を見たボス、
 再び口に咥えた葉巻を下にポロリと落とす。

ガタイの良い黒服男
  ( うぐぐぐぐ・・・・・ )

 ガクンと両膝をフロアに落とす。
 顔は赤く力(りき)み、目には血管が浮き出ており、口からは泡を吐く姿が・・・。

和恵ちゃん
  「ちょっとぉーーー、 話が違うでしょ!怒ってる
   容赦しないでガンバッてくれるんじゃなかったのっ!

   このぉぉぉぉぉぉ、嘘つきーーーっ!ムカッ

             彡ズコーーーーーン!

 苦しそうに目の前で膝ま付くガタイの良い黒服をYシャツの襟ごとつまみ上げ、
 そのまま上に放り投げると、まさにサッカーのボレーシュートの様に右足で
 その落下するガタイを "く" の字に曲げるほどに、強烈に蹴り抜いたっ!

  ぐわっ               ダッシュ ガシャーーン

 ガタイの良い黒服男は、ものの見事に横のスモークガラスに背中から突き刺さり
 腰から下だけを無残に ぶら~ん とさらしたのだった。

和恵ちゃん
  「これでもがんばって手加減したつもりなんだけど、そんなやわな身体じゃ・・・」

 店内はシーーンと静まりかえっていた。

 その静けさの中、先程銃を撃って立ちすくんでいた一人の男が、
 再び店内を緊張の堝へと変えた!

黒服の男
  「嘘だ・・・ 嘘だ嘘だっ!
   こんなの現実じゃねぇぇぇぇっ!
   夢だ、おれは夢を見ているんだ。 そうだよな、これは夢なんだよ。

   夢なら何やってもいいんだよ。 あはははは 。」

 狂ったように大声を出す黒服の男。 そして、

黒服の男
  「おい女。
   こいつの弾が、浮かんで見えたと言ったな。

   ならもう一度同じことをやってみろーーーーっ!」

 震えながら手にした銃を、両手で和恵にかざし、

 『うわぁぁぁぁぁ!

 バキューーン  バキューーン  バキューーン
       バキューーン   バキューーン


 方向の定まらないまま、連射で引き金を引いたっ!




                              -つづく-




第176話 命の重さ 5 へ
(おっさん、もう弾はないよ)





  ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。

    また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。









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最終更新日  2021年07月13日 14時46分11秒
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