誕生
12月16日夕方、外出から帰って来ると出産の為里帰りしていた娘が「今日生まれるかもしれない」と言う。朝から軽微な陣痛が起きていたとの事。次第に陣痛の間隔が短くなっているようだ。夕方からはヘルパーの仕事があり、娘の事が気がかりながらも仕事へ向かう。20時に帰宅すると、まだ大丈夫との事でほっとし、産院へ行く準備をする。21時まで陣痛の来る時間を計っていたが、「そろそろ来て下さい」と産院の許可が出て、心は焦りながらも安全運転に努める。21時半、診察を受けると、まだ1センチしか赤ちゃんの通り道が開いてないとの事。23時の診察でも2センチ。朝までかかるかもしれないとの事で、「いったん帰られますか?」と言われたが不安な為そのまま入院させて頂くことにした。時々陣痛の波が襲ってくるようで、痛がる娘。腰をさすってあげると痛みが少し和らぐようで、帰るに帰れなくなり陣痛が来る度にさすり続けた。「こんなに痛いの、あとどれくらい続くの?」と少し弱音を吐き出した。陣痛の間隔が1分間隔となり、変だなぁと思っていたが、24時の診察では、助産婦さんが「もう全開してる!頭も出てる!」とびっくりされた。「こんな初産婦さん初めて!ナンバーワンだわ!先生呼んで来て!」と途端に分娩室がバタバタしだした。「もうすぐ生まれるそうです」と、パパ側のご両親に連絡すると深夜にも関わらず駆けつけて来て下さった。出産に立ち会うはずの愛知県のパパは、超安産過ぎて残念ながら間に合わない。外で待っていようと思って廊下に出たが、「娘さんがお母さんにいて欲しいと言ってます」と呼びもどされ、普段クールな娘だと思っていたのだが、嬉しいやらびっくりやらで分娩室に入る。「もう頭出てますよ。頭触ってみる?」娘が痛みに耐えながら、嬉しそうに頭を触った。「頑張れ!もう少し!」と助産婦さん達も先生も声をかけて下さる。「上手に呼吸できてるよ」とほめられ、娘も頑張った。何回かのいきみで頭が出てきた。思わず、「頭見えた!」と声が出た。すぐにするりと体も出て来て、一瞬おいて「おぎゃあ」と泣き声が聞こえた。「あ!泣いた!」緊張に包まれていた分娩室に笑顔が戻る。24時46分、無事に2600グラムの男子誕生。「よく頑張ったね」と、娘に言うと「お母さんが腰をずっとさすってくれたから痛みを乗り越えられたよ」と言ってくれた。「へその緒、誰に切って欲しい?」と聞かれ、「お母さん」と娘が言った。大役を任されハサミを持ったが、思っていたより硬くなかなか切れず3回目でやっと切れた。赤ちゃんを綺麗にしてもらい、胸元に抱かされた娘の顔はもう立派な母親の顔になっていた。