埋もれ火のアンソロジー

このお話は・・・
松嶋菜々子、夢に登場
続・松嶋菜々子、夢に登場！
のつづきです。


ウ先生と白鵬君と３人で

料理の修業という名のもと

食べ歩きが開始された。



白鵬君の存在がまた不思議で

目立つこともなく義経を支える弁慶の如く

俺のそばを離れないんだ・・・


小汚い料理店に入って

ウ先生が赤いカウンター向こうの女性に

「おかみさん、焼きそばを３つお願いします」

と注文していた。

左にウ先生

真ん中が俺

右には白鵬君




ウ先生が言うには

「美味しくても、うまいとか美味しいという態度をしてはいけません」

それが最初の修業だった。

難しいのは次の課題だった。

「美味しさを笑える言動で表現しなさい」



俺には笑いの表現ができなかった。

すると、ウ先生が白鵬君に

「手本を見せてあげなさい」と言うと

落ち着いた大柄な白鵬君が

ものすごいギャグをかますわけである。



俺はおかしくておかしくて

おかしさを越えて感動してしまった。

萩本欽一的笑いでもなく

ビートたけし的な笑いでもなく

さんま的な笑いでもない

今までに味わったことがない深みのあるギャグなんだ。



次々に店をまわるなかで

昔の映画館の入り口みたいなところで

ウ先生が

「この店の客を相手に私のギャグを見せよう」

と言われて俺と白鵬君はドアの影にいた。

ドアを開いたときそれは驚きと感動だった。



ウ先生が上半身裸になって

客を相手に闘っているのである。

女性も男性もみなウ先生に襲いかかるのだが

ギャグをまじえながら次々と相手を投げ飛ばすウ先生。

俺も白鵬君も腹をかかえてゲラゲラ笑いあった。

おかしいのである。真剣な格闘技が。



最終的には

料理の修業でなく

「お笑い」の修業になっていた。

テレビに出てくるお笑いの人たちが見たらいいと

思えるような夢物語だったが

返却延滞していた図書館からの返却要請の電話で

起こされたのである。

時計を見ると１０時１０分であった。


正直、もう少し「お笑い」の修業をしつづけたかったが

「はい、今日返却します！」

と寝ぼけた頭でも応答してる俺だった。


おしまい。


初恋